Act-19 リクエスト
「桜ちゃ〜ん! おはよ…、じゃなかった。 グッド・モーニング!」
「ぐう、じゃねぇ。 ぐっどもーにんぐ、だぜ、桜!」
「Good morning! ミス・桜」
駐車場に車を止めてランドセルを持って出た桜に駆け寄ってきたのは歩美
「Hi! Good morning, everybody… って 歩美ちゃんも光彦君も元太君も、英語喋れるの?」
「あ、えっと歩美はパパに英語でお早うっていうの教えて貰ったの! こんばんわ、は Good evening だったよね?」
「俺は今朝、歩美に教えて貰った!」
「ぼ、僕は両親が学校の教師なので、小学校に上がってから一寸ずつ教えて貰ってますし、姉が時々英語の勉強でリーディングしてるのを聞いてるので、門前の小僧習わぬ教を読むっていう奴です」
えへへ、と舌を出す歩美と頭を掻く元太に 一寸照れ臭そうに答える光彦
「歩美ちゃんのパパはとても素敵ね。 元太君も、光彦君もありがとう。 気を使ってくれたのね」
「うん!」
嬉しそうに笑う歩美とガッツポーズの元太と光彦
「っつたく Good morning で喜ぶなんて餓鬼のするこったぞ」
「その餓鬼の姿で自慢できる事かしらね? それに江戸川君が喋れるのは英語と日本語と一部のイタリア語とカタコトのロシア語がだけでしょ?」
「だけってなぁ…!」
「悪いけど、私はもっと喋るわよ? 医学には様々な言語が飛び交うから」
呟いたコナンににっこりと笑う哀
(あー… そういや灰原は英語は当然、イタリア語とドイツ語は現地人顔負けで、ロシア語とフランス語も基本会話はペラペラだったっけか…)
シェリーこと宮野志保は組織でトップレベルの科学者だったと思いだし、はぁ、と肩を落とすコナン。
「あらまぁ、この坊ちゃまと嬢ちゃまたちが、桜嬢ちゃまがお友達になった同じクラスの方でございますか?」
「そうよ。顔、覚えてあげてね」
「「「おはようございます、ばあやさん!」」」
揃って挨拶をする子供達にばあやはニコニコと頬を緩ませる。
「はい、おはようございます。 まぁ、昨日、嬢ちゃまと探坊ちゃまから伺った通り、とても良い挨拶のお子様たちです事! ええ・・と、カチューシャが似合う可愛い子が吉田歩美お嬢様、赤茶色のボブショートの可愛い子が灰原哀お嬢様、体格の良い子が元気印の小嶋元太坊ちゃまで少年探偵団の団長さん。 丁寧な言葉使いをする礼儀正しい子が円谷光彦坊ちゃまで、メガネの子が絶世音痴… と失礼致しました―… 事件ホイホイ呼び寄せ少年でしたね―… の江戸川コナン坊ちゃま、でございましょ? ばあやにはちゃーんと分かりましたよ」
「ぷっ… コナン君ってば、ばあやさんにまでいわれてるよ」
「あはは! 当たってますねー、流石は桜さんのばあやさんです!」
「絶世音痴も事件ホイホイも両方当たってるぜ!」
「確かに。ばあやさんの言い方は、どっちで呼んでも間違いはないわね。 おはようございます、御挨拶が遅れてすいません。 白銀さんのクラスメートで灰原哀です」
「俺! 小嶋元太! よろしくな!」
「吉田歩美です! 初めましてばあやさん! 桜ちゃんからばあやさんは料理上手って聞いてます。歩美のママも料理教室行ってるから、とっても上手なんだよ!」
「おはようございます、ばあやさん。 円谷光彦です。 困った時はいつでも少年探偵団へご相談下さい」
「江戸川コナン。 探て―… っって!「江戸川君!」」
パン!と哀に後頭部を叩かれるコマン
「初対面の挨拶位ちゃんと出来ないの! 歩美ちゃんたちを見習いなさい!」
「ひっでー… おはよう、ばあやさん。僕、江戸川コナン。 白銀さんに比べたら確かに音痴だけど、事件ホイホイじゃなくて、事件がボクの所に来るから仕方なく―‥‥っって」
ジロ、っと友人4名に睨まれて肩を落とすコナン
「はいはい。 朝から元気が良いのは宜しい事ですよ。 これからも桜嬢ちゃまと仲良くして下さいましね」
「「「はーい!」」」
「分かりました。」
「へぇへぇ。 確かに」
「な〜んか、投げやりな言い方だね、コナン君」
「音楽の授業で桜に負けたのがよっぽど悔しかったのか?」
「きっと、絶対音感って言ってたのが崩壊したからですよ。 桜さん、すごい綺麗な声でしたから!」
「ほっとけ!」
「ま、白銀さんの歌声が見事だったのはクラス全員が認める事実ですものね。 ほら、貴方たち、白銀さんに何かお話があって早くから学校に来たんじゃなかったの?」
「あ!」
「お話?」
きょとんとなる桜
「えっと…。 えーとね。桜ちゃん、今週の土曜とか暇?」
「土曜? 今週はパパは帰れないって言ってたから暇、だけど」
「だったら! 灰原さんの家で、少年探偵団の入団式しませんか!?」
「ぇ!!??」
光彦の言葉に桜はばあやと顔を見合わせる
「ー…でも私は」
「えっと! コナン君のよーに、スケボーとかで暴走するとかっていうんじゃないんです! 事件の調査で駆けまわるのはコナン君の役目ですから! 桜さんは灰原さんと同じで探偵団の後方支援で色々と探し物とか調べものをしてもらえたらと思いまして」
「外をかけるのはコナンの役目だかんな!」
「うん! お外で調べるのはコナン君がしてくれるから大丈夫。走らなくてもできる事ある筈だよ!」
「光彦〜〜 オメーらなぁ」
「あら、当たってるじゃない? スケボーでごーっと通行人の迷惑も顧みずにかっ飛ばしてるし。」
「怪我人がでないのが不思議だよね」
走れないし外にも長い間いられないから、と断ろうとした桜はコテン、と顔を傾げる
「まぁ、危険な事はぜーんぶ、江戸川君が引き受けてくれるから、お父さんがお留守の時の退屈しのぎにはなると思うわよ? 現場に行きたいなら博士に車を出して貰えば喜んで出してくれると思うわ」
「げ、現場って、え… えーっと…」
桜は目をパチパチとする。
「宜しいんじゃありませんか?」
にこにこというのはばあや。
「アメリカじゃ入院や検査で同じ年ごろのお友達ができませんでしたから、はしゃぎすぎなければ良い事だと思いますよ。 勿論、お外で駆けまわるのはお医者様から許可で出てませんからダメですけど。」
「ばあや?」
「お出かけの時は、ばあやと旦那様方と探坊ちゃま、それからSPにちゃーんと行先を云ってから、というお約束ができるなら、ばあやからも旦那様たちにお願いしてあげます」
「ほんと!?」
「えぇ。 でも、もしかしたら護衛付き、になっちゃうかもしれませんけど」
「護衛?」
「探坊ちゃまが買ってる鷹でございますよ。危険な事はちゃーんと分かるから桜嬢ちゃまのボディーガードには打ってつけでございます。」
「なんかさ! 恰好いいじゃねーか! 鷹を飼ってる探偵団って!」
「でも、ワトソンを飼っているのは探君だし。 学校には連れてこれないし。 まだ日本に慣れてないから籠から出してあげれないし」
「ワトソンにはGPSが付いてます。それに探坊っちゃまの鷹でございますよ? 其処らの鷹と違ってとっても賢いから、御心配には及びません。」
「そうね。 ワトソンは、ヤードのお兄さんたちが認めた位お利口さんだもん。」
「やーどってなんだ?」
「スコットランドヤードの略だよ、イギリスの首都ロンドンにあるロンドン警視庁の事をスコットランドヤードというからな」
「ロンドンにスコットランドって地名無かったですよねぇ?」
元太の問いにコナンが答え光彦が首をひねる
「スコットランドヤードというのは最初にロンドン警視庁本部が置かれた場所に由来してるのよ。ほら、日本の警視庁を桜田門、っていうでしょう? それとおんなじよ。」
「その通り、灰原さんって物知りなのね。 付け加えるならシティの管轄はロンドン市警よ。 探君はロンドン市警とヤードの上層部からダイレクトに依頼を受けて、自分の顔は極力出さない事を条件に事件の捜査に協力してるのよ。 ワトソンは探君が雛から育てたパートナーなの。」
「なんかすごいですね! 日本警察よりもハクがありそうです」
「外国は日本よりも治安が悪いので、坊ちゃまには早く日本で落ち着いて頂きたいんですけどねぇ・・・。」
ふぅ、と溜息を付くばあや。
「ロンドンといえば、コナン君の名前はコナン・ドイルからでしたよね!? シャーロック・ホームズの作者の」
「え、あ、 うん」
「そうだったの? 私、退院したばかりの頃、パパにロンドン・ミュージカルを見に連れてってもらったんだけど、その時にホームズの家に連れって貰ったのよ。」
「行った事あるのか!?どうだった!? 俺、まだ行ってねーんだけど、やっぱあの椅子とかボールとか飾り銃とか恰好いいよな!! レプリカだけどヴァイオリンがあって、蓄音機に―…」
水を得た魚のように目をキラキラさせて、とつとつとホームズの話を始めるコナン
「はぁー… ホームズの話になるとこーだから、回りが見えなくなるのよ、彼」
延々と話を続けるコナンをみて哀が冷たい視線を送る。
「そ、そう? どっちかってゆーと、パパの方が行きたかったみたいで私には退屈だったんだけど。でも探くんは地元だから何度も行ってるって、パパと盛り上がって色々とマニアックな話してた」
「まぁ、普通はね。 でも江戸川君は別。 転校初日の遅刻だって推理小説を遅くまで読んで寝坊したの。」
と、哀が説明した所で予鈴10分前の音楽がなる。
「っといけない。あと10分で予鈴がなるわ。 本鈴が鳴るまで20分よ。 教室に行きましょ?」
「あ、ほんとだ。 いつもなら教室に入ってるのに!」
「まぁま、大変です。 このボウヤのホームズ話がばあやが予鈴まではきいておきますから、嬢ちゃまたちは先にお教室にお行きなさいませ」
「はーい」
「じゃ、行きましょうか!」
「はい、坊ちゃま方も嬢ちゃま方もしっかりお勉強なさいませ。 来月のお茶会の時はばあやが腕を振るって、美味しいお菓子とパンをおつくりしますからね。招待状もおつくりしますよ。 旦那様がサンルームを使っていいと、許可をくれましたからね。 何かリクエストがございますか?」
「あ! 歩美ね、一度ショートケーキ食べてみたい。 イギリスのは日本のと違うって聞いたの ふわふわじゃないんだよね?」
「イギリスはショートブレッドというんでございますよ。クッキーのような生地に生クリームを絞りますからね。 ようございますとも! イギリス本場のショートブレッドケーキおつくり致しますよ」
「わぁ・・!! 嬉しい!」
「あ、あの!! ぼ、僕はクローテッドクリームたっぷりのレーズン・スコーンとアールグレイの紅茶が…」
「アフタヌーンティーですからスコーンは沢山おつくりしますよ。 皆がお土産に持てる位。紅茶は坊ちゃまがイギリスで沢山買ってきてくれましたから、お気に召したら茶葉を少しお分け致しましょうね」
「ありがとうございます!。」
「お、おれ、うな重!! うな重とカレーがいい!!」
「う、うな、重、でございますか… カレースープならまだしもうな重…」
「元太君〜〜〜 アフタヌーンティーにウナギだなんて場違いですよ。 ばあやさん元太君のリクエストは忘れてくれていいですから! ほら、行きますよ!」
「え〜〜〜!! そんな〜〜」
「ほらほら、行くわよ、小嶋君。 」
「あ、そっちの嬢ちゃまは何かご希望は?」
「私? ―… そうね。 できたら、ブラッドオレンジとイチゴのグラニテを」
「あら、ま 嬢ちゃまの好物と同じですわね」
「え?」
「ふふっ! 偶然ね。アメリカで入院してた時、熱を出して食事を全く食べれなくなった時があったの。 その時に冷たいものが欲しいって、パパにおねだりした時に初めてグラニテを持ってきてくれたの。 熱があって何も食べれない時も苺のアイスとグラニテだけは食べれたのよ」
「へぇ… おとうさんの愛情ってヤツですね!」
「歩美もグラニテ食べてみたい!」
「ブラッドオレンジとイチゴの良いのが手に入ったらおつくりいたしましょうね。 苺は冷凍になってしまうかもしれませんが―… で、この坊ちゃまはー…」
なぜかホームズのすばらしさを説明し続けてるコナンをみてばあやは笑う
「後で聞いておいてくださいましね?」
「はーい」
(彩華と同じだ。彩華もリサイタルの後、良く熱を出して寝込んだ。 元々食べる子じゃなかったけど、私が作って持って行ったブラッドオレンジとイチゴのグラニテだけはいつも喜んで、食べてくれた)
(お姉ちゃまが作ってくれたブラッドオレンジとイチゴのグラニテ。あの味だけは忘れられない。パパが作ってくれたグラニテも美味しいけど、お姉ちゃまのグラニテが食べたい―…)
授業のことをすっかり忘れているコナンを傍目にさっさと教室に向かう桜たち。
そしてコナンは予鈴がなるまでしゃべり続けて担任の小林が教室に入るタイミングでドダダダダと息を切らして滑り込んで、遅刻には成らなかったものの、出席簿でバン!と頭を叩かれて1時間目を教室の後ろで立って受ける羽目になった。
22/28
prev next←歌媛哀唄