Act-21 前哨戦
「うわぁ・・・! おっきい!」
「ホントですねぇ〜」

遠くから見える文字通り白馬の殿堂のような邸をみてワンピース姿の歩美が目を輝かす。
(シボレー・アストロでの送迎かよ・・・ 俺の家もデカい方だと思ったけど、白馬の家も相当な家だな。 ー… そういや、白馬警視総監のひいひいじいさんってここら一体の大地主だったか。 元たどれば武家の出でどこの国だが覚えてねぇけど城主の血筋だったか…… )
コナンは考える

キャンピングカーのように大きな車。
黒スーツの運転手はまだ若い警官だが目の配り方は優秀な警察官で、助手席の護衛は歴戦の強者にみえる中年の警察官だ。
後ろの席に探と歩美とコナン
向かい合って元太と光彦に哀が座っているが元太と光彦も目を丸くしている。

「灰原の家や工藤の兄ちゃんの家もデッケーけど、白馬の兄ちゃん家もでっけーな」
「管理費と維持費が結構大変なんですけどね…。」
「このあたりは高級住宅街ですものね。 その中でも軍を抜いてい大きさだわ」
「無駄に土地が広いだけ、ですよ。」

白馬は苦笑して見せる

その言葉が終わるか終わらないかの内に高い塀の門扉が正門に着き、後部シートの探に向って軽く敬礼をする。

「ご苦労様。 今日は桜のクラスメートのお友達がいるからしっかりガードを頼むよ」
「お嬢様とばあやさんからも同じ事を頼まれました。探様も今朝、桜お嬢様のクラスメートで少年探偵団のお友達をご招待しての御茶会だからと仰ったじゃありませんか?」
「そうだったね。 桜も今日を楽しみにしてたからつい。 ―… あぁ、ほら、玄関の所で桜が待ちあぐねてるから車を入れてくれる?」
「はい」

運転手は警察官と顔を見合わせる
車が入ると、警備員は確りと鍵をかけてルームホンを取り上げた。

なだらかなスロープを少し走り玄関に車が横付けになれば薄い緑色のワンピースの桜が手をふって待っていた。

運転手と助手席の護衛が先に降りて小さな踏み台をドアの近くに置く。
(おいおい、そこまですんのかよ? 子供とはいえ)

コナンは小さな溜息を付いた

「お手をどうぞ、歩美ちゃん。車体が少し高いから足元に気を付けて」
「あ、ありがとう! 白馬のお兄さん! 歩美、エスコートして貰うの初めて!」

にっこりと手を差しだす探に歩美がポンっと頬を染めると踏み台を使って降りる

「どういたしまして。 さて、哀ちゃんもどうぞ?」
「ありがとう。 流石にイギリス帰りは紳士なのね?」
「女性には優しく、がモットーですから。」

探は柔らかな笑みを崩さない

そして光彦、元太、コナンは流石に男の子というべきか飛び降りるように車から出る

「おはよー! 桜ちゃん! 今日はご招待ありがとう。あのね、ママがお料理教室で習った御菓子作ってくれたの。和菓子なんだけど、これなら生クリームも乳製品も使わないからどうぞって。 餡もママが炊いたんだよ! 歩美も作るの手伝ったの!」

箱を持って真っ先に桜に向って行く歩美

「お早う、歩美ちゃん。 可愛いワンピースね。御気遣いありがとう。 」
「えへへっ! 初めてのおうちで、しかもアフタヌーンパーティのご招待だからって、パパが買ってくれたの!」
「とても似合ってるわ」
「ありがとう。後で一緒に写真とろーね!」
「その時は歩美ちゃんを真ん中にして皆で撮りましょう」

「おはようございます、桜さん。あの!これは姉のお勧めだったんですが、ハーブティです。お好きかどうかわからなかったので、キャンディポップという、甘い香りの。」
「お早う、光彦君。 おもたせになってしまうけど、後で探君に淹れて貰うわね。 探君はとても美味しく紅茶を淹れてくれるのよ」
「光栄です。 あ、後でアフタヌーンの写真を撮っていいですか? 姉に写真を撮ってこいっていわれまして」
「勿論よ。ばあやの自慢の料理を取ってあげて」
「はい!」

「おはよう、桜。 外にいても大丈夫なの? 日差しが強いんじゃない?」
「お早う、哀ちゃん。 大丈夫。さっきまでずっとおうちの中にいたから。 長時間じゃなければ平気よ」
「そう。なら良かったわ。私からはこれ。冷凍イチゴとブラッドオレンジのグラニテを作ってみたの」
「わぁ! イチゴとブラッドオレンジのグラニテは大好きなの。有難う、哀ちゃん」
「どういたしまして。 なるべく早く冷凍庫に入れておいて。」
「あ、そうね。 えっと…」
桜は少し後ろに控えているメイドに顔を向ける。
「これ、ばあやに渡してくれる?」
「はい、お嬢様。」

和菓子の箱とグラニテの入っている保冷バックと和菓子の箱を受け取ったメイドがパタパタと去っていく

「おーっす! えっと、俺も持ってきたぜ!」

そういいながら紙袋の中からパンパンにふくれた仮面ヤイバーの透明な袋を出して手渡す。

「おはよう、元太君、 これはなぁに???」

袋をみて、中をみてきょとんと顔をかしげる桜を見て光彦達が覗き込む

「ー… 元太君。 お茶会にヤイバーチョコとヤイバーチップスって。しかもヤイバーの袋ってセンスのない」
「アフタヌーンの雰囲気丸潰れ………」
「小嶋君らしいといえばらしいけど…… これはないんじゃない?」
「おかしいか? ヤイバーチップスの中にカードが入ってて、運がいいとプラチナカードが入ってるんだぜ! 限定200枚のシリアルナンバー付のを選んだんだぞ!」
「あぁ、第1話の登場シーンの! たしかカードに使った衣装の端切れがついていて―… じゃなくって、ですね! あのですね、そもそもアフタヌーンというのは……「光彦君」」

光彦が蘊蓄を垂れようとしたのを止めたのは桜

「有難う、元太君。私、まだ食べた事無いから嬉しい。 沢山入ってるから後で皆で分けるわね。探君にもあげれそう」
「僕にもくれるのかい?」
「うん。ほら見て、沢山入ってるの」
「ホントだ。じゃあ、これは後で皆のお土産で分けようね。 この御菓子は籠に入れるて飾ろうか?」
「なんかある?」
「あぁ。任せて」

探がヤイバーの袋を受け取る


「な、白馬の兄ちゃん! アフタヌーンって食いモン沢山あるのか? かあちゃんがスコーン食いたいから貰ってこいって言ってだんだ」
「元太君… 来てそうそう何で君は食べ物の事ばかりなんですか」
「ホント、折角のパーティが」
「そもそも小嶋君は食べる事しか考えてないようね」
「まぁ、元太から食い物の話を抜くという事自体間違ってるだろーけどな」

元太の言葉に光彦と歩美が呆れて哀とコナンが溜息を吐く

「大丈夫だよ。スコーンの生地はお土産分もあるからね」
「ホントか?」
「えぇ、ホントよ。アフタヌーン用は色々な種類が食べれるように小ぶりだけど、お土産用はロンドンサイズだからとっても大きいわ。 楽しみにしててね」
「全く、元太は寝てる時以外は食いモンの話ばっかだな」
「わりぃ」

元太の言葉に溜息を重ねるコナン。

「お早う、白銀さん。こんなに大勢で迷惑じゃなかったの?」
「お早う江戸川君。 大丈夫よ。白馬の小母さまがパーティをする時は20名とか30名とか位ご招待する事もあるんですって。」
「そうなんだ。 あ、これ、蘭姉ちゃんからだよ。食べ物は沢山あるだろうから日本らしいものをって」

少し小ぶりだが和紙に包まれた袋を手渡す。

「日本らしいもの?」

きょとん、となる桜

「このお店のだと懐紙とか匂い袋とか、かな?」

探が袋をみて云う。

「流石白馬のお兄さんだね! うさぎの柄の懐紙と花の形の匂い付のシールって言ってたよ」
「懐紙ってお茶席で使うやつ??」
「うん。 ウサギは後ろには飛ばないから縁起のいい動物で、1年中持っていてもいいんだって。」
「確かにね。本来は干支の懐紙は該当しない年には使わないと云われてるけど、ウサギは何時でも使えるし。」
「へぇ…。 BQにあげたら喜びそう」
「ビーキュー?」
「私のタブレットもアメリカで使ってたPCも、BQが作ってくれたのよ。」
「タブレットにPCを自作?」

コナンが目を丸くする

「PC関係はなんでもござれのお姉さん。私が日本に行く時にね、日本仕様で作ってくれたの。メンバーが仕事で使う仕事用のタブレットを掌紋静脈認証システムで作った位。」
「掌紋静脈認証システム! 凄いお姉さんがいるんだね。 ―…PCの専門家、なの?」
「ふふっ。 BQはその知識を買われてスカウトされたんだもの。」
「へぇー… (そのメンバーを、引き入れる事ができたら、なにがしかの弱みを握って組織へハッキングとかさせる事ができたら―…) どんな人たち?」

コナンの瞳が鈍く輝く

「秘密よ秘密。 女の子はね、秘密を纏って綺麗になるってアメリカでもた映画の中で主演女優が言ってたわ。 興味があるなら、誰の力も借りず、相談もせず、江戸川君、一人の力で解いてみて? でもBQの弱点を探ろうなんて思わない方がいいわ。 あのチームリーダーは、それを承知でスカウトしたの。 最初から答えを教えてしまっては探偵にはなれなくてよ? ね、探君」
「そうだね。 謎は自分で解くから楽しいんだと思うよ。 BQの技術はメンバー随一だからね」
「っ! やだなぁ。 僕、そんな事考えてないよ(秘密を纏って綺麗になる―…。"
A secret makes a woman woman." 偶然の一致かそれともー…?)」
「そう? ならいいけど。 でも、今の儘じゃ探偵にはなれないわね」
「なっ! どーゆー意味だよ!」
「気が付いてないのね? でも、江戸川君は良く知らない人の事だから仕方ない事だけど―…」
「ぇ?」

桜の言葉にカッとして言い返したコナンに向ってにこりと笑みを見せる。

「桜ちゃん、ほらほら、折角のお茶会なんだから、揶揄うのを止めて、そろそろサンルームに案内してあげないと。ばあやの頸が伸びてしまうよ。 料理が冷めるって」
「あ、そうだった! 上がって上がって! サンルームは4階なの! 4階5階を吹き抜けで作ってあって、白馬のおばさまのお気にいり―… と云いたい所だけど」

桜はじっと探の方を見る

「桜? えっと…? 僕の顔に何かついてるかい?」

桜がつい、と視線を巡らせると玄関脇に控えていた数名の警察官がさり気なく子供達を護るように前に出る。
そして警察官の前に出た桜が一歩前に進み出る。

「貴方―… 誰?」
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