Act-22 敗北
「ねぇ、お兄さん? 探君の振りをして、白馬邸で何をしたいの?」
「桜? 悪い冗談はやめて欲しいな」
「確かに探君の服に探君の顔だけど、声は作ったものよね? それにその靴はシークレットブーツで、お兄さんは探君よりも背が低いし骨格も違う―…」
「ま、まさか僕たちを狙う犯罪者なんですか!」
「け、けーさつ呼ばねーと」
「大丈夫。白馬の家は招待客以外の不振人物の来客があった場合は360度の監視映像が入るの」
「さ、360度?」
「探君はBQの事をちゃんと名前で呼ぶわ。 今まで一度もBQなんて呼ばなかった。 それに探君が正門のガードにお友達の事を頼んだのは昨日であって今朝じゃない。 門の所で捕まえなかったのはド忘れという事もあるからと私が頼んでおいたから」
「……」
「クラスメートを騙せても私は騙せない。 ―… ワトソン!」

桜が首に提げていた小さな銀の笛をピッと吹けばバサバサっと羽音がして立ちすくむ探の頭上を足で引っ掛けるように抜けていく

「つって〜〜〜!?  な〜〜んで、わかるかな。 子供相手なら絶対バレない自信があったのに」

栗色の鬘が半分取れてメイク用のフェイスマスクが破けている。

「だから言ったでしょう、黒羽君。 僕の真似をしてもすぐにばれて家の中にははいれない、と」

かつん、とゆったりした物腰で腕に鷹のワトソンを止まらせた青年が姿を見せる。

「探君ってば酷い! 私が気が付かないって思ってたの? 外にいるワトソンが探君が帰ってきたのに出迎えに行かない時点で偽物ってわかるじゃない。 お気にいりの木の上に止まったまま悠然と羽繕いしてるんだもの。 」
「ワトソンの目も桜の目も誤魔化す事は出来ないと信じてましたよ。 ただ、黒羽君はマジックを勉強していてるんです。 マジックは人目を欺く事だから何処まで通じるのかためしてみたいと頼まれたんですよ」
「だ〜〜〜ぁぁぁっ! 結構時間かかったんだぞ、白馬の顔を作るの! 演劇部の連中からメイク道具借りてカラコン買ってさぁ〜!!  演劇部にあった栗色の鬘はロングでカットが出来ない無いから自腹で買ってさ〜!! どーしてくれんだよ。 この鬘、結構手間暇かかってんだぞ」
「「自信過剰 / 自業自得ですね。」」

桜と探の声が重なる。

「下手な変装だわ。 絶対音感と絶対聴覚を持つ私にはどんなにそっくりな声にしても違いが分かる。 そしてなにより、ワトソンは探君のパートナー。 探君には絶対攻撃を仕掛けないわ。 悪戯だとしても髪をひっかけるような事はしない」
「はぁ〜〜〜。  白馬との賭けは俺の負け。白旗上げて全面降伏。 まぁ、良い勉強になったよ。 だが、次にあった時に勝てるとは思わないで欲しいなぁ。」

バサリと鬘を取りフェイスマスクを取る

(く、工藤、新一!? まさかそんな―…)
(げ! 俺に良く似てる! ってか俺に双子の兄弟なんていねーのに)

「白銀桜嬢と少年探偵団の子供達には改めまして、白馬のクラスメートの黒羽快斗です。 僕は世界のトップレベルのマジシャンになるのが夢。 以後よろしくなっ」

快斗は ポンポンポンっと薔薇の花束を3つ取り出して一つを歩美に差し出した

「うわぁ…素敵」

歩美は差し出されたブーケを嬉しそうに受け取る

「ありがと。 でも、私は薔薇なんかより医学書の方がいいわ」
「―… 医学書ぉ? 俺の資金じゃちょっと無理だなぁ。 本屋で手に入る医学部の問題集とかじゃだめ?」
「却下。100歩譲って薬学の専門雑誌で独逸語の原書でお願いするわ」
「あー… 今度 東都駅近くの随進堂とかで探してみるわー…  さて、桜お嬢さんは如何です?」
「薔薇をだすとかキャンディや旗を出す程度の事、誰でもちょっと勉強すればできる事よ。 この家には鷹がいるから流石に鳩を出すという事は出来なかったようね。鳩や烏には鷹は天敵だもの。 私は薔薇やキャンディを出すのより火の輪くぐりとかの方がいいわ」
「火の輪潜りはサーカスじゃ無い? ほら、ライオンの火の輪くぐりとか…」

桜の言葉に哀が言う

「あ…… そっか。じゃあ裸になって全身縛られて水中からの脱出とか。 ピアノ線を命綱に透明なアクリル板の上で空中浮遊ウォーキングとかどうかしら?」

にっこり笑った桜を見て怪斗は頬をひきつらせる。

「(こ、この子! 上級者向けのマジックネタを云うって・・!! しかもアクリル板とかってまるでネタまで勘弁してほしい) ホント、白馬が桜ちゃんの事をとても目が肥えているって言ってたけど当たってんなー。 今度もっと腕を磨いておくよ。 文化祭とか如何かな? 俺のマジックショーのチケットは毎年人気でチケット完売状態なんだけど、子供達を招待するよ? 手持ちで10枚程ステージ招待券を貰えんだ。演劇部の衣装協力を貰っているんだ。 1回20分のショーで保護者300円で 大学生と一般外部は200円。 高校生と中学生は学生証提示で150円。小学生は100円。 チケット代は毎年チャリティで赤十字に学校名義で寄付してんだ。」
「考えておくわ。  手を出してくれる? 足止めしたお詫びに元太君から貰ったチョコを一つあげる」
「チョコレート! ホント!? くれるの?僕に」

桜は元太から貰った仮面ヤイバーのチョコレートが入った袋に手を入れるとすいっと快斗の手の平の上において出ている紐らしきものを手首にキッチリと巻き付ける

「鬘の代金は払えないけどその変わりに」
「あぁ。チョコを貰えるなんて!! チョコは大好きなんだ! ありが… ぁぁー …ぎゃ…っぎゃあああああああああ〜〜〜〜!!!??」

硬直する快斗の悲鳴に驚いて手の平におかれたものを見る少年探偵団。

リアルに描かれた魚の形包装紙でラッピングされたチョコレートが笊に置かれた状態でラッピングで置かれて、笊から出ている紐が手首に巻かれてPC用の拘束帯でしっかりと止められた

「なんだ、魚の形のチョコじゃねーか? って、俺、魚のチョコなんていれてねーぞ?」
「このお兄さん魚嫌いなんですか? 男の癖に」
「お魚さん可愛いのに」
「それに美味しいわよね」
「うん! 歩美、お魚大好き」
「僕も」
「寿司はウメーよな」
「まぁまぁ、だれにだって弱点はあるから可哀想だよ」
(何気に天然のS気があるな、白銀のヤツ。 まぁ、魚のチョコレート位は可愛いモンだけどな。 って、あのチョコレート、何時仕込んだんだ?)

コナンはくすくすと笑う桜を見る

「さ、お茶会前の座興はおしまい。 今日はね、探君のクラスメートでとても綺麗なお姉さんがタロット占いをしてくれる事になってるの! 占いは統計学だけど、先祖代々続く占星術の家柄でそこらのマジシャンよりも綺麗なカード捌きよ。 実はさっき皆より先に予行練習なんだけどって、カードが部屋中に舞って蝶々の様に舞うのを見せて貰ったの」
「蝶々のように?」
「それは見てみたいわね」
「後で見せてくれるわ。 本番は魔女の衣装でしてくれるって!」
「魔女!」
「そ!魔女のようなとんがり帽子に黒いマント。先の尖った魔女っこ靴と杖も持ってきてくれたの!」
「楽しみですね!」
「でも、このお兄さんはどうするの? なんか石のように固まってるよ」
「探君に任せるわ」
「僕に?」
「私の力じゃ門扉の外に放り出す事できないもの」
「だ、そうですよ。 聞いてますか、黒羽君って、意識が飛んでますね…」

半分呆然としている固まっている快斗に向って深い溜息を吐くと護衛のSPに顔を向ける

「手数をかけますが、固まってる黒羽君を門の外にでも立たせておいてください。正気に返ったら自力で帰るはずです」
「承知しました」

「ほら、桜、ばあやが料理を出すタイミングを計ってますからサンルームに案内してあげなさい」
「は〜い」

桜はにこりと顔を変える

「サンルームはこっちなの!4階と5階を吹き抜けで作ってあるのよ。」
「5階まであるの?」
「5階はバーカウンターとパーティ広間よ。おば様やおじ様が時折お仕事関係の方を招いて使っているんですって。 来客用で4階5階は直通のエレベータを作ってあるのよ。 あ、スリッパはこっち。」
「んじゃ4階は?」
「セキュリティ関係は4階で24時間管理してるの。SPの人達が休憩する部屋と通いのメイドさんたちが休憩する部屋、ばあやの部屋も4階なの。」

探が笑っていう。

「へぇ…… 凄いんだね(ってか俺ン家より凄くね?)」
「コナン君の親戚のお兄さん―… 工藤新一君の家のセキュリティも凄いって聞いた事があるよ。 工藤優作さんは世界に名立たる小説家、妻の有希子さんも隠退したとはいえ世界に名を馳せた女優の藤峰有希子さん。 ファンやストーカー被害を考えてればセキュリティは必要でしょう?」
「あはは! 確かに新一兄ちゃんの家もセキュリティ対策してるけど、警備会社と契約してる程度だよ。工藤のおじさんもおばさんも自信過剰なだけで、いい年だからファンなんてこないしね」
「その言葉、そのまま伝えてもいいかしら…」

哀がスマホを取り出す

「いっ! オメー何時の間に」
「この間、博士の家に挨拶に来た時に連絡先を教えてくれたの。 コナンちゃんに何かあったら連絡頂戴って、フサエブランドの新作ポーチを手土産にね…」
「スイマセンデシター」

コナンは半目になって頭を下げる

「江戸川君って哀ちゃんには頭が上がらないのね」

くすくすと笑う桜

「灰原さんはコナン君のストッパーですからね。 少年探偵団の中で一番落ち着いているんですよ! 推理が一番なのはコナン君ですけど」
「そう」
「悪かったな! オメーらだって事件っていえばいっつも俺の後をついて来るじゃねーか」
「コナン君」

探が小さく睨む

「桜も時々言葉が悪くなるけど、君も相当口が悪いね。 君はもっと丁寧な言葉使いを覚えるように毛利さんに報告しないと駄目みたいだね」
「こ、小五郎のおじさんがいつもこんな口調だから、つ、ついっ」
「そうかしら?」
「灰原〜〜 おめーも少しは否定しろよな!」
「できないわね。 言葉が悪いのは何時もだし」

うんうん、と頷く元太に光彦に歩美

「あと、元太君も少し悪いね」
「ぇ!」

「以前、大人に向ってタメ口を使っていただろう? それが許されるのは友人同士。言葉遣いを覚えないと大人になってから、先輩後輩の間が出てくると無視されたち虐めの対象にもなるからね」
「いっ! そんなヤツラこっちから縁切ってやるぜ!」
「ホラ。 そういうのが駄目なんだよ。 体格や武術とかで相手をやりこめるのは自分に自信がないという事にもなるからね。 自分のいう事を聞かないからと暴力で事をおさめるのは状況にもよるけど器物破損罪になるし、過剰防衛で逮捕される場合もあるんだよ」
「そうなのか、コナン?」
「あー… まぁ。 そーゆーバアイも確かに (この台詞、蘭が聞いたら、犯人捕まえたのに何が悪いの! って激怒するかもしれねーな)」

「さ、お説教なんて僕のガラじゃないし、今日はパーティなんだから。」

4階に上がれば廊下に置かれたテーブルに飾られた生花から漂う天然のアロマテラピー

「うわぁ‥‥ いい香り。 」
「通いのメイドさんの一人にフラワーアレンジメントの資格を持っている人がいて玄関とリビングのアレンジを任せているの。お花は業者から買うんだけど、天然の花の香はリラクゼーション効果もあるからって。 今日はパーティだから昨日から飾ってあるのよ」
「へぇ… それでお家に入った時から良い香りがするんですね」
「さぁ、どうぞ。 この部屋だよ。」

探はサンルームを開けた
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