Act-10 魂の救済
澳門から北京、香港を回り
そしてスペインに行き……
途中の移動で睡眠薬を飲ませれたり、頭からすっぽりマスクをかぶせられたりして、ルートが解らなくなったりした。
そして、場所についたら叩き起こされ集金、あるいは狙撃。

気が付いたらあっという間に3ケ月が過ぎていた。



「やっと日本に帰れるな」
「これで少しゆっくり寝れる」
「何言ってる! 日本の女よりも良い女がそろってるって、あちこちの女を引っ掛けてた癖に」
「ははっ! 自分の金で女を買うのは自由だからな、最初から割り切って付き合えるのは気楽だし」
「日本じゃ縛られるってか?」
「これでも子供いるからなぁ…… 日本で浮気は出来ないしな」

俺は 同僚たちのそんな会話に、胸が悪くなりそうだった。
組織の1人として、付き合いで何度か女を抱いたが満たされない……。

幾つもの仕事をこなし、不本意乍、組織に逆らう連中を痛めつけ、撃ち抜いて、成績を上げた数ヶ月。

狼の巣窟を探る為とはいえ、彼等にも愛する家族が居る
家族の為、組織から抜けようとした彼等…………
残された家族を思い出すと心臓の奥が痛む。
どうか安らかに眠って欲しい。

カトリックでは無いが、彼等の死後の世界が安寧で有る事を願う事しか俺には出来ない。




♪・・・・・・・・♪

What a Friend we have in Jesus,
all our sins and griefs to bear!
What a privilege to carry
everything to God in prayer!

O what peace we often forfeit,
O what needless pain we bear,
All because we do not carry
everything to God in prayer.



この間のリサイタルで歌媛が歌った賛美歌312番が口から出た
高く細く そして、冷えた心に優しく響いてくる歌媛の声
英語・独逸語・日本語と、見事に歌いわけていた

あの声を思い出すだけで、潰れそうな心に染みわたってくる暖かさ・・。



いつくしみふかき ともなるイエスは
つみ とが うれいを とりさりたもう
こころのなげきを つつまず のべて
などかは おろさぬ おえる おもにを

いつくしみふかき ともなるイエスは
われらのよわきを しりて あわれむ
なやみ かなしみに しずめるときも
いのりに こたえて なぐさめたまわん

いつくしみふかき ともなるイエスは
かわらぬ あいもて みちびきたもう
よの とも われらを すてさるときも
いのりに こたえて いたわりたまわん



♪・・・・・・・・♪




耳に残る、歌媛の賛美歌。
俺はカトリック信者ではないが、
傷付けた彼らの事を記憶の中に残して忘れずにいよう


「……すまない。」

俺は彼らの墓に詣でる事は出来ない。

裏切の事は仲間たちが上手く処理してくれるだろう。
裏切り者の家族だからと、ライフルで撃ち抜いた場所は致命傷にはなってない筈……
だれかが仕留め直しをしない限り…… 助かるはずだ。
運よく生き残ったら、ジョディの時のように証人保護を受けれる筈だ


歌媛が歌った賛美歌。
祈祷歌にレクイエム


……投資家が泣くのがわかった気がする。

(彼等に聴かせたら、安らぎを上げれるだろうか? いつか、救われるだろうか……)

歌媛ディーヴァ

君の声は
組織で裏切りものを探す為に使うのでなく
傷付いた人の魂を癒すために
救いを求める人たちの為にこそ使われるべきもの。

あの日歌った讃美歌312番は俺が知ってる歌詞ではなかった
どこまで深い知識なのか、同じメロディーで”星の界”としても歌われる曲

歌媛ディーヴァ

どうか

俺の魂に

一時の救済を…………


♪・・・・・・・・♪


月なきみ空に きらめく光
嗚呼その星影 希望のすがた
人智は果てなし 無窮の遠に
いざその星影 きわめも行かん

雲なきみ空に 横とう光
嗚呼洋々たる 銀河の流れ
仰ぎて眺むる 万里のあなた
いざ棹させよや 窮理の船に

(*星の界(よ)/作詞:杉谷代水)
♪・・・・・・・・♪
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