Act-22 狗
ジンに云われ、主任の後を追ったライ。
見つけるのは、簡単だった。
「主任!? ディーヴァに何をっ!? 」
諸星は警備主任である男の腕の中でぐったりとなっているディーヴァを見かけて声を掛ける。
「何をしているんです!?」
「ライ……。」
主任が云う。
目の前に、焦りを顔に出した主任が、腕の中にディーヴァを抱きかかえている。
ここまでくるのに4〜5人の男とやり合った所為でジャケットに返り血がついてるが、相手の男たちは、金髪ボウヤの方のメンバーが回収されている筈だ。
軽傷で止める余裕がなくて、腕を撃ち、足を折ったりしてきたたが、奴らのプロならこちらもプロ。
命には別条ない筈だ。
ライは蹴倒してきた連中への攻撃を思い出す。
(馬鹿だな)
「お前が来るかもしれないと、想定してたのに、俺は」
(零…… お前の計画はまだまだ…… だった、な)
ライはゆっくりと近づいて云う
「ディーヴァを護衛して、ベルモットと脱出させるのが仕事の筈だ!」
「ディーヴァ を 保護して 組織を…… 俺は……」
「ディーヴァ!」
諸星は主任の腕の中のディーヴァを見る。
「怪我は! ディーヴァ!?」
「大した事はない。 ナイフが掠った程度だ。」
「ナイフ?」
「……私も歌い手達も躰の何処かにナイフを隠し持っている。 組織の1員としてナイフの使い方は教えられる ……こいつは少し手ごわくて…… 反対にナイフを取られてしまった」
足元に落ちている鋭利な細身のナイフをみてディーヴァが云う。
「……馬鹿な警備役だ。 私がディーヴァ様…… などと」
「ぇ?」
「ディーヴァ 様は ジン様を護衛としてとうに逃げ出された筈…」
「!!」
「ー…… 聞け ライ」
苦しい息の中で男が云う。
声に出さない、唇だけ。
諸星が唇を読めるからだ。
「(この子はディーヴァの身代わり……)」
「!!」
「(ディーヴァは まだ…… 子供。幼児の…… 姿)」
「おい! ディーヴァに何をした!?」
諸星は気付いてない降りをして、ディーヴァの腕に赤く滲むものを見咎めて怒鳴りつける。
―…… この子はディーヴァじゃない。 だとしても何故、怪我をさせる真似を!?
「(聞け……ライ。 ディーヴァは 声で人を 操れる。善にも悪にも染める事が出来るんだ。 傷ついた精神を癒す事も、怒りを増幅させる事も出来る。 組織がディーヴァの声の波動で…… <リサイタル>で飲んだ酒は催眠状態にしてるんだ)」
「主任!」
「いいか?」
「(ディーヴァの眠るライフル用のキャリーバック…… 酸素は2時間。 だが……俺達が 細工 し た……)」
「(細工?)」
「(空気の 流れ 早く ……催眠ガスを…… 変え…… 記憶を、錯乱……させる)」
「主任っ!!」
ー…… 諸星の頭の中が回転を始める。
(ジンの持ってるキャリーバックの中。 催眠ガスの変わりに神経を麻痺させるガスを混ぜた、という事か!? そしてバックの中でめぐる酸素のスピードも早めて…… となると、ディーヴァが……!!)
「ディーヴァっ!」
「(これを)」
男が小さなカードを己のポケットからちらりと見せる。
「(発信器と対だ)」
「……主任!!!」
「(行 け ……! 目先の事に囚われるな)」
「主任っ! ディーヴァから離れるんだ!」
「俺は…… 俺が……っディーヴァを 殺す。 (ディーヴァの正体を知って、ディーヴァを…… 仲間に渡したと思わ せ ろ!)」
男はゆらりと立ち上がる。
「……俺も後から行ってやる ディーヴァ」
ディーヴァの頭に銃を構える男
「(私がディーヴァ を 任務の為に拉致しようとした…… お前が 止める)」
「撃つがいい。 私は歌媛。 死など恐れぬ。 組織は次のディーヴァをまた育てる」
偽のディーヴァが笑う
「ライ! 主任!? 歌い手をどうして、警備主任が!」
「寄るな!」
バタバタと銃を手に集まって来る警備。
その中に顔だけ見知った仲間。
ガシャり
主任に向かって銃が標準を向ける。
「撃つな! ディーヴァに当たる!」
「え!?」
「ディーヴァ ……様!?」
ディーヴァの顔を知らない警備。
「そうだ! 彼女が、組織の歌媛」
「構うな! ……私を撃て。」
仮初めのディーヴァが云う。
「組織の手から離れる位なら…… この男ごと私を撃て。 私は組織の歌媛ディーヴァ。 組織以外で 歌う気は ない」
「主任っ! ディーヴァを解放するんだ!」
ライが銃を構えて云う。
「悪いな…… ライ。 ディーヴァを保護するのが俺の任務だ。 <リサイタル>が開けなくなる。」
「……主任っ!」
男がディーヴァを腕の中に入れて後退する。
「……」
(これまでか)
ライは警備の輪から抜けて足を進める。
「……主任が ”日本”を愛している事位、当にバレでいたんです。」
ライは背後に視線を浴びながら言葉を紡ぐ。
「俺達を追い払いたいなら どうしてもっと綿密な計画を立てなかったんです?」
「ライ…… お前には関係ない。 俺は、組織を…… 潰す為に来たんだからな……っ!?」
ディーヴァの躰に向けていた銃が鈍い音を立ててる。
「ディーヴァ様っ」
ディーヴァの腕から鮮血が流れおちる。
ー…… 狩るべき時。 狩るべき相手を見誤るな・・
(ならば 俺はっ……! 俺にできる事をしてやろうじゃないかっ!)
「おい」
「はい!?」
「コレを持ってろ」
ライは銃を傍に居る警備に投げ渡すと続いてジャケットをぬいで放り投げるように手渡すとネクタイを緩める
「なっ! あいつは銃を持ってるんですよ!?」
「あいにく、こんな犬に使う銃は持ち合わせていないんでね」
袖口のボタンを外して、深呼吸を一つ
「少々運動不足気味なんでな? 俺の截拳道の練習相手に なって 貰おうかっ!」
ライは得意の瞬発力を生かして男を蹴り上げると少女を引き剥がす。
「誰か、複数名でディーヴァをジンの所まで護衛しろっ! こいつは俺が 倒す。」
ー…… この儘硬直状態を続けていても
(ジンのベレッタに撃ち殺されるのは目に見えている。 それならば……)
截拳道は実践向けの体術。
心臓や目を狙う寸止めを使うのは試合だけだ。
足の骨はおらずに筋を狙い、経穴を狙って動きを止めるのは簡単だが、利腕を潰すついでにカードを抜き取る。
潜り込んできた犬だけあって、必死に受け止める。
「……ライ…… お前は……(お前の任務を果たせ)」
男が呟く
「(透を 頼む)」
「(承知……)」
ニヤリ、と男が笑う
「……これでっ 終わりにさせて貰うぞ、ライっ!」
隠し持っていたアーミーナイフを取出した男はライの頬に向かって傷を走らせる
(I don't forget your's last。 End of the time, Until a day to see again)
ライは奥歯を噛みしめる。
(何時か、地獄で、逢おう)
(お互い 酒を 持参でな……?)
(ライとウォッカを持って…… 必ず)
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