Act-23 制裁
バキっ!


諸星が容赦なく脇腹を蹴り上げれば肋骨が折れたような音がした。


苦痛に顔をゆがめて 崩れ落ちる。

「ー…… コイツを連れて行け! 他に仲間がいるかもしれないから自白させる…… 本部に戻るまで殺すなよ」
「(透を たの・・む)」

男は微かに笑みを浮かべる。
その視界の影に金髪の狼。


ー…… お前は俺のようなミスをするな……

ライに容赦なく痛めつけられた躰は悲鳴を上げて、肩を支えられたとしても足を引きずって歩くのがやっと。
俺の左右を固めているのは…… 恐らく……






「待て」





鋭い声がその場に響く






その、冷たく冷えた声のトーンに、その場の全員が硬直する
銀の長髪の男。


「何故、そいつを撃たなかった、ライ。 発砲許可は与えた筈だ」
「銃を使うと本部で自白剤が直ぐに使えないと判断しました。 それに、こんな犬に銃の弾を使うのは無駄ですよ。 俺は狙撃手です。外れない距離で撃つのは楽しく有りません」
「らしい台詞だな? なら…… ”あの方”の命だと言ったら、この場で撃てるか?」
「動かない的を撃てと?」
「動かない的は嫌いか?」
「”あの方”の命だというのなら撃ちますが、俺の好みでは有りません。」
「フン。 ……違いねぇか。 俺も抵抗できねぇ動かない的を撃つのは趣味じゃねぇ。 
狙撃の醍醐味は、動く標的や700ヤード先の標的を撃って当てた瞬間が面白れェんだからな……」

ジンは喉の奥で笑う。

「そこで隠れてるヤツ。隠れてねェで出て来い。」
「ー…… ハイ」

ジンの言葉に、不承不承の顔で、姿を見せる安室。


「ライは近距離はゲームにもならなくて嫌だそうだ。 こいつをテメェの練習台に下げ渡してやる。撃って見せろ。」
「僕に。上司を撃てと」
「上司を撃つのは嫌か?」
「気分の良い物では有りません」
「手が震えて撃てねぇってか?」
「いえ…… そういう訳では」
「情けないなぁ? まさかテメェも犬か?」
「……!」

 
(先輩……! 僕はどうすれば…!) 



「まさか、金髪坊やは銃も扱えないのか?」

ライが右手で銃を持ち寄って来る。

「裏切り者とはいえ、情けない後輩を持って気の毒な事だな」
「ライ?動かない標的は撃てねぇンじゃ無かったか?」
「金髪坊やに、利き腕じゃ無くても銃を使えることを教えてやろうかと思ったんですが。まぁ、明後日の方向を向いても当てる位出来る、とね?」


パン!

「…………っ!」

小気味よい音が鳴れば太腿に当たる。

「……っと やれやれ……、慣れない右手だと感覚が狂うな」

諸星は銃を握り替えす。

「貴様! 諸星! 人の命を……っ」

「人? こいつの仲間が<リサイタル>を潰したんだ。組織の連中は人ではないというのか? 最もバイク部隊とヘリで追っているからよほど運が良くないと組織の連中に捕まるだろうがな? 目には目を歯には歯を…… 命には命を…… 裏切りには死を持って償う。 幾らボウヤでも、知らないとか 覚えてないとか…… いわないだろう?」

諸星はくすりと笑う。
ライはすっと右手を上げる。

「主任を殺すのか!?」
「殺す? おいおい。穏やかじゃないなぁ? コイツはディーヴァを拉致しようとした裏切りものだぞ? そんなやつを庇うのか?」
「……!」
「こいつの命乞いは、お前もこいつと同じどこかのセクションの犬だと証明するようなものだと思うが、な?」
「そんな……」


安室は答えられずに黙り込む。

(ダメだ。 今 ここで 反論したら僕のことまでバレでしまう……!)






「それに」



ライは主任の方をみて意味ありげに笑いかける。



「俺が痛めつけたその足じゃ罅位入ってるだろうし、腿は掠っただけだが、逃げられないだろう?





なぁ……?








“スコッチ”?」











ライは不適な狐を描くような笑みを見せて呼びかけた。
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