Act-24 怨恨
「ライ? お前…… 知って…… 気付いて たのか?」
力の入らない足でやっと立ちあがった主任……もとい ”スコッチ”が目を見開く
「此処には、主任ランクは沢山居ます。ただの主任レベル程度の構成員に、ディーヴァの<リサイタル>の警備責任者をさせるとは思えなかったんでね。俺なりに調査させて貰いました」
「流石 というべきか」
溜息をつくスコッチ。
(だからこそ、俺は…… 迷わなくて済む)
最終的な目的は同じだが、ライは安室と違う。
(透…… 諸星のように 強くなれ…… よ)
スコッチは少し頼りない後輩をみて微笑む。
「主任が 幹部?」
安室が茫然とする。
「一介の狙撃手の俺ですら調べられた事なのに、金髪坊やは知らなかったのか? 君達の得意分野だろう?」
「…………っ」
安室はライの言葉に顔を歪める。
「情けないな? どうします、ジン? このボウヤも撃ちますか?」
「いや。コイツはまだ使える…… だが、当分は躾からだな。」
クックックッ…… と喉の奥で笑うジン。
「それだけ可愛い顔なんだ。オークションにだせば、一晩で何人かは客が付くだろうぜ?」
「……!」
「裏切り者を撃てねぇ構成員なんざ組織に必要ねぇ。”あの方”には俺が報告してやるから、半年程ホストに降格だ。精々、夜の蝶の生活を楽しむんだな」
楽しそうに笑うジン。
「僕を商品にする気か!」
「気の毒だな坊や。精々、有閑マダムに可愛がってもらうといい……。 甘噛みのオイタは程々にな?」
「諸星…… 貴様……っ」
「(スコッチの命と引き換えになら……)半年後…… 生きてるといいな?」
パンッ!
小気味良い音が響いて、諸星はスコッチ、と呼んだ男の顔を見ずに無造作に銃を撃った
「先ぱ……っ! 主任………………っ!!」
安室の悲鳴。
ドサリと崩れ落ちる音。
「さて……と。見苦しいものはさっさと片付けけても?」
「ああ……いいだろう。死体は適当に処分しておけ。」
「承知しました。 ー…… 運び出せ!」
「は……っ はいっ!」
男が2人駆け寄ってくる。
「どこか…… 樹海でも抛り棄てるか。その前の処理施設で顔を焼いて、指紋も焼いて……」
「……はい。」
独りが頭を独りが足の方を持って去って行く。
「フン…… 明後日の方を向いて心臓に命中か…… 大した右手だ。」
「先ほどは下手しましたから…… この距離で外したら狙撃手の名前を返上しなければなりませんよ。 分かったか? ボウヤ? 銃はこうやって撃つものだ。」
「良くも…… 主任を・・」
ー…… よくも 僕の先輩を!
(仲間を! 同僚を……!)
(赦さない。 赦さない……! 僕はコイツを……!! 何時か 必ず……!!)
安室は唇が切れる程噛みしめる。
「安室を連れて行け! 念の為に自白剤を投与して、犬じゃないかどうか確かめろ。その後はホストの教育係に渡せ! カッキリ半年 どう教育してもいいし、好きにしてもいいが、食事はきっちり与えて、綺麗に使えと、と伝えてな?」
「はっ はい!」
ジンの言葉に警備の一人が安室の腕を後ろに回す。
「僕に触るな!」
安室はウェストに忍ばせていた銃を弾きぬくと警備に殴りかかろうとして、ライの蹴りを浴びる。
「聞き分けがないと、半年が1年になるぞ? 坊や? 」
容赦なく両腕をひねりあげて後ろ手にして、パソコン用の拘束帯でつなぐ。
(長引く程 困る事になるンじゃ無いのか?)
安室の耳元で囁く。
「く……っ」
「連れて行け! 車に乗せる前に足の拘束も忘れるな!」
「僕に触るな、といっただろ! 独りで歩く!」
安室はライを睨み付ける。
ー…… それでいい。
(俺を憎め。 そして、いつか、スコッチのような狼となれ……)
ライは地面に落ちた安室の銃とスコッチの銃を取り上げるとジンに差し出す。
「どうしますか? この銃は」
「ハン? テメェにやる。」
「わかりました。折角なので分解練習用に貰います。」
「好きにしろ。」
ライは銃をベルトに無造作に差し込むとゆっくりと歩き出す。
「ライ」
「何か?」
「褒美をやろう。」
「褒美?」
「そのうち、てめぇに大きな仕事を一つ、くれてやる」
「…… 大きな 仕事」
「…… 幹部になったばかりのルーキーには勿体ない位のを用意しておいてやる。楽しみにしていろ」
「はい」
ライは背中に視線を浴びながら場を離れる。
そのライの前に、数名の部下に守られて、腕に包帯を巻き、柔らかなストールを巻き付けた、ディーヴァがライに近づいてくる
「ディーヴァ 怪我は大丈夫か?」
「大丈夫だ。 こんな傷位直ぐ治る。」
「良かった。 組織の歌媛の躰に傷が残っては大変だからな……」
ライは優しい笑みを見せる。
「ライ、といったな?」
ディーヴァが声を掛ける。
「何故、私毎、あの裏切り者…… スコッチを撃たなかった? 私は……」
「スコッチと、ディーヴァ…… 組織として、優先するのは、歌媛の命です。」
「!」
「歌媛の命は一つ。 裏切り者は死を持って償うのが決まり」
「ライ。」
「いつか、また、リサイタルに招待されるのを、待っています」
ライは優しい笑みを見せ、仮初めのディーヴァは複雑な顔を見せる
(私は身替わりの、ディーヴァなのに、ディーヴァとして、生きろと…… )
「では」
ライは耳のインカムを確認した。
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