Act-25 出会い 前編
スコッチの上着から抜き取り、”仲間”に渡した、GPSと対になっているカード。
あいつ等は無事に見つけただろうか。
本当のディーヴァは、ガスの所為で弱っているかもしれないというのに、俺はその事を伝えられずにいる。
もし、スコッチの言った通りに幼児の姿だとしたら、組織はその幼児に何をしたんだ?
<リサイタル>でのあの声は幼児に出せる事じゃない。
才能もあるだろうが、絶対音感やら絶対聴力、世界ランクでトップ教師に鍛えられて出せる音域。
気にはなるが、俺はディーヴァが少女だと思い込んでいる態度をとる。
「いいか? ディーヴァのバンは使えない。彼女の護衛は、ジンの指示に従え。」
「承知しました。」
「俺は、死体の処理に付き合う。まぁ……組織の病院か どこかの埋め立て地か 」
「臓器だけ専門業者に売りますか?」
「あー…… それは考えないで痛めつけたな」
「組織の顧客の関係者で、移植を希望する家族持ちも居るんですよ? 健康な男の臓器なら高く売れたかもしれないのに。 幹部として強いのは頼もしい事ですが、痛めつける場所を……」
「ははっ! 今度から気を付けよう」
ー…… 冗談じゃない。 臓器売価なんてさせてたまるか
(いや、売価では無く…… 移植 というのなら、 彼の身体の一部は……)
ライはジンの視線を背後に感じながら話をする。
未だに喧騒は収まらないが、日本警察の介入は潜入した連中が抑えたらしい。
そして、ストレッチャーに乗せられて運び出される、スコッチと付き従う白衣の男と構成員。
「待て」
諸星が止める
「何か?」
「裏切り者とはいえ、俺が幹部になるきっかけをくれた人だからな…… 死に顔位覚えておいてやりたい」
パラリと白布を剥がすと、顔を目に焼き付ける
「そうですか」
「安室は?」
「暴れるので、麻酔を打たれたみたいです。 良いんだか悪いんだか」
「本部の専門家が組織に役立てる用に躾をしてくれるさ。 彼だって、それなりの覚悟が有る筈だ」
「そうですね」
「行くぞ!」
諸星は声を掛ける
「どこに棄てますか?」
「ー…… 死体処理場へ変更だ。 もし、使える臓器があるのなら、臓器移植で組織に多額の寄付をできる顧客がいるかもしれない。」
「では、先に連絡をしておきます」
「そうしてくれ。臓器移植は時間が掛かる上に時間との勝負だ」
「それからジャケットの予備あるか? 車のシートに血糊を付けたくないからな。」
「車のトランクに普通のカッターシャツと、少し大きめのジーンズでよければあります。 後、歩きやすい靴もありますがサイズがあうかどうかは。」
「それでも助かるよ。 革靴は運動には向かないからな。」
車にも盗聴器が仕掛けられている筈だが、着替えたのが解る位でちょうどよい。
ライは目立たないように手話を始める
「(ー……準備は)」
「(予報通りコードQ…… いえ、Yが入りました!?)」
「(Y……だと!?)」
万一の場合のY
子供を救出した場合、子供の体調が急変した時に使うコード
「急ごう。時間がない」
「(了解しました)」
スコッチの遺体を乗せた大型車と、組織が使う警察車両を模した車(同じ車種だがFBIで改造した)のおかげで、追跡している車たちとは違って信号で止まらなくても済ませられる。
多少なりとも時間を稼げる。
「(赤井さん。飛び込めますか?)」
「(問題ない。門が空いてれば飛び込める)」
「(わかりました)」
「(俺が飛び出たら直ぐにドアを閉めろ。)」
「(了解。)」
万一の落ち合う場所は、外資の会社名で借りた邸宅
社長と夫人が居て、息子が2人と嫁が一人。
子供はなし。
全員、生抜きで腕利きのFBIメンバー。
外資の会社だが登記簿も100年以上もの歴史を持つれっきとした大会社で、諸星の所属するFBIと密接な繋がりを持つ。
その会社の日本支社を束ねるのがFBI捜査官だが、それは日本でも公にされていない。
ただし、外資の大会社の支社長一家の邸宅、という事で玄関にはSPが24時間詰めているのは役所にも届をしている為、日本警察も組織も把握しているだろう。
邸宅中に監視カメラ、窓は防弾。
諸星は車の中でスーツを脱ぎ、シャツを脱いで、用意しておいたTシャツと新しいブルゾンを着る。
そして、少し離れて追いかけて来る車。
(予想通り、か)
諸星が死体処理場に向かうか、確認する為に付いて来る
「(いいか、2時間、誤魔化せ。すぐに追う。)」
「(了解)」
「(返事がいる場合はインカムを通して俺が答えるが、病院だったら電波が悪いと誤魔化せる筈だ)」
「(任せて下さい)」
邸宅の玄関は空いて居るが諸星が飛び込み次第、警備員が閉める手配になっている。
幸い角地なので、宅配業者がゆっくりと通り過ぎる手筈。
救急車両が通り、諸星の乗った車が通る。
そして、タイミング良く家族連れの自転車が通り、その後ろに宅配業者の車を装い、配達を装って待機しているのを目の淵で確認して、後部の隠しシートを叩いて合図すれば、返信の合図。
スコッチの遺体を乗せた組織の車が邸宅の前を通って行ったのを確認して、諸星は家の中に飛び込んだ。
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