Act-28 尋問 前編
ライが本部に戻り、シャワールームで汗と匂いを消し、煙草をすって、ジンのパートナーであるウォッカに連絡を入れると、本部の尋問室へ来いと一言。
余り見たいものでもないと思ったものの、ここで小さなミスを一つでもする訳にはいかない。
通り道にある自動販売機でブラックコーヒーを見つけて購入すると一気に飲み干してビルの裏口からはいろうとする。。
「こっちだ、ライ」
「ウォッカ? 何故、此処に」
「兄貴がライなら此位の時間位に裏から来ると言ったからな」
「そうか」
ライは苦笑する
「金髪坊やは生きてるのか?」
「随分な言い方だが兄貴の命令通り、生きてるぜ? 自白剤で喋ったのは、ライを殺すって事だけさ」
「おいおい 撃てなかったのは金髪の小犬なのに、逆恨みか?」
「さぁなぁ? だが、その子犬が痛みには強いのは確かだ。それこそ、電気か鞭で責めてた方が効果有るかも知れないな」
「ジンは究極のサドみたいだな」
「はっ! 兄貴に情なんて必要ねぇよ。 ……もし、あるとしたら、ディーヴァとシェリーにだけだ」
「ディーヴァとシェリー?」
「あの2人は兄貴の気に入りだ。 特にディーヴァは兄貴と俺、キャンティやコルンもカルヴァドスも……、あの方の気に入りのベルモットですら可愛がってる」
上級レベルの幹部のコードネームが出てくる事に諸星=ライは溜め息しか出ない。
「揃いも揃ってファンクラブか?」
「そんなんじゃねぇよ。 ディーヴァの事はそんな一言で片づけられる問題なんかじゃねぇ……!」
「何が、あったんだ? 俺が助けたのはディーヴァではないと、ジンが言った。スコッチは本当のディーヴァに何をしたんだ?」
「……」
「ウォッカ?」
「ー……奴等 ディーヴァを拉致しやがった」
「拉致?」
諸星は業と驚いた顔を見せる
「ー…… ディーヴァは幹部だがとても躰が弱い。 <リサイタル>で歌った後は、体力の消耗も激しいから温度管理をした完全防音の部屋でゆっくりと休養させないと躰が持たないというリスクを持ってる。」
「躰が弱い? 完全防音?」
「……ディーヴァはな、”産まれた時”からあっちこっちと弱いトコだらけのリスクをもってた。 ー……けどな、歌媛とかセイレーンの通り名由来の通り絶対音感と絶対聴覚を持って産まれた。 雑音に敏感でな。ドラマやゲームの音をとても嫌がる。もちろん音痴の曲もNGだ。 強い日差しの日中に外にでれば肌が火傷する位日光アレルギーで、組織の粋を掛けて治療してやっと、日光アレルギーの治療が終わったばかり。」
「日光アレルギー……?」
「ディーヴァの治療はまだかかる……。 あの声と能力がなければ処分されていた筈の子供だ」
「だが、組織は治療を選んだ」
「シェリーがあの方に直談判したんだよ。ジンを通してだったがな。シェリーの薬学の知識はディーヴァの治療を見つける為のものでもあった」
「シェリーが……」
諸星は顔を曇らせる。
「だから、<リサイタル>で移動する時はディーヴァの乗る車には運転席以外遮光のブラックシートを貼ってある。ディーヴァの専用のバンが色気も素っ気もない黒いバンだったのはゆっくり眠れるようにベッドがあるせいだ。 医師・・まぁ、大抵はシェリーが同乗するんだが。 最近、やっと、短時間なら遮光カーテンだけでも平気になったばかりだ」
「…………!」
(吐かせたのは失敗だったのか? いや、それよりもどうやって連絡を もう、救急車で病院に向かってるとしたら……車の移動……いや、今日は動かせないとしたら…… 明日…… 部屋の窓は大きかった)
「……以前、ディーヴァは潜入してきた狗に刺された事がある。……その時…… 助かったのが不思議な位弱い子だった」
ウォッカの言葉に諸星は黙り込む。
(組織の奴らにも仲間同士の情はある、という事か?)
「ルーキーのライには分からねぇし、関係ねぇ事だろうがな。兄貴がライは、ここまで関わったらディーヴァの事を知りたがる、教えなきゃ根掘り葉掘り調べだすから教えてやれと言ったから教えただけだ。 ……ライは馬鹿じゃねぇ。口外したらどうなるか、身を持って知ってるだろう ってな」
「ー……」
「どうした? ライ?」
「俺が”スコッチ”を撃ってしまった事が失敗だったと、改めて認識していた。 奴らの仲間がどうでるか、とな? 彼女の躰が弱いなら尚更だ。日光アレルギーを知らずに移動させてるかもしれない」
「仕方ねぇさ。ディーヴァの事は、トップシークレットだ。 俺ですら兄貴から教えられてない事もある。」
「ホォー…………?」
「ディーヴァの事は興味本位で詮索すると痛い目にあう。 ディーヴァは声で人を殺せる、声を武器に持つたった一人の幹部だからな」
「幹部 子供がか?」
「ディーヴァは特別だ。 実話だが、自分に大怪我をさせた裏切り者を泣声で殺した。」
「殺 し た? まだ 子供だろ?」
「子供だから容赦が無かった。泣声を納めたのはシェリーだが、裏切りものは脳波に異常をきたすし、助け出そうとした警備達も偏頭痛で1週間程頭痛薬を服む羽目に陥った」
「それは」
「最もあの時はシェリーも容赦なかったな……… ジンの兄貴に向かって”こいつらを処分して!”と、調べる間もなく、言いやがった」
「ホォ―……」
「ジンの兄貴も兄貴で”あの方”の許可も得ずベレッタで撃ちぬいたがな。……最も正気を無くしてたから、尋問なんて出来ねぇ状態だったが」
「…………」
「っと! ああ、この部屋の隣だ」
ウォッカはと、ある続き部屋の一つの前で立ち止まった。
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