Act-45 BAU 前編
空港のVIPルームを借りきって3日。
そろそろ移動しないと組織の目を眩ますのが難しくなった頃、やっと熱が微熱迄下がった。
病室でミーティングをしたい所だが、絶対聴覚を持っているのでミーティングは隣の部屋でしている

「昨日の夜と同じー…… ほぼ平熱迄下がったと言っても良いでしょう。」
「そうか。 フライトに耐えられそうか?」
「出きれば明日迄、様子を診たい所ですが、安静にしてれば何時でも行けると思います。これ位なら専用ジェット内の医療器材で対処できます。」
「どうしますか、赤井さん?」
「なら、一時間でも早い方がいい。 パイロットとオフタイムの連中を呼び戻そう」
「午後にはフライトできるように管制塔に滑走路を確保して貰います。私が管制塔に申請しますからロッシはメンバーを呼び戻してください。」

長身でダークグレーのスーツを着こなした男がバインダーを閉じて云う

「承知した。フライトの時間は?」

ロッシと呼ばれた長袖にジーンズ姿の壮年の男が頷く。

「最短でも午後になるでしょう。他の飛行機に交じって飛び立つとしたらタイミングを計るしかありません」
「済まない。BAU専用のジェットを使わせて貰うのに迷惑をかける」
「迷惑なんかじゃありません。 …… あの組織がかかわったという時間はお蔵入りが殆どだ。行動分析課としても奴らの犯行の一端でも垣間見る事ができるなら3日が1ケ月でも貸し出しますよ」
「全くだ。これで次回の著書は君のいう黒の組織の分析の本になるな」
「ありがとう。ホッチ。 本を執筆するのは自由だが、組織にバレたら眉間に穴があきますよ。ジンは凄腕の狙撃手だ。 ジン以外にも優秀な狙撃手が揃っていて、600ヤード超えの狙撃手は山といる。」
「そうか。 では用心に用心を重ねるとしよう」

ロッシ、と呼ばれた男は溜息をついた。

「で、君が養女にするお姫様はフライトの事を知ってるのか?」
「今日のフライトの話はしてないがDrの判断で、真夜中に飛ぶかもしれないとは話してある。 桜は若干人見知りをする子なので先に紹介をしましょう。……寝てなければ、ですが」
「そうだな。」

赤井が立ち上がる。

ミーティング用の部屋をでて、隣の部屋のドアに向かえば、部屋の中から小さな歌声が聞こえる。


♪・・・・・・・・♪



メモリー あおぎ見て月を
思い出をたどり 歩いてゆけば
出逢えるわ 幸せの姿に
新しい命に

メモリー 月明かりの中
美しく去った 過ぎし日を思う
忘れない その幸せの日々
思い出よ 還れ


♪・・・・・・・・♪


「起きてるな。 歌を歌ってるという事は少し体力も戻ってきてるようだ。 フライトしても大丈夫だろう。 今日はどうやらミュージカルの気分らしい」

赤井の口角が少し上がって笑みが浮かぶ

「CAT’S のMemoryだな? 日本語か。 ……まるで歌手が歌ってるような。 本当に4歳なのか」

目を丸くするロッシ。

「ー…… 見事な声だ」
「桜は、ミューズの祝福を受けて産まれてきた子ですから。 童謡だろうがオペラだろうが、アカペラで歌いこなします。 主旋律すらいらない程の音感です」
「絶対音感、というやつですね。 それは凄いな。 普通4歳といえば語彙が増えているが音程もバラバラで元気よく歌うものだが」
「ー…… 元々才能があったんだろう。 絶対音感、絶対聴覚で、殆どの歌は一度きけば覚えてしまう。」



♪・・・・・・・・♪


街の灯は 消え去り
夜の終わりが
古き日は去り行きつつ
夜明けが近づく

デイライト 夜明けとともに
新たな命を 日はもう昇る
この夜を思い出に渡して
明日に向かうの


♪・・・・・・・・♪


「ー…… これが、俺の娘の声なんです。 想像の範囲ですが、桜はこの声を持っているから、拉致されて組織で育てられていた。 そして、…… 今は自分の本当の名前も、両親の記憶も覚えていない。」
「記憶が戻るまでー…… 本当の両親を見つけるまで、守ってあげるのが君の生涯の役目だと、いう事だな」


♪・・・・・・・・♪


木洩れ陽は輝き
光があふれる
花のように朝が開く
思い出は去る

お願い 私にさわって
私を抱いて 光とともに
わかるわ 幸せの姿が
ほら見て 明日が


♪・・・・・・・・♪


「そのつもりです。 桜は俺の娘ですから」

赤井が小さくノックをすれば歌声が止まった
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