Act-49 疑惑浮上
「ライを見つけて逃げられた、だと?」

黒いコートを羽織った銀色の髪の男に殺人眼力で見られてがくがくと震える下っ端の構成員。
上手く仕留める事ができたら3ランクに昇進と云われて飛び待っている捜索隊のメンバーたち

「はっ…… じ…… 自分たちは、フィリピンで―…… ジン様に見せられたライの顔写真と同じ男を見つけてー…… 後を付けたんです」
「楽しそうに電話してたので気づかれないと……」
「で、逃がしたと?」
「ちっ ……違い ます。ライがー…… 攻撃を」
「テメェら、何の為に、銃を持ってる? ソイツは飾りか」
「いっ いえ。 俺達は、ライが連れているという子供を先にと」
「子供は連れてませんでした。 ほ、本当です」

鈍く輝く瞳。
殺人眼力を持つ幹部とも呼ばれるのは伊達じゃない。
怯えないのはシェリーとディーヴァ位だ。

「ー…… ウォッカ」
「へい。 シューティングルームでいいですかい?」
「否ー…… ハンティングだ。」
「久々の獲物って事ですか?」
「1発であの世なんて慈悲なんてかけてやる必要はねぇよ。 シェリーを呼べ。 後、キャンティにコルン、あぁ、ベルモットにも一応、声を掛けてやれ。 」
「シェリーはハンティングより臨床実験用に無傷なのを欲しいって、……兄貴に最初にぶっ飛ばされたから無傷なのは、一人としていやせんね…… を、 実験台に寄越せと云うんじゃありやせんか?」
「だろうな。」

ジンは口角を上げて笑う。

「構わねぇよ。半分なら生化学実験台に譲ってやる。 後の半分はゲームの獲物だ」
「承知しやした。」

ハンティング

ミスをしでかした構成員が生き延びる唯一無二のチャンス。

広大な敷地でミスをしでかした構成員に満タンの油が入ったジープと敷地内の地図と方位磁石、1日分の食糧と2ダースの弾とライフルを与えてゲーム開始時刻から2日間、つまり48時間逃げ延びる。
大怪我をしても48時間経過の時点で生きていれば罪は問われずに治療を受けて再起の機会を与えられるというサバイバルゲーム。
地図には山小屋や岩屋、追加の弾が置いてある場所、そして地図に掛かれてないライフゾーンがあり、そのライフゾーンは6時間毎に1時間だけ使えて、そのテリトリーにいる限り銃で狙われないというルールがある。
追う方の条件はマウンテンバイクかジープだが油は半分程で食糧も半日分と弾は1ダースで地図も方位磁石もない。
どうみても追う方が不利だ

が、ジンやキャンティが絡んだハンティングの場合、そのゲームに生き延びた構成員は今だかつて居ない。

「さーて…… どこのハンティング場を使うか……」
「スイスかオーストリアか…… ああ! 組織が買い取った無人島もいいっすね」
「無人島か…… たしか、宮野明美もそこに軟禁してるんだったな?」
「へい。 そこなら監視の幹部が幾人かいて夜も寂しくないっすからね」
「違いない。軟禁してどの位経つ?」
「時期4ケ月。 躰は十分満足して教育されてる筈です。 一流のホステスが務まりますよ。 ”躰だけ”はですが」
「ふん。 あんな低能女は監視員にくれてやっても構わないんだがー……」
「けど、始末しないのはシェリーに頼まれたからでしょう?」
「ほっとけ」
「まーったく。兄貴はシェリーとディーヴァにだけは甘いンすよね。」
「仕方ないだろう……。 いくら低能でも宮野明美は、あの、宮野博士夫妻の実の娘の一人だ。 あの躰には二人の遺伝子が流れている。殺したら生きたDNAの採取ができなくなる。それに、あの女の卵子はすでにラボで新しい研究に使われ始めている。」
「それをいうならシェリーの方が……」
「脳天に風穴開けれたいか」
「す、す、すいやせん!」
「シェリーはあの夫妻の娘の血を引いてるだけじゃねぇ。 組織の中枢幹部になろうとしている天才科学者で俺の女だ。危険性の有る採取なんざさせられるか」
「おっしゃる通りで」
「シェリーが、馬鹿な姉だが殺したら夢見が悪いから生体実験程度にしといて欲しいと頼むから仕方なくだが、生かして置いて損はねぇ……」

ジンは楽しそうに笑う

「じゃ…… 今回のゲームは無人島でいいっすね?」
「あぁ…… あの島なら48時間にげ伸びたとしても島から脱走なんてできないからな」
「承知しやした。ゲーム開始はいつ?」
「今直ぐー……といいてぇが準備もある。 キャンティとコルンが戻ってくるのは明後日だ。 シェリーも今週一杯は実験の結果待ちと言っていたから―…… 来週早々だな。」
「じゃ、その前にこいつらを檻にいれて運んでおきましょう。」
「任せる」
「へい。」
「楽しもうじゃねぇか…… ハンティングをなぁ? シェリーに選ばれたらハンティングにはでなくていい。 ゲームで48時間生き延びたら処分保留で生き延びる機会をあたえてやる」
「せいぜい、シェリーに媚びを売るんだな。 シェリーは兄貴の気に入り―…… あの方ですら一目置く天才科学者だ……。」
「―……こいつらを檻にいれろ! 島に送り届けるんだ」
「は」

顔色を変えないで頷くジンの下で働く構成員。

「俺達が行くまでー…… 食事は与えて、怪我の手当もしておけ。 シェリーがどいつを選ぶかがわからん」
「承知いたしました。」
「あぁ…… 女を抱きたいといいだしたら、明美を当てがっておけ。」
「―……! 宜しいのですが? 仮にもシェリーの姉と聞いておりますが」
「明美は役立たずだ。 どこの狗か分からない男を引き入れた」
「ぁ……!」

その言葉に腕の撃ちぬかれた構成員の一人が思い出したかのように云う。

「ジ…… ジン様! 待って下さい! ライと一緒にいた男が居ました!」
「男…… だと?」
「確か…… お…… 覚えてませんが…… 犯罪関係の本の著書を書いていた筈です。 著者近影の写真でみました。 ほっ…… 本当です」
「何の本だ」
「そ それは……っ でも、間違いないです。! 本屋でちらっと流し読みをしただけですが、犯罪関係の書棚で間違い有りません」
「ウォッカ」
「へい」
「コンピュータで本の検索をさせろ。 ―……薬を使ってかまわん。顔と名前を引き出させろ」
「承知しやした」
「く……薬は……っ 間違いないです! 嘘はつきません! だからっ 思い出すチャンスを下さい!」
「……いいだろう。無人島でのゲームが始まる迄に思い出せ。PCも使わせtやる。 もし、間違ってないとわかったら…… ハンティングも的も免除してやる…… だが、思い出せなかったら…… 700ヤードの人柱になってもらう」

ジンの周囲に冷気が漂う。

「は……い」
「おもしれぇ…… そのうち尻尾を掴んでやる」

ジンは煙草を取り出すと殺人眼力で宙を睨み付ける。

「いつか…… 必ず殺ってやる」

(俺のディーヴァ…… 何時か、取り返してやる…… 何年かかろうともな?  だから…… それまで 生きて居ろ!)

“ジン兄……!”
恐れ気無く手を伸ばして甘えてきたディーヴァ
“餓鬼は嫌いだが、お前とシェリーだけは別格だ。”
“ジン兄、大好き!”

事故で、成長が著しく遅くなった赤子。
シェリー共々組織の中核に為る筈の子供。

「俺からディーヴァを奪った奴等全員、一匹残らず血の海で眠らせてやる」
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