Act-51 父娘喧嘩 後編
当然折れたのは大人たちである。
何しろ外出許可が出る日を待って待ち望んだ日の前日に父親が本部に呼び出されたのだ。
感の良すぎる少女はパパとのデートが流れたのを察してしまう。
赤井を名指し指名で来たという事を聞いた他の捜査官は、赤井の変わりは出来ないと異口同音にオファーを断ってしまったので受けざるを得ない。
怒るに怒れず眉を下げる赤井。
「この際、懐柔措置を取りましょうか……」
「懐柔?」
ベッドの周囲にブルーグレーの遮光カーテンを張り巡らせて、拗ねてベッドの中に潜り込んで返事すらしなくなった患者をみて医師が云う。
「外出許可から外泊許可に替えるんです。」
「いいのか?」
「このまま拗ねて熱を出したら絶対安静でICU行きになってしまいますよ? それに、此処で預かったのはパパが帰ってくるまでの間で、心臓もアレルギーも今日明日完治というレベルでは有りません。運動制限や食事制限、薬の服用などはありますが、日常生活は出来ますよ?」
「しかし……」
「いいですか? 桜ちゃんはまだ4歳。いくら頭が良くて理解力のある天才児だったとしても、精神的な成長は普通の子と同じレベルです。 好きか嫌い。 約束を守るか破る…… の、2者選択」
「そんなものか?」
「子供理論ですよ。約束したのに破った。仕事が入ったからまたの機会…… なんて我慢させるのは無理ですよ。 」
「しかしだな」
「仕事で明日のデートが流れてに明後日に変更レベルじゃあ無いでしょう?」
「まぁ…… そうだが。」
一緒に暮らすようになったら、此れからもこういう事が絶対出てくる。
其を考え、赤井は眉を寄せた
そして提案されたのが外出許可から外泊許可なのだ。
万一、桜が起きている時間に電話が来なかったら留守電を残す。
寂しくてもJJやジョディたちが日替わりで顔を見せて遊んだり勉強を見たりるから我慢する。
遊びに来たBAUのお兄さんお姉さん達と外出も認める。
変わりに、ちゃんとご飯を食べて薬を服用する。
…… といういくつかの条件をクリアする事で、1日我慢したら1日の外泊、3日我慢できたら3日の外泊…… つまり、赤井が任務で居なかった日の分だけ外泊許可を出すという交渉をして取り付けた効果だ。
長期休暇中の緊急任務の為、その後の数日間の公休は仕事で使ってる電話を持ち歩かない。 電話もNGという契約を取り付けた。
赤井は約束を守り、……と云っても護衛という任務上、桜が昼寝をしたりする時間とかにも重なる事もあったが、新しく買い求めたタブレットにメールを入れ、留守電を入れる。
勿論、行動分析課の面々がほおって置く事もなく、ホッチは9歳になる息子のジャックを、JJは6歳になる息子のヘンリーを連れて見舞いに行き、リードは小難しい哲学の本の読み聞かせ、ガルシアはPCの構造理論と基本的な言語、モーガンに居たっては運転理論に銃の撃ち方……。
退屈したりごねる暇を与えなかった。
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