Act-52 生き甲斐 後編
「パパ……? パパってば!」
「っ…… 済まない。一寸考え事をしていた」
「秀パパってば、もーっ! 若年性健忘症で惚けるには早いでしょ? 車の鍵、開けたよ?」

ぷぅ、と頬を膨らませる


「悪かった。 ―……さ、お姫様。」

赤井はひょい、と抱き上げると大きなクッションをおいた助手席に座らせる。

「早く、パパ」
「ああ……」

待ちきれないようにせかす桜。

「はい、パパ。 車のキー差したよ?」
「……よくわかったな」
「デレクが教えてくれたー! 運転の理論も教えてくれたよ? でも身長たりなくて無理だけど。後ね、銃の撃ち方」

にこにこと笑う桜


「銃だと? アイツ…… 子供に教える事か?」
「だって、外出許可はでてたもん! 本部にも連れてってくれたよ」
「はぁー……」

赤井は溜息を付く。


「ま、いい。 ―……じゃあ、まずは教会だ。陽が高くなる前にご挨拶をしに行こう」
「挨拶?」
「俺はカトリックじゃないが、その教会には沢山の知り合いが眠ってるんだ」

赤井は静かに答える。

「それに、お前がずっとアメリカで暮らすなら、チャリティとかミサとかで縁もできるだろうからな……。 その後、軽くお昼を食べてー…… デパートでベッドと鏡台と服を買おう。食器もな。ケーキバイキングは明日ホテルのレストランを予約してあるから今日はどれか一つで我慢しろよ? 」
「うん。 前方確認、後方確認、オールグリーン」
「っぷ……。オーライ。シートベルトの着用は宜しいですか、お客様?」
「うん! しゅっぱつしんこー」
「オーライ。シボレーCK1500、出発します」
「プップー!」


桜の言葉に赤井も笑いながら答える。


(久しぶりだな…… こんなに楽しいのは。 俺は桜を護る事で生き甲斐を見つけたのかもしれない……。 任務なんかじゃなく…… 親として)


♪・・・・・・・・♪


I've been working on the railroad
All the livelong day
I've been working on the railroad
Just to pass the time away

Can't you hear the whistle lowing
Rise up so early in the morn
Can't you hear the captain shouting
Dinah, blow your horn

Dinah, won't you blow Dinah, won't you blow
Dinah, won't you blow your horn
Dinah, won't you blow Dinah, won't you blow
Dinah, won't you blow your horn

Someone's in the kitchen with Dinah
Someone's in the kitchen I know
Someone's in the kitchen with Dinah
Strumming on the old banjo, and singing

Fie, fi, fiddly i o Fie, fi, fiddly i o Fie, fi, fiddly i o
Strumming on the old banjo


道路は続くよ どこまでも
野をこえ 山こえ 谷こえて
遙かな町まで パパと私の
小さな楽しい旅の 夢つなぐ。

シボレーは歌うよ いつまでも
クラクションの響きを おいかけて
スピードに合わせて パパも私も
楽しい買い物のうた 歌おうよ


♪・・・・・・・・♪


「I've been Working on the Railroad…… 桜は編曲も上手だな」

楽しそうに歌う桜

(今は、この時を楽しみたい。 親として、二人の時間を楽しみたい)

桜の歌う“線路は続くよ”は飽きること無く続いて、赤井もハーモニーを響かせる。

(―…… 俺は何時か、地獄に堕ちる。 仕事とはいえ、罪無い人を両手で数えきれない程撃ってきた。 だが、地獄に堕ちる前にこの子だけは―…… 護りとおそう)
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