Act-06 ギャンブル
黒塗りの高級車が連なるように<リサイタル>会場の駐車場に入ってくる。

俺に与えられたのは駐車場前に作られた2つある一時停止ゾーンのうちの一つ。
一時停止ゾーンには顔認証ソフトの隠しカメラとX線が接続され、警備の方に顔と本人確認に回っているので、その場所に上手く誘導するのも仕事の一つだ。
そして一時停止で停まった車の運転手から招待状を受け取り、名前と記録を確認する事。安全確認の青いランプの点灯を待って、駐車券を渡せば終了。

だが、中には不届き者が居て、リサイタル場に録音録画機材…… ディーヴァの姿形声を録音したい為…… に様々な機材を持ち込もうとする。
堂々と持ち込む輩もいれば、付き添いの婦人のネックレスやらスーツのタイピンの飾りにして持ち込む輩もいる。
見つけた場合は懇切丁寧に禁止事項である旨をご案内して一時預かり。

顔が取り得のアイドルコンサートですら録音録画は禁止じゃなかったか、と言いたい所だがそれは言わない。

何しろディーヴァはいまだかつて一度もその姿を見せていない。
ディーヴァの姿を映せるかどうかで投資家たちは賭博をしているというから呆れてしまう。
簡単に説明すると、カーテンの隙間からでも容姿を写す事が出来たら大金が入るというから、心理的に分からないでもないが。

が、問題はここから。

このギャンブルには毎回、組織も絡んでて、招待状に盗録画ギャンブルに参加するかどうかの確認が入っている。
参加表明する投資家は別口座に参加費用を振込む義務が発生する。
金額は一口10万に付き機材1つ
百万ならば10個持ち込める。
招待客の中で誰がギャンブルに参加して居るかは警備スタッフには教えられない。
つまり、会場に入る前までは警備スタッフの勘と対応。
録音機材などを会場に持ち込めたらリサイタル後のオークションへの優先参加資格を貰う事が出来、反対に見つかったら3倍の罰金が待っている。
オークション参加は抽選で、全員参加は出来ないが、会場に機材の持ち込みができたら、<リサイタル>後のオークションの優先資格がもらえるので、<リサイタル>の終焉後に機材を見せて担当者に報告するだけでいい。

だが、オークションとは歌い手たちと1晩過ごせる、というゲームであり児童買春等とは全く関係ない事はすぎに分かったので犯罪には該当しない。
この”ゲーム”に関しては、一晩、家族のように楽しく遊ぶというのが正解で、その時に買って貰った服や靴は”ご褒美”となる。
そしてオークション費用の3割〜5割が”稼ぎ”として貰える事になっているため歌い手達も容姿の揃った子ばかりだ。

コンサート会場でのルールもあって、歌い手の録画と録音は掛けの対象外。
対象はディーヴァのみ。
僅か数曲の間。
条件は声と姿。
髪の色、背の高さ、すべて満たした画像が入る為、今だかつて成功した事がない。

万一成功したら、掛け金総額の半分が手元に入る(半分が組織の資金)というギャンブルで最近では純利益の零の桁が8ケタ近く動くため警備スタッフも顔が変わる。


………… というのが、本当の所らしい、

ともあれ、俺は20台ほどの車を捌き、63個もの大小様々な録音機材を見つけ、預かり状を書く。
1個10万×63=630万
630万×3で、締めて……

他の警備スタッフの成績がどうかしらないが、見過ごしたのは無い、筈…… だ。

全く、警備スタッフも楽じゃない。
これなら金髪の狼少年君に代わってやればよかったと本気で思った

お昼前には8割〜9割の資産家が揃う。
密会とは関係なく早めに来た閑人供にはウェルカムドリンクでシャンパンかソフトドリンクをだし、広いロビーには前回のリサイタルの模様が流れる。
隣接の美術館はその日だけは貸切にして招待客だけ出入り自由な事も特典だ。
車の案内が終わった俺は今度は会場に移り、個別に雑談を希望している投資家たちを密室へ案内する。

この密室も曲者で隠しカメラと盗聴器がしっかり設置してあったりする。
飲み物や軽食は、<リサイタル>の為に選ばれたホストかホステスが運ぶ。
資産家たちがそのホスト、あるいはホステス達と一晩一緒に希望したら、彼等に拒否権は一切ない。
ホステスやホストの”レンタル”料は最低金額料は固定されているが、属にいう顧客満足度に応じて上限はないのが実情だ
組織はどこまで腐っているのか………
資産家たちの顔と名前はしっかり記憶して、情報として頭に叩き込んだ
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