Act-04 怪盗と探偵とFBI 後編
「何と云えばいいのか……」

赤井が話終わって軽く10分以上、優作と有希子は黙り込んだ。

「君の言葉だから信じられるが、出なかったら悪い夢物語のような気がするよ」
「…………シャロンがそんな組織にいるなんて! 何とか成らないの? ねぇ…… 優作! シャロンは友達で…… クリスは! クリスは私の憧れでライバルで親友だったのよ! クリスはっ!」
「有希子」

優作の表情は厳しい。

「……赤井君?」
「はい」
「君が保護したという娘さんは記憶を無くしていると言ったが?」
「桜は持って生まれた知能も高かったんだと思います。 属にいう超天才児として組織で高等教育をされていた子供です。 詳しい経緯は話せませんが、別の組織の潜入捜査官が保護しようとしたのですがそれが出来ずに私に託されました」
「他の、という事はFBI以外の警察機構、という判断でいいのかな?」
「はい。 その時、私は動けなかったので別働隊の仲間に預けました。 その後ー…… 意識を取り戻した時は、自分の事は何も覚おらず…… 名前すら憶えていませんでした。 ……意識が戻る前に”お姉ちゃま”と譫言のように呼んでいたので姉がいるのは確かだと思います。今でも―… 夢を見るとお姉ちゃま、と呼んで泣きますから、とても可愛がってもらっていたのでしょう」
「……そう」
「驚きましたよ。3つ4つの幼児が普通に話しだしたんですから」
「話す……?」
「カタコトの単語でななく、ちゃんとした会話です」

優作と有希子は顔を見合わせる

「そして、桜には心臓の移植手術をした後がありました」
「心臓移植!?」
「まだ幼児といえる年の子です。しかも心臓医療に優れたスイスやアメリカの最新技術の先を行くような高等先端医療技術でおまけに拒絶反応もなく…… 医師たちも、これだけの手術を幼児に成功させたなら医学界で話題になる……といった程の高等医療技術です。 手術費用も寄付で賄える金額じゃないだろうと。」
「つまり、それなりのデメリットを抱えている子供の高額費用を出せる家系……そして、それだけの輝石を持たせられる家系という事か」
「はい。」
「でも、それほどの家系の子供の手術なら病院側もニュースに出す筈よね? 赤ん坊の手術を成功させるなんて」
「俺もそう思って、5〜6年前までのニュースを総攫いでチェックして、医薬関係に詳しい情報屋にも聴きましたが、そのようなニュースは裏の世界ですら全くないと」
「つまり、表沙汰にできない何かがある」
「その通りです。」
「君は育ててる子をその、組織を壊滅させるのに利用する気かい?」
「まさか! 桜は俺の娘です。 命を懸けても守ります。 その為に組織を壊滅させる。―…… あの子を守れるなら手段は問いません。 KIDを組織に引き渡して、組織を壊滅する事ができるなら容赦なく情報を流します。」
「KIDが一般の高校生でもかい?」
「KIDは怪盗を銘を打ってますが所詮は盗賊です。捕まれば無期懲役になっても当然の事をしていますが?」
「シャロンを殺す事も?」
「シャロン・ヴィンヤードは有希子さんの友人かもしれませんが、俺にとっては”腐った林檎”に過ぎません」
「……シャロンは! シャロンは腐ってなんかいないわ…」
「ではー…… あの姿で何年生きてるとお思いですか?」
「―……っ」

優作の瞳が鈍く光る。

「―…… よほど組織に恨みがあるようだが」
「先日、日本で10億円事件があったのを?」
「勿論」
「その事件で自殺したと思われる広田雅美、という女性ですが、FBIが追っている組織の末端の構成員の一人です。」
「……!」
「そして、警察に捕まる前に自害とありますが、これは、組織の奴らが、彼女が警察に捕まって口を割る前に自害に見せかけて殺したというのがFBIの見立てです」
「知合い…… だったのかい?」
「はい。 組織で知り合い、何度か食事をしましたから。ただし、広田雅美は構成員としては下っ端で組織に関しては殆ど…… というか何も知りません。」
「そう」
「そして、新聞の片隅に日本警察の関係者に交じって小学生位の少年と女子高生が映ってました。」
「「―………!」」
「少年がなぜ、事件現場に居たのか? 調べたら簡単な事でした。 少年が生活しているのは毛利探偵事務所。 腕は良くありませんが、少年が同居を始めてから眠りの小五郎とか言われて事件解決が多くなってきたと。 そして、女子高生は、工藤新一君の幼馴染で同級生。ここまでわかれば後は簡単です。」
「「―……」」
「広田雅美には妹が居ます。 妹の方は優れた科学者ですから、組織の連中がすぐにどうこうする……という事はないと思いますが、できる事なら証人保護が司法取引を持ち掛けて、助け出せるなら助け出してやりたいと、思います」
「そう。 それで日本へ?」
「はい。 ただ…… 桜は、まだ6歳で、自分の身を守る事はできませんし、日本で保護した子ですから連れて行く事は出来きません」
「確かに、危険すぎるだろうね」
「なので、FBI関係者以外で、半年…… もしかしたら1年以上のスパンで桜を預かって貰える人に心当たりがあればと」
「証人保護は?」
「桜は知能はすでに大人です。精神的にはまだまだ子供なので基本”好き””嫌い”で行動します。証人保護をするならFBIのビルから飛び降りてやるとか自慢の頭脳でPCのウィルスでも作るとか…… ストライキを起こしかねません」
「……」
「また、桜を可愛がってくれているBAUの連中も、事件が起これば現場に飛ばなくてはなりません。」
「……」
「桜は、絶対音感と絶対聴覚を持ち合わせています。 普通の人には手に余るでしょう」

赤井の言葉に優作は少し考え込む


「ならば…… 新一や快斗君の情報を、その組織に流さないという条件と引き換えに、半年…… いや、1年でも2年でも、私達が桜ちゃんの保護者になるというのはどうだろう?」
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