Act-05 反抗 前編
「あたしも行く!」
赤井が任務の為、日本に派遣されるのが決まった時、桜はごねた。
1ケ月が2ケ月になろうが半年になろうが、仲良くなったFBI(主に行動分析課)の連中がホームステイとばかりに可愛がってくれるのは解っている。
けれど、今回の任務は潜入してた時と同じかもっと長い期間を視野にいれなくてはならない。
FBI本部内の中にある防音設備のある部屋(体力は無いが大学レベルのIQの為、学校に通う必要はないと判断された)には、子供らしく大きなウサギの縫いぐるみが置いてある。
これはジョディが去年のクリスマスに何が欲しいか聞いたら”エプロンドレスを着た、もこもこでふわふわな大きな大きなウサギの縫いぐるみ”と、見た目相応な事を言われ、GPS内臓の特注品で作られ、行動分析課の広報担当で裁縫の得意なジェニファー・ジャロウことJJがドレスを作った…… が専用のソファに鎮座している。
<不思議の国のアリス>のエプロンドレスをモチーフにして作った服をきたウサギに、童話の名前そのまま、アリスと名付けとても気に入って、寝る時も一緒な程だ。
大きなウサギを持ち歩いている限り、万一の場所も分かるという事もあるが、今だにGPSは使われていない。
そして、子供用にしては大きいソファが置いてあるのはその行動分析課のストラウス部長が桜が心臓の手術をしている事を知り、いつでも休めるようにとベッドにもなるソファを、ポケットマネーで購入し、運び込んだもの。
机にあるPCはIT技術師が作り上げたハイスペックのデスクトップPCとノートPCが1台ずつ。
お出かけ用には行動分析課のペネロープ・ガルシアが桜用にと自作したタブレットもある。
タブレットにはディズニー・アニメのゲームやら頭脳戦のチェスゲームも内臓されているので移動中も退屈はしない。
タブレットの入ったピンクのリュックとウサギのアリスは桜のトレードマークだ。
本来なら一般人は立ちり禁止の本部の中だが、桜には特別パスが発行されて、養父である赤井のいるフロアの階と行動分析班のある階は自由に入れる。
―…… と、行っても、桜は行動分析班のある階には余り行かない。
FBI捜査官の仕事の邪魔をしないのが、条件で、勉強に関しては、PCを通じて難しい理論や数学が勉強できるように高等プログラムを貰っているからだ。
体力的問題の集中力の統計で、30分勉強したら15分の休憩、となっているので30分経ったら自動的に保存がかかり、15分は続きが出来ない。
休憩が長い分には何も言われないのでその間はひょっこりと部屋から出て来て、父親が机に向かっていたら甘えるように膝に乗ってくる。
桜の姿を見かけるとPCと睨めっこしている捜査官たちもつい苦笑してしまう。
言動は兎も角、見た目が可愛いだけに構ってしまうのだ。
それだけ見ても桜がFBIの人たちからどれだけ愛されているのが分かる。
根本的に数名のFBI捜査員以外にしか懐かず、構われる事が嫌いで、難しい本を読んでいる方が好き。
優作の推理小説は好きだが、作者である本人には興味がない。
絶対音感と絶対聴力の所為でアイドルの音楽も嫌いという問題児。
「桜……。 今回の仕事は今までの様な調査とは違うと、何度も説明しただろう! とても危険な仕事なんだ。」
「桜も行くってば行くのっ!」
「サラ! 今回は無理だと言っただろう!!」
「お留守番くらいできるもん!」
「留守番が出来るとか出来ないとか…… 今回の調査は、そういうレベルじゃないんだ」
3年近く前にやり残してきた”仕事”にケリを付ける。
ニュースで話題になった、日本で起こった10億円強盗の犯人の顔がTVに出た時、息を飲んだ。
―…… 明美!?
名前こそ MASAMI HIROTA(広田雅美)と流れたが、組織に潜入していた時に付き合っていた女性。
組織で潜入する時にプライベート用に用意したガラケーに送られてきたメール。
携帯としてちゃんと使えるがこの電話番号に掛かってきたものはFBIで電話を掛けた相手がだけなのかすぐにわかる様に逆探機能が仕込まれている。
ー…… 今だに持ち歩いている古い携帯。
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大君……
もしもこれで組織から
抜ける事が出来たら
今度は本当に彼氏として
付き合ってくれますか?
明美
P.S
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P.Sの文字の後に書かれた言葉
俺に出来るのだろうか
赤井の腰位までしかない身長でぎゃんぎゃんと喚きたてる桜。
「いいか、桜! お前はアメリカで留守番だ! 日本だけは! 今回だけは! お前がどんなにごねても連れて行けない!」
赤井も声を荒げる。
日本につれて行って、万一にでも奴らに見つかったら
組織に連れ戻されてしまったら
俺は…………
生きる術を失ってしまう。
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