Act-08 夢に包まれて
赤井は時間の許す限り病室で過ごす。
幸い、FBI付属の病院なので鑑識チームの研究員や医療チームの医師も在籍している。
桜にとっても顔見知りの医師たちがいるし、守秘義務も警備も総合病院以上に安心できる。
昏々と眠る桜
ストレスに弱く躰も弱い。

「桜…… 桜すまない。本当はパパだってお前を日本に連れて行きたい。 だが、俺が行く場所は危険すぎるんだ」

点滴で水分と栄養補給はしているものの、吐き戻して魘される。
家に連れて帰っても、直ぐ救急車を呼ぶ事になったかもしれないと思うとゾッとした。

どんな夢をみているのか。
楽しい夢か悲しい夢か。
頬に幾筋もの水が流れる。


「パパ……」
「桜? 呼んだか?」
「……ジン に ぃ? お姉 ちゃま? どこ……?」
「桜…… サラ…… 俺はここだ。ここに、…… いる」

焦点の定まらない翡翠の瞳が宙を彷徨い、赤井は幼い手をしっかりと握りしめて声を掛ける。



日本へ移動する日が近づいてくる。

「桜」

赤井は耳元でそっと話かける。

「目を覚ましてくれ」

(俺が、日本に行く前に。)


”行く日程をずらす事もできるんだよ、赤井君?”
”え?”
”局長も、赤井君がどれだけ桜ちゃんを可愛がっているのかを知っているから、…… 目を覚まして回復するまでは…… と”
”お気持ちは有りがたいのですが、退院してからも桜の体力では12時間のフライトはキツイでしょう。”
”ー……”
”それに、これは私がやり残した任務です。 桜の為…… 否、桜のような子を出さない為に綺麗に掃除をするのが私の任務”
”……そうか”

ジェイムズは黙り込む。

”それに…… 暫くは入院加療が必要でしょうからそれを理由に仕事を伸ばす訳にはいきません。俺はFBI捜査官。 アメリカに忠誠を誓い、Fidelity, Bravery, Integrityを掲げました。 ジェイムズ、貴方だってそうでしょう?”
”ー……”
”桜は私の命です。 誰の為でもありません。 桜のような子を2度と出さない為に私はアメリカを護ります”




ー…… パパ

まだ苦しくて話が出来ない

一気に記憶が戻ったなんて言えない。

私は、組織の歌媛だった。
声を武器に人を操る。

言ったらパパは、私に証人保護プログラムをかけて、2度と会えなくなってしまう
”ジン”にあう事も、”お姉ちゃま” にあう事も出来なくなる




遠い意識の中で

秀パパとジェイムズおじさんの会話が聞こえる。

分かってる
パパは、”ジン”と戦っている。

でも、私が知っているジン兄はいつも優しかった。

お姉ちゃまと仲が良くて
ジン兄の仲間たちも
普通の人より成長が遅いのに気味が悪いと避けるどころが、反対にとても可愛がってくれた。
私も彼等が大好きだった。

でも、
パパやジェイムズおじさんたちを知って、FBIで教えて貰って分かった事がある。

正義と悪は表裏一体

どっちが正しいなんて定義はないけど、ガルシアやリードに教えて貰った事がある。
犯罪者になる前に止める。
犯罪を止めたいのに止められず、証拠を残す人もいる

戦争は人を殺す大義名分なのだと誰かが云ってた。
警察も同じ?
人を護る為に銃を使う。
でも、犯人を殺しても罪には問われない。
過剰防衛になっても人殺しには成らない。

でも、組織には組織の大義があった。

私は?
私は、組織で、歌を武器にしてきた。
何も疑わず、何も考えず、歌いたい曲を自由に唄うのが任務。

沢山の歌で、組織の裏切り者を見つけてきた。

シェリーお姉ちゃま。
まだ組織にいるの?

彩華はここにいるのに。

見つけて欲しい。

シェリーお姉ちゃま
大好きな志保お姉ちゃまは、大好きなジン兄は、今、何処にいるのー……
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