Act-12 Tomorrow
「さて、といい加減機内に入らないとな。」
名残惜しそうに娘の頭を撫ぜる赤井。
「秀パパ。」
不安そうな顔を見せる桜
「そんな顔をするな。 パパは戦争に行く訳じゃない。 今日よりも明日。 明日よりも明後日。お前を護る為にパパは行く。」
「明日? Tomorrow? 」
「お前の好きな曲にTomorrowというのがあるだろう? 朝がくればいい事がある、と」
♪・・・・・・・・♪
Tomorrow! Tomorrow! I love ya Tomorrow!
You're always
A day
A way
♪・・・・・・・・♪
赤井が小さく歌ったのはミュージカルのアニーのテーマ曲。
「お前が日本に来たら、トロピカル・ランドやディズニーランドにも連れて行ってやる。 乗り物は乗れないが、パレードを楽しめる。イメージキャラの着ぐるみが遊びにきてくれるレストランとかもあるそうだからな。」
「うん。」
桜は頷く深呼吸を一つした。
♪・・・・・・・・♪
The sun'll come out Tomorrow
Bet your bottom dollar That tomorrow
There'll be sun!
Just thinkin' abou Tomorrow
Clears away the cobwebs, And the sorrow
'Til there's none!
When I'm stuck a day
That's gray, And lonely,
I just stick out my chin
And Grin, And Say, Oh!
The sun'll come out Tomorrow
So ya gotta hang on
'Til tomorrow
Come what may
Tomorrow! Tomorrow! I love ya Tomorrow!
You're always
A day
A way
朝がくれば Tomorrow
良い事がある Tomorrow 明日
夢見るだけで Tomorrow
辛い事も忘れる 皆
寂しくて 憂鬱な日には
胸を張って歌うの OH
朝がくればTomorrow
涙の痕も消えて行くわ
Tomorrow! Tomorrow! I love ya Tomorrow!
明日は幸せ
♪・・・・・・・・♪
最初は小さな声だったが、少しづつ大きくなる。
唄いだしたら回りは見えない。
足早に機内に入ろうとしていた客たちが立ち止まる。
「あちゃ。 飛行機止まっちゃうよ」
リードが苦笑する。
「ま、あとフライトまで20分程あるから1曲ならいいだろうさ。 客室乗務員が呼ぶだろうしな」
「……だね」
「取り合えあえず、写真とか取られないように円陣でも組む?」
「まぁ、この位置なら顔は分からねぇだろうけどな」
最後のフレーズが消えると、声だけしか聞こえてない乗客たちから拍手が沸き起こが、正気に返った客室乗務員に搭乗を促されて足を速める
「お前の唄は魔法だ。 何時でもどこでもパパに力を分け与えてくれる。」
「ホント? 魔法、かけられた?」
「あぁ。 世界中を探しても、唄で魔法をかけられるのはお前しか居ない」
「えへ」
「日本で、お前の唄が聞ける日を待ってるからな?」
「うん。 もっともっと練習しておく。」
「あ、いや。 それ以上上手になると虫が寄ってくる。 教会に行くときは必ず、だれかと一緒に行くようにな」
「ん! 分かった」
赤井はくしゃりと頭を撫ぜて額にキスを落とす。
「いってらっしゃい、パパ」
桜もちゅ!と赤井の頬にキスをする。
赤井は深呼吸を一つして父親からFBI捜査官の顔になる。
「じゃあな。 2週間後にフライトできる連絡が来るのを…… お前が来るのを期待しているぞ、桜捜査官」
「了解!」
桜はにこりと小さな敬礼を返す。
「行ってくる。」
赤井もくすっと笑って敬礼を返すとくるりと踵を返すと振り向きもせずに機内ゲートに入って行く。
「さて、と桜? 飛行機が飛び立つまで少し時間がある。 屋上に行って出発を見送ろうか」
「うん! あとで苺のアイス食べたい」
「飛行場にあったっけ? 桜ちゃんの喜びそうな苺のフレッシュアイス」
「残念ながらこの飛行場にはない。 でも、車の中にあるよ」
「は?」
「赤井さんが前もって苺を凍らせてアーモンドミルクと生クリームと蜂蜜とレモンで作ったアイスをグラスに入れたのを保冷剤付のクーラーボックスで持たせてくれた。」
「パパが作ったアイス! 食べたい」
「沢山あるよ。 おうちの冷凍庫にも作ってあるって云ってた」
「おうちにも!?」
「君のパパはなーんでも御見通しさ。 苺のアイスのレシピもくれたから、足りなかったら、今度は僕らが作ってあげるよ。」
「ほんと!?」
「ホント。 退屈したら僕が哲学の本を読んでチェスが囲碁の相手をしてあげる。」
「一日1回1時間を限度にシューティングゾーンにつれていってもいいと言われたし。」
「合法的なPCの作成許可も貰ってるから」
「……」
「本当に、君のお父さんは何もかもわかっているようだな。」
桜は黙って登場ゲートを見る。
(パパはきっと日本で組織と敵対する準備をする。 その為に来日するんだ。 もし、組織が潰されたら、シェリーお姉ちゃまとジンが殺されたら…… ウォッカたちが殺されたら、私は正気で居られるんだろうか? 私のジン。シェリーお姉ちゃまの恋人。 そして私の―……)
「大丈夫。 君のお父さんはFBIの懐刀。 君が泣くような事は決してしないと、私は思う」
「ホッチおじさん」
「万一の時は俺達も日本に行ってやる。」
「アンタは私達の妹でしょ。 妹の泣かせる奴等を退治するのは当然よ。」
「モーガン? ガルシア?」
「桜ちゃんは2週間後に小型ジェットに乗れるように躰を治す事を考えて。 後は僕らの仕事だ」
「…うん! ありがとう、リード」
「さぁ、屋上に行こうか?」
「ん! モーガン、さっき見たく肩に乗りたい」
「OK。 何時なりともお姫様」
「じゃ、アリスは私がもつわ」
「ありがと、ガルシア」
(BAUの人たちに心配かけちゃいけない。 2週間のお留守番。それから ただいま、を云いに日本に行くの。)
桜はデレクの肩に乗って子供らしく振る舞う。
(皆、私が組織でコールドスリープ状態で治療されていた、なんて知らない。 ならば、出来る限り誤魔化して生きる。 大人びて見える時は天才児としてでも精神面はまだ子供。 組織で、声を武器にしていた幹部だったなんて…… 云えないから)
Tomorrow! Tomorrow! I love ya Tomorrow!
You're always
A day
A way
16/20
prev next←歌媛哀唄