Act-03 遅刻魔と転校生 前編
「確認なんだけど、白銀さんの心臓の事や、アレルギーで食材制限のある事は先生が云いましょうか? それとも自分で言う?」
「どっちでもいいです。 でも、席は出来ればお日様の当たりにくい廊下の方でお願いします。」
小林の問に桜は答える。
隠したところで体育の授業が受けられないのも給食の時間に食べれない食材がでるのもすぐばれるならさっさと話してしまった方がいい。
「あ…! そう、だったわね。 じゃあ、朝一番で席替えしましょう。視力は良い方?」
「はい。先月、1週間位入院した時は両方とも1.7でした。」
「あら、良い方ね。 って、入院?」
「昨日、御挨拶に来た時、私がいつ発作を起こすか分からないから、パパの仕事先の応接室で家庭教師のお兄さんとお姉さんが勉強を見てくれてたって説明をしたの、覚えてる?」
「勿論よ。シングルファーザーで育ててらっしゃるとはいえ、海外ならではの教育方法だと、校長先生が感心してらしたわ。」
「ふふっ……。 それでね、先月、お勉強してる時にちょっと苦しくなって… 1週間くらい入院したの。」
日本に行く、連れていけないで言い争いになって発作を起こした、とは言わない。
「そう。転勤前でお父さんは大変だったでしょうね」
「うん。 だから…ね。 パパだけ先に日本に来たの。私は退院して、Drのフライト許可がでてから探くんと一緒に来たのよ。」
「まぁ。 そうだったの。 ―… そういえば、転校予定日は月始めだったけど、10日程伸びたものね。 教頭先生から家庭の事情で伸びたと報告を受けたけど、その入院の所為だったのね。 もう大丈夫?」
「だと思います…。でないと、亜米利加から日本に来日する許可が出ないもの」
桜はくすっと笑う。
幾人かの生徒がばたばたと走ってクラスに向かう。
「こら! 廊下を走っちゃいけません! 本鈴までまだ時間あるから大丈夫よ!」
「ごめんなさいー!!」
「先生がいるから予鈴がなったんだと思って走っちゃった」
「大丈夫。ウチのクラスに転校生が入るから、少し早いだけよ。 他のクラスの子は遅刻じゃないから大丈夫よ」
「へぇ〜〜 ってその子? 超可愛い!」
「でしょ? 一寸躰が弱くてお外で遊ぶ事が出来ないけれど、仲良くしてあげてね?」
「は〜〜い」
そんな話で立ち止まっていると予鈴のベルが鳴る
「ほらほら、教室に急ぎなさい! 本鈴まであと10分よ」
「やばっ!!」
「今度遊ぼうね! 私、図書委員だから〜〜!」
「ありがとう。 よろしくね」
笑顔を見せながら階段を上がってクラスに向かっていると、その視線に校門から猛ダッシュで潜り抜けて走ってくる幾人かの生徒たち。
予鈴が鳴り終わると校門が閉められて遅刻としてカウントされてしまう為、生徒たちは必死に走る。
それを知っている警備員たちはかつて自分たちも通った記憶を思い出して、予鈴がなっても5分程は、ほら急げと煽って閉めないで待つ。
教師たちも本鈴がなる5分程前に職員室をでて、自分のクラスに向かう。
「先生。予鈴がなってから校門を入ってくる生徒が何人もいるわ?」
「まぁ、このタイミングなら本鈴に間に合うからまだギリギリ大丈夫。 先生だって、昔、予鈴がなって走って校門をくぐった事が何度もあるわ。 だから、予鈴がなっても5分程は多めに見て上げてるの。 本当は駄目なんだけどね‥‥ って江戸川君だわ。あの遅刻魔は!」
「江戸川君?」
(FBIの本部の資料でみた…… ううん。 何等かの影響で幼児化した工藤新一?)
「まーったく! 今月5回目よ! あの子の遅刻は。転校生がいるから5分前に居なかったら遅刻になりますって、昨日、保護者全員に電話とメールをしたのに! もう!」
「ご、5回目? 今月? え?」
「あとで皆の紹介する時に教えてあげるけど、あの子に近づいては駄目よ! いい? あの子は一寸した事件を大きくして何か事件っていうとすぐに首を突っ込むの。巻き込まれて発作とかおこしたら大変ですものね。」
「ぇ… あ、はい。」
小林は噛んで含むように説明する。
「さ、ここよ」
小林がドアを開ける。
「起立!」
日直の歩美が声を掛ける
「「おはようございます!」」
「はい、お早うございます。皆ちゃんと…… 独り抜かしてそろっているわね。 昨日もお話しましたが、今日は転校生がいるので5分早いHRとします。 灰原さん、風邪はもう平気?」
「大丈夫です。 博士が大袈裟なだけでもう何ともありません」
「そう。良かったわ。入ってらっしゃい」
小林の声にカラカラと、ドアが空いて、入る転校生。
「かっ… 可愛い〜〜っ!」
「モデルさん!?」
「女優さんの子!?」
「お人形さんみたい〜〜〜」
クラスの子たちの声が異口同音に重なる。
その少女をみた途端、哀の目が大きく開かれた
(彩華!? 似ている…… 行方不明になってから普通に成長していたら、この子位―…!)
「白銀桜さんです。 白銀さんは今までアメリカで暮らしててお父さんのお仕事の都合で日本に引っ越してきました。 と、云ってもお父様のお仕事が終わったらまだアメリカに戻る事が決まってますが、仲良くしてあげるようにね」
「はーい!」
「アメリカって日本語喋れるの?」
「お誕生日は?」
「髪の毛染めてるの?」
「はいはい。 御挨拶の後に、10分時間をあげるから、質問はその時にしましょうね。挨拶、できるかしら?」
「Yes,Mom。」
桜はここぞとばかりにガルシア仕込みの笑顔を見せる。
その笑顔にクラス全員がボム!と音を立てたように息を飲み込んだ。
「Good morning, everybody。 Nice to meet you。 初めまして。 白銀桜です。 国籍はUSA……アメリカ合衆国です。 パパが日本でお仕事なので一緒に付いてきました。 誕生日は3月3日。髪の毛はもともと銀色なの。」
「3月3日ってひな祭りだ! いいなぁ。お雛様だね!」
「おひなさま?」
「3月3日はね、女の子のお祭りでひな祭りっていうんだよ! 男の子のお祭りは5月5日の子供の日」
「パパのお仕事って?」
「警察関係のお仕事なの。でも、パパはお仕事に関しては何も教えてくれないからよくわからない。」
「日本語上手だね!」
「ありがとう。パパも日本人だから家での会話は日本語だったの。でも英語も喋れるからどっちの言葉でも御喋りできま―… 「セぇぇーーーーフっ!! 間に合っ…」
桜が自己紹介を始め、短い質問コーナーになった時に本鈴がなり、ドダダダダバタバタと地震並のように廊下を走ってくる音がしてガラッとドアが開かれてぜいぜいと息を切らした眼鏡の少年が、クラス全員そろってて、しかも小林がいて、転校生がきょとんとした顔になってるのをみてハタっと立ちすくんだ。
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