Act-09 護り人 後編
(姫湖…… いつの間にか子供じゃなくなっていたのか?)
#赤井が、姫湖の手際の良さに驚いて見つめて思った。
おじさんが家にいる時は截拳道の稽古を付けて貰うために泊りがけで遊びに行った。
その時に勉強をみて上げたり(と、言っても飛び級をする程頭が良かったから大抵は問題を解くヒントを上げただけだったが)ピアノを聴かせて貰った妹のような存在。
おじさんが軍の要職に居た事もあってかなり大きな邸宅……というより屋敷に近い。
正門には24時間警備の待機室もあったが、正門横には警備室の人達が休憩できるエアコン付きの2階建ての休憩所がありキッチンには冷蔵庫に電子レンジ、テーブルがおいてあり、汗を流せるように浴室もあり、洗濯機もあった。
おまけに2階には夜勤を終えた警備員の為の仮眠室迄作って、ベッドが2つ。
働き手にはとても居心地の良い場所で、俺も何回か入った事もある。
邸宅と警備室はインターホンで繋がっており、ボタン一つで警備本社に連絡も付き、耐火製の金庫が置かれ、万一に備えの銃の保管や消化器の予備、AEDの備えもしてあった。
小さいけれど、家と云えるような場所は、酒類の持ち込みこそ禁止だが、自分たちで掃除をして清潔にするとう条件で煙草とトランプゲームの持ち込みも赦されていた程だ。
雇い主であるが、とても穏やかで、心使いを忘れない一家を護るのは自慢だと聞いた。
そう言ってた警備員は銃を片手に殺された。
「しーちゃん……」
「ん?」
「聞きたい、事が・・ あるの」
「聞きたい事?」
「警備員の人達は 亡くなったの? ……彼等の家族は? 」
「階級昇進で、警備会社の社葬が有った。」
「助けて貰った私に、して あげれる事は?」
「瑞樹の名前で、俺が代理で弔花を届けて来た。 国防総省とFBIから、年金が支給される事になっている。」
「そ……(それ、だけ?) 」
「それだけ……、とは?」
「(だって、警備の人たちにも家族がいたんでしょ? パパやママが………… その人たちは?)」
「―…… それは」
「瑞樹の警護に (なら なければー…… 事件に巻き込まれなった) かもしれない」
「―…… それは違う。 おじさんの―…… 瑞樹の家の警護になるにはお前には、まだ分からないだろうが、SP並の判断力と行動力が必要な位のスキルが必要だった。 おじさんはそれだけ危険度の高い地位にいたんだ。 だから、瑞樹の警備員になるという事は万一の覚悟が必要で、彼等も、彼等の家族も納得していた。」
「でも…… 私だけ助かった。」
「そうだ。 姫湖は聖さんとおじさんおばさん、警備の人たちに守って貰った。彼等が一人でも足りなかったら、俺は姫湖を助ける事が出来なかったかもしれない。」
「しーちゃん……」
「だから、姫湖。 お前は生きてる事に感謝して 今は辛いが、俺達が………… これからは俺が守ってやるからー…… 妙な事だけは考えるな」
「しーちゃん」
(でも、赤井さん…… "雪乃"の心が消えたらー……"姫湖"ちゃんは還って来られるかもしれない……)
「俺は姫湖を喪う事だけは耐えられない。」
「ありが と…… しーちゃ……」
目が醒めてからの掠れ声が消えて言葉が出てこない。
「将軍方への挨拶は兎も角ー……。 いいか? お前の喉はまだ炎症が治まってない。思い切り締められて、神経が傷ついているんだ。 完治にはまだ暫く時間が掛かる。無理に話をするんじゃない。―……分かったな?」
「―……」
「車をだしてくれ。TV局の連中がいても、門の中には入ってこれない。」
「―……はい」
ゆっくりと車が滑り出す。
幸いTV局の車は前後の護衛車がシャットダウンしてくれたので車の中の会話が聞かれなった。
まだまだ甘えていい年頃の子供が
ここまで大人びた考えを示した事に、赤井は僅かに疑問を感じた。
けれど、それが何なのか、想像がつかない
姫湖は……
飛び級をした為に年上のクラスメートや友達が多かった。
元がモデル並みに美人のおばさんそっくりな為、見た目も可愛くー……多少頑固でキツイ事をゆうのはおじさん譲りだったがー…… その所為で御洒落に目覚めるのも早く、可愛い服や綺麗なもの、アクセサリーも大好きでお買物に行くと大人びたものを強請ってくると、聖さんは愚痴りながらも嬉しそうだった。
けれどー…… あまりに大人びて。
ここまで周囲に気を使うのは大人の感情。
おじさんたちはー…… 自分たちに万一の事があった時の事まで教えていたのんだろうか?
だとしたら
あまりに悲しすぎる。
両手をぎゅっと握りしめて正面を見つめている姫湖。
顔色の悪さを化粧で隠して、心の中でどれ程の涙を流しているのか……
赤井はそっと姫湖の肩を抱き締めて宥めるように頭を撫でた。
「パパ…… ママ…… あー ち……」
「―…… 俺がいる…… ここに……」
赤井は優しく声を掛ける。
ゆっくりと車が曲がれば、屋敷の前はTV局の車。
くい、と顔を上げた姫湖の顔が変わる。
「もう、大丈夫。 TV局が何を言っても、赤井さん…… しーちゃんがいてくれるもの」
「姫湖……」
「カメラに映っても平気。姫湖は…… 瑞樹の娘だもん」
「いい根性だ。 お嬢さん。」
その言葉に大佐が云う。
「けれど、心配ない。 玄関にはペンタゴンとFBIの警備を置いた。門の中には入れない。准将方は取材になれているから平気だが、僅か10歳前後の子を写したら肖像権の侵害でペンタゴンが訴えると記者会見で周知させた。安心しなさい。」
「ー! 大佐ー……それは」
「私にだってそれくらいの権限はある。」
TV局のフラッシュが炊かれているがスモークガラスに黒いカーテン、後部シートの境にスモークガラスの壁がある為、TVカメラに映るのは運転手と大佐位だ。
車はゆっくりと正門に入る。
そして、喪の腕章を付けた警備の連中が門を閉じる。
「…… 行くぞ?」
「はい。」
警備の車から護衛が複数降りる。
ざっと周囲を確認して隠しカメラがないかを調べて頷くのを確認すると後部座席のドアを開ける。
赤井はすっと姫湖の傍による。
「将軍方は庭に繋がるホールで偲ばれている筈だ。―…… お前の許可なく勝手にケータリングをしてしまった事は悪かったが、おじさんは天気の良い日は庭で食事をするのが好きだったから、ホールがいいと思ってな」
「いいの。―……全部任せてしまってごめんなさい…… もっと、しっかりしなきゃダメなのに…… ね」
「気にするな。 そんな事は大人がする事なんだからな? 念押しするが、挨拶程度で直ぐに躰を休めるんだぞ」
「うん……」
姫湖はこくんと頷く。
赤井は此までの行動からしてすぐに休む事は無いだろうと思っていたが、敢えて突っ込みはしなかった
(今はまだ原作前。―…… 私と、赤井さんの妹さんが同年代としたら……工藤新一や毛利蘭とクラスメートの年齢の筈。 事件が起こるのは高校1年。 ……と、いう事はあと5年位で原作通りになる。 組織に潜伏するのが2年位…… 準備で日本にいくとしてあと2年後には多分…… 何等かの動きがある筈。)
姫湖は赤井の手を借りて車から降り、家に入れば、ジョディが出迎える。
「お帰りなさい、姫湖ちゃん、シュウ。 将軍方がお待ちかねよ。 姫湖ちゃんにひと目だけでもって」
「ジョディ さん」
(あぁ…… そうだ。赤井さんは組織に潜り込む前にジョディさんと別れるんだった。 といっても赤井さんが一方的にフるんだけど…… と、いう事は、今は二人は)
ズキン、と雪乃の心が痛んだ。
(忘れちゃいけない。 赤井さんはジョディさんと別れ、宮野明美さんと付き合いー…… 哀ちゃんを護る為に動く。 明美さんの変わりに…… 志保…… 哀ちゃんの騎士になる人…… なんだから……っ 赤井さんは姫湖の後見で、兄のような人…… なんだから……っ)
「姫湖? どうした? やはり挨拶は止めてー 休んだ方が」
「大丈夫。 ……あたしは…… 独りじゃない。 パパとママが居てくれる。 にぃにぃも…… 赤井さんも」
「赤井さん? 姫湖ちゃん…… 何時から他人のような呼び方を」
「事件以来な。 妙に大人びて……呼び方が時々変わるんだ。」
赤井はこっそりと云う。
「! ―……そう」
「それより、姫湖の親戚はどうだ?」
「将軍方に媚びてるような気がするわ。 後ー…… この家の資産価値とか調べるつもりなのか、色々メモしてるわ…… 若しかしたら、准将の書斎とか夫人の鏡台とか物色するかもしれない。」
「そうか……」
(まぁ…… 想定内だが。)
「おじさんの部屋はいつも鍵が掛かってるし、PCのセキュリティも高いし、金庫はおじさんの指紋と掌紋、20桁の暗証番号が必要だから、金庫の中は法的権利を持つ家族のみ立ち合いの元で壊すしかない。おばさんの鏡台は…… 確かに価値のある宝石があるが……そこまで固執するかというと疑問だな……。 寧ろ、姫湖をどうやって懐かせて多額の資産を使えるようにするか……という事を考えそうだ」
「そうねぇ…… 会社一つ建てられるわよね。 葬儀に王家からの使者がきた、というだけで信用も着くし。 瑞樹准将の娘を引き取って養女に出来たら一気に社交界デビューもできるでしょうしね」
「姫湖を引き取りたいというのなら、先ずは俺を納得させてもらおうじゃないか? この俺を、な」
赤井は凛としてホールに入っていく姫湖を追うように足を速めた。
(俺は姫湖の護り人だ。 姫湖が幸せを掴むまで…… 俺の命に賭けても守って見せる。 ―…… それが聖さんとの約束なのだから)
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