Act-11 ライン
「あ、」
カフェテリアでクラスメートと、お昼を食べていた雪乃はスマホを出して笑みを浮かべた
「どうしたの、雪乃」
「ん、にぃにぃからライン入った」
「まぁたお兄さん? 相当なブラコンだね」
「お兄さん、オチオチ彼女も作れないんじゃない? 雪乃メッチャ可愛いし」
「ってか妹に近寄る虫は撃退しそうだよねー」
「あー、そうそう! こないだバス停まで迎えに来てた人だよね! 黒髪ロンゲでニット帽。なんでこの時期にニット帽って思ったんだよ」
「季節外れだけど似合ってたからよし」
「そりゃ似合ってたけどさー。結構迫力あるお兄ちゃんだよねー。」
「うんうん。 でもさ! 銃とか持ったらすっごい似合いそう!」
「あ!それ、俺も思った! 刑事ドラマのスミス&ウェッソンとかよりもっと銃身の長いライフルとかマグナムのようなヘビー級の銃とか似合うんじゃね?」
「あ〜 絶対似合う! で、妹に近寄る不逞の輩はって銃口向けたりしてー」
「素敵すぎる…」
「もう、皆して勝手な事いう。 でも、にぃにぃはクレー射撃するから銃の所持免許持ってるよ。会社が銃の部品や輸出の関係会社だから分解とかもできるし。」
「マジ!? すげー 玩具とかレプリカじゃなく?」
「うん。 あとね、ギターも弾くの。 とても上手なの」
「へぇ… いいよねぇ。その兄さんとウチの兄貴と交換しない!? マジであげっから」
「えー!! 交換するならウチのドン臭い兄貴と是非!!」
「ダメ! にぃにぃは誰にも上げないもん」
「そんな事いわないでさー 1日交換とかどぉ!?」
「ダメ! にぃにぃ以上格好良い人、知らないもん。にぃにぃより恰好よいなら考えるけど」
雪乃の言葉にランチを供にしている友人たちが揃って溜息を吐く。
「はいはい。 で、ご自慢のお兄さん、今日遅くなるとか?」
「ううん。 ー……… 土曜と日曜の 有給が取れたって連絡」
「は? 土曜日曜って普通、休みでしょ?」
「にぃにぃの会社、外国と取引してるから年末年始以外は土曜日曜祝日とか関係無いの。 ピアノ教室の先生に、チャリティーイベントに出てみないかって誘われて、にぃにぃと一緒に出れるなら出たいって答えたの。 だからお休み取ってってお願いしたの」
「なぁる…」
「ってことは、お休み取れたって事?」
「うん!」
「待った待った! 雪乃がピアノ習っててとっても上手なのは知ってる。音楽の授業でピアノきいたから。 で、どこかのイベントに出るって? イベントってコンテスト?に出るの?」
「ううん。 東都デパートに入ってるコンサートホールで毎年催しているチャリティイベントだからコンテストじゃないの。 プロのピアニストにヴァイオリニスト、ハープ奏者や琴の演奏者とかも来るのよ。」
「へぇ…! 凄い!」
「近隣の幼稚園生で来年小学校に上がる子たちも合唱ででるんだよ。チャリティだから生徒同士でも家族デュエットで出演もできるからって、先生が言ってくれて。ー…にぃにぃと出れるなら頑張ってレッスンしようかな」
雪乃は嬉しそうにラインで喜んでいる絵文字の返事をいれる
「そのイベント知ってる! 去年パパとママとデパート行った時にちょっとのぞいたの。ちっちゃな子が一生懸命歌って可愛かった〜! デパートに入ってる楽器店の系列の音楽教室とデパートの合同主催で入場料大人300円以上任意で大学生は200円、高校生150円で中学生100円で0歳から小学生は無料。音楽家さんたちのDVDとCDを売ってた」
「そーいや、仮面ヤイバーも来てたよな! 偶々早く言ったら写真撮影の整理券貰えてさ、弟がメッチャ喜んで撮影用においてあるベルトしてレーザーブレードもって一緒に決めポーズして貰っての写真。」
「ウチは妹! きゃーきゃーと黄色い声張り上げて五月蠅いのなんのって。中身はスーツアクターさんなのに抱っこして貰って大興奮。1週間はショーの話聞かされてもう、おかわりはいりませんって感じ。」
「ふふっ! 音楽家さんのCD売り上げは全額チャリティ募金になって赤十字とか災害復興支援への義援金になるの。 出演料も交通費だけ。 中には交通費をそのまま募金に回してくれる音楽家さんもいるんだって。 今年も来るよ、仮面ヤイバー。 午前と午後に屋外ホールで15分のショーをやるって云ってた。写真撮影は予約整理番号順で屋上するって。 今年はゲストもくるらしいよ。 コンサートホールでミニコンサートするって」
「ゲスト!? 誰?」
「なーいしょ。 云ったらSNSで拡散されちゃうもん」
「えーえーえー!!! 誰っ! 誰っ!! 俳優? 女優? 声優? アイドル?」
「秘密秘密。 まだ確定してないしね。」
「そんな事いわないでさー!! ね、ね、ゲストによっては朝から整理券狙いで並ぶ!」
「俺もっ! 相手によっては徹夜してもいい!」
「今から望遠レンズ用意した方がいい? デジカメのバッテリー確認する方がいい!?」
「人気ランクでどの位?」
「せめてヒント!」
「わー!! ミーハー軍団出た」
「まだダメだってば!」
「そんな事言わないで! 雪乃! 雪乃様! 姫様!」
「もう〜〜 だからまだ今は今は先方とのスケジュール調整中なの。教えてもスケジュールが合わなくてポシャったらどーしよーもないでしょ?」
(姫湖ちゃんの心が喜んでる。”私”の心が、友人たちとの下らない会話を楽しんでいる。 春日雪乃だった時はあの家から早く出たくて、勉強ばっかりしていた私。ー… 大好きなにぃにぃ。 私は原作を知っているのに。 赤井さんは宮野明美の車に事故を装って接触。 姫湖ちゃんからみれば明美さんは大好きなにぃにぃに怪我をさせる事になる。 赦せる筈が無い。)
ひっそりとパソコンで調べた。
転生前は詳しくなかったネット技術だが、姫湖にはPC系の知識があったらしい。
公安のネットにあっさり侵入して情報を貰い、侵入の痕跡を消しす。
誰に教えられたのか。
両親からなのか、生まれ持った才能なのか。
組織に入ってないという事はスコッチともまだ出会って無い。
観覧車の爆破事件も起こってない。
どうやって?
どうすれば彼等を救えるのだろう……
あやふやな情報では警察の混乱を招くだけ。
観覧車の事件は11月。
今年なのか来年なのか…
観覧車が爆破する嫌な夢を見た、にぃにぃが車に轢かれる夢を見た、では済まされない。
義理の妹を溺愛して激甘な大は(会社ではシスコンで有名らしい)すぐさま、病院に連れ込んで不眠の薬とかPTSDとかの治療を言いだしかねない
(誰か、彼等を助ける事のできる人が欲しい。 赤井さん気づかれずに助けを求める事が出来る人で、彼等を保護できる人ー…)
「ー…雪乃? 雪乃!」
ゆさゆさ、と体を揺すられて正気に返る。
「大丈夫?」
「具合悪い?」
「ううん。平気。 今、ピアノ教室で弾いてる曲が一寸難しくて。」
「なら、いいけどさ」
「あー!! ランチの時間終わるよ! ほら、雪乃早く食べちゃいな! 皆片付け出してる」
「… 先に行っていいよ。私、どうせ全部食べれないし」
「まったくー! じゃあ、ホラ! 紅茶だけでも飲んで! あと果物も!」
「サンドイッチは俺が食ってやる」
「なら、サラダは私が」
「ありがと」
「どういたしまして!」
雪乃はぬるくなった紅茶を飲み干して、小さなカットフルーツを胃におさめると立ち上がった
(何としてもー… 彼等を助ける方法を探して見せる。それまでは、諸星大の従妹を演じていよう……)
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