氷壁の姫 Act-28 レストハウス
「ちょ、ちょっと待ったぁ! 赤井の兄さん!」
「何だ?」
「赤井さんなら巳恩の姉さんがどこに立ち寄ったか、帰ったかどうか分かりますか」
駐車場専用エレベーターに乗り込みさっさとドアを閉めようとした赤井を追いかけ、ギリギリセーフで躰を滑り込ませ乍ら平次が聞く
「勿論」
「なら連れてってー… じゃない、場所を教えて下さい。」
「それは構わんが。 ー… その ”巳恩の姉さん” という呼び方は、何時からだ?」
「あー、 実は、藤代道場に通う子供達がそう呼んでるのを聞いて」
「ほぉ…? 」
僅かに瞳を瞬かせた赤井にポリポリと頬を掻いて視線を逸らせる平次。
「藤代道場に ”巳恩の姉さん” が顔を見せる事は年1〜2回あるかないかってきいてて、俺は、まだ道場で手合わせした事はないんやけど、彼女とあった事の有る子供達、っつーか、長く通ってる仲間達が <巳恩の姉さん>とか<藤代の末姫さん> とかって呼んでて、話を聞いてるうちについ、その言葉が頭に入ってしもーて。この数年は舞妓さんたちが南座で歌舞伎総見をする時に合わせて2〜3日で顔を見せる時以外は、いつ気まぐれに京都に来て道場に顔を出かどうかもわからないのに、何時鍛錬してるかどうかも分からないのに、師匠たちとバシバシ打ち合うって首かしげるんや! … じゃない、首かしげて、ました」
「歌舞伎総見というとー… 舞妓の衣装か?」
「俺はまだ巳恩の姉さんの舞妓姿をみた事はないさかいー… ってか姉さんは戦闘服って言うて、現役の舞妓はんの中に紛れ込んでるっちゅー話やで … 話、です。 ウチのオカンも一時は藤代に通った時があったから、それなりに歌舞伎に詳しいけど、舞妓はんでも芸妓はんでもないから舞台裏で役者さんと話した事も無ければ簪にサインとか貰った経験もないっていうてたしな… って、言ってました、です」
舌を噛みそうになりながら丁寧語に変える平次に、藤代では言葉使いを含めて通いのアルバイトから内弟子外弟子に至るまで言葉使いや作法を可なり仕込んでいるのを思い出して、赤井は苦笑した。
言葉遣いの乱雑な探偵団の某少年は巳恩にこっぴどく怒られた事もある。
その度にコナンであった新一が仲介に立ったり、"沖矢昴"が庇って事を収めた事もある
子供だからと我儘勝手に動き回ったら容赦なく叱りつけた。
元太が勢いよく投げて遊んでいたサッカーボールが有間邸の庭に飛び込んだ時、巳恩を始め留守を預かっている管理人も不在だった時がある。
見知った工藤邸よりも高さがある門扉や壁を越える事ができず、止める光彦や歩美を制止を振り切って力任せに門扉を叩き、ベルを鳴らし大声で叫び続け、顔をのぞかせた近隣の家の住民から怒られた。
<ヒデのサイン付ボールなんだぞー!!返してもらうまで動かねからなっ>と注意した大人に反抗して、門の前に座り込む元太をみて、仕方ないなとコナンが溜息を吐いて伸縮のサスペンダーを使って邸の中に潜り込み拾った事があった。
自分のー… 工藤新一の家よりも大きい、庭も広く、車庫も広い家。
庭に面した居間の硝子が防弾ガラスなのは直ぐに分かった。
遮光カーテンが引かれて中は分からなかったが揺れるカーテンの隙間から見えるアンティークなテーブルやソファ。
鍵がかかっているとはいえ猟銃ー… 正確に云えばクレー射撃用ので弾丸は別な金庫で管理している為に込められておらず、警報器付きで管理されていたのだが、その時にコナンにはライフルにしか思えなかったー…に驚いた。
壁に掛かっている絵画はモネの睡蓮ー… は、後から優作から本物だと聞いて驚いた。
元々が気になったらとことん探りたい性分のコナンは、24時間360度の角度で監視カメラが設置されている事に気づかずに探偵バッチで待ちあぐねた元太たちから連絡が入るまで視界に入る家の中を覗き込み、他にも武器とかを置いてないか、組織に関係あるのかどうか探ろうと、庭や庭掃除の道具をしまってある納戸のドアを開けて見て回った。
その翌日、コナンたちは有間巳恩の代理である邸の管理人から保護者同伴で学校に呼び出しを食らって、叫ぶ元太の姿と中庭をみたり家の中を覗き込み、鍵の掛かってない納屋の中を漁っている画像を見せられて愕然とした。
止めようとした2人は証拠の画像が残っているから別枠として、近所迷惑に騒いだ元太と無断侵入をしたコナンについては児童相談所と家庭裁判所に報告すると云われて元太の両親とコナンの保護者の毛利小五郎は真青になった。
「あの家はな!そこらの家と違うんだ! てめぇは知らないだろうがな!!」
現役の刑事時代に数日だけ関わった天才外科医の銃殺事件を、小五郎は忘れた事はない。
妻を亡くして幼い娘を溺愛しながら世界を駆けまわて手術をして沢山の患者を助けていた天才外科医。
犯人は捕まっていないが、幼い娘は風邪で寝込んでいたという理由で目撃証言に値せずと迷宮入りになってしまった苦い思いしか残っていない。
校長と担任が平身低頭で謝って事を収めたがこっぴどく怒られた。
改めて巳恩の勤める病院に謝罪に訪れたコナン達少年探偵団と保護者達は巳恩がまだ未成年―… 小五郎は覚えていたが、まだ15歳という年齢に驚いた。
勤務中だった為に白衣を着こなして、首に聴診器をかけてカルテを持っていた。
コナン達に思いっきり嫌味を行って保護者達に監督不行き届きの毒を吐いたがそれ以上は代理人から散々説教されただろうから、と必要以上に責めはしなかった
必死に病気と闘う子供や年寄りたちにはとても優しく、ギリギリの生活費の中でやりくりしてる一家には病院で提携している介護施設の人達に見回り介護を依頼する。
治療やリハビリをさぼる子供を見つけると雷を落とすがリハビリを終えた子供達には優しい。
暇な時はオリエンテーションルームや庭で遊ぶ。
子供達に強請れてレディやデュークを連れ込んで、童話を英語に訳しながらの読み聞かせをしている姿を見た事もある。
病院の医師である時と医師から離れたプライベートでオンオフで雰囲気すらもガラリと変えていた。
「巳恩の舞妓姿は可なり化けるぞ。俺や君達がすれ違っても解らないだろう」
「それは藤代の師匠と祇園のお師匠さんたちの噂で残ってるで! 祇園の伝説として残る天才舞妓で鈴乃屋の名の元になった寿々乃さんの事やろ ー… 事ですよね?」
「俺も写真を見せて貰ったが巳恩にとても良く似ていたよ。寿々乃さんー…巳恩の祖母に当たるが2年先まで予約が入る舞妓だったそうだ。彼女も歌舞伎が好きだったらしいからこれも隔世遺伝かもしれないな」
「に… 2年…? そら伝説になるわけやな」
「それに藤代一家は子供が好きだからな。 巌兄さんも子供好きで病院にいる時は小児科病棟に顔を出したり子供と遊んだりしていると、ルナ姉さんから聞いていた。 巳恩が出資してるアルテミスも福祉に積極的で孤児院に寄付をしたり孤児院出身の社員とかも居るしな」
「そういや工藤がそんな事言うてたなぁ。そんなボランティア出来るかって。探偵として役にたたない事はしねぇって言ってた」
「まぁ、一般的には回避する事だろうな。 福祉に積極的なのは恐らく、厳兄さんー… 有間博士がご両親が事故が無くなった後、孤児院に保護されて育ったからだろう。 外科医になったのは、もっと腕のいい医者がいたら両親を助けられたかもしれないという想いがあったと聞いた。 巳恩は心臓外科は父親の薫陶を受けた愛弟子たちに任せて先天的な病に悩む治療として遺伝子医療を選んだ。厳さんが生きていれば、父娘で医学の世界を大改革していたかもしれないな。」
「凄い親子だったんやな。 大阪府警の署長なんて親もつとプレッシャーやけど、レベルが違い過ぎや」
「俺があと5年早く産まれて、FBIに入るのがあと5年早かったらー… 厳兄さんを救えたかもしれない。違う方法があったかもしれないと、今でも時折そう思う」
「けど、救えなかったかもしれない。」
「そうだな。もっと悪い結果になったかもしれない。」
「俺から見たら巳恩姉さんは年下なんやけど、”ちゃん” 呼びなんてしたら恭介師匠たちよりもきつくビシッっと打ち据えられそうやし。かといって工藤と違ごうて ”姉さん” が勤務してる病院やその系列にお世話になった事もないから先生呼びもでけんしな。 どう転んでも年上にしか見えんしな。 ちっこい姉ちゃー じゃない、宮野の姉さんとダブってしもうて。 まぁ、属にいうギフテッドって事って思えばなんちゅーこともないし」
「ギフテッド…か?」
「あの二人の頭の良さは年齢の数段上や。 そりゃ、俺だって工藤だって、それなりに成績もいいし、推理力をもってる自信もある。 けど、彼女たちは小さい時に親を亡くして、組織っちゅー枠は論外としても14、15歳頃に大学を卒業して博士号まで取得した。」
「まぁ、あの二人はスイス留学中時に科学と医学で意見を付き合わせて研究のフォローをしたり対立したりして育った仲だしな。お互い、良い面で刺激になったんだろう」
「二人とも頭脳明晰やから、工藤が宮野の姉さんを欲しがるのも解るんだけどな。 なんでもかんでも頼りっぱなしになって甘えるっちゅーか、宮野の姉さんに対しては薬の弱みで言い負かして色々させてたからな。 相棒でもパートナーでもええけど、他人の弱みに付け込んで頼み込むから巳恩の姉さんが怒るのもわかるしなぁ… おぼっちゃん、ってゆーのは俺もやけど、治療でカフェイン禁止っていうのを破るのは治らなくても親父さんとお袋さんの力、赤井さんたちの力に頼ればなんとかなるっていうのも甘えやろなぁ。」
「そう、思うのか?」
「最初は工藤の擁護派やったと言った筈です。 けど、藤代の師匠たちをみてるとなー… 恭介師匠はお茶の師匠やー‥ してますから珈琲や紅茶が禁止、っちゅーのは言わないし寧ろ言えないし珈琲好きで、綾乃師匠は紅茶好き。巳恩姉さんも紅茶好き。子供らの中にはお茶を習ってる子もいたし。」
「確かに。藤代なら止めないだろがな」
「けど、あの道場では、大人が珈琲飲んでても子供達は1人として飲みたいとか欲しいとも言わないんや。 洋食の時には子供達にはスープ以外は牛乳で、 えーっと、牛乳が飲めないアレルギーっ子がいるんやけど、その子がくる時は皆でアレルギーメニュー食べるんやで! で、給食とかで時々でてくる甘ったるいー… 牛乳に入れて珈琲の風味を出すミルメークのチョコ味やイチゴ味、珈琲味、メロン味に抹茶味とかも沢山あってな。ミラクルストローってストローって云って中に苺とかの味のある粒子状のが入ってるのもあって、女性軍の大半は甘党やから子供達と一緒いなってきゃっきゃと選ぶから兎も角、辛党の大人が子供と一緒に飲んで 甘っ! って眉を顰めたりな。 大人様に濃茶とビターテイスト珈琲と甘酒味があるんやで。」
平次は楽しそうに笑う。
「工藤はちっこくなった時、すでに大人の味覚だったから両親と蘭ちゃんたちの目を盗んでブラックを飲んでたけど、それが、治療の弊害にもなっていた。そうやろ?」
「まぁ、概ねその通りだな。 志保は哀だった時は極力珈琲を飲むのを避けていたから。後遺症も軽度の貧血持ちになる程度で済んだ。」
「そこまでの差が?」
「まぁ、珈琲を控えて食生活に気を付ける、程度だから 志保なら大丈夫だろう。 けど、ボウヤが学校の往復でマチカフェのブラックを飲んでいたのはな。 流石の優作さんと有希子さんも想像して無かったから俺が報告した日はこってり油を搾られたらしい。 ここだけの話、男性精殖器の機能を少しでも保つ為に2回に分けて投与したのに両親が傍にいて何してたのって、無償で提供した薬代の請求をするから覚悟してらっしゃいっ!と、巳恩が爆発して、優作さんと有希子さんが戦々恐々としているよ。 下手したら一つだけ残してあるイギリスの別荘を売却する羽目になるだろうって売却書類を作る事にしたそうだ。」
「ははっ… 幾ら請求が来る事やらー… って、 え、 つ、つまり、工藤は噂に曰くの、EDになったって事か?」
ゴホン、と空咳をしてコソリと聞く平次。
「まぁ、程度に関しては俺はノータッチで聞いてない。 いかんせん、薬の材料の一つが普通なら入手不可能な劇薬成分でね。USAの国家細菌研究所で厳重保管扱いのDクラスー… Dは”Danger”のDだが平次君には言わなくてもわかるだろうがな。 簡単にいえば空気感染もしないように頭から足まで完全防御服を着た上で歩くフロアの扱い区分だ。 工藤新一はコナンだった時、毛利のお嬢さんとは違う面で器物損害と迷惑行為を繰り返した。名目上は事件を解決する為、だが損害額は可也大きい。 鈴木財閥がかかわっているものは保険で賄われているのものあるが。 工藤新一は組織壊滅の功労者の一人ではあるかもしれないが、アメリカでは 一寸とした事件にもしゃしゃり出て、事件解決をしたらNYタイムズとかを呼びだしてTOPに載せろと言い出して、もし断れば<交遊関係に空手で人を殺すかもしれない人物と繋がりを持つ要注意人物>扱いとなっている。」
「うわ… 」
「それが誰であるかは言わなくてもわかるだろうが、本人が否定しても回りは信じないだろうしな」
「俺も偉そうな事いえへんなぁ… 」
平次は自分がかかわってきた事件で文化財的なものを傷を付けたり壊してきた事も思い出す。
親に散々どやされて道場で散々投げ飛ばされた。
親が親なので署長に教育云々を説教できる人物もおらずにさりげなくやんわりと報告されるだけ、というのを逆手に取って、現場に顔を突っ込んで知ったかぶりをしていたのはつい数か月前の事だ。
「で、解毒に不可欠な薬の材料を購入する為には購入に至る迄の経緯と被験者、名前等々、書類検査や臨床結果のデータが必須な訳だ。FBIや公安のコネを使っても入手まで幾多の稟議が必要となる。 軽く半年はかかるモノで経緯を知っているFBIと公安の稟議は簡単に通っても、申請は却下される。阿笠博士の名前が掲載されたら被害者とはいえ子供に危険物を与えたとして、罪状が増えて確実に刑務所に収監されていただろう。 巳恩が怒るのは無理はない…」
「はは… そりゃ見捨てられるわ… けど公安より上の日本政府が絡んだら手に入りそうなもんー… すんません。」
ジロリ、と赤井に睨まれて平次は頭を下げる。
「で、その治療の事を工藤は?」
「解毒剤の合成と投与の前に子供ができにくくなる、と宣言されいる。その上での治療で、カフェインを含む刺激物の禁止令も言い渡された。 カフェイン摂取以降の確率は個人情報にも関わると云ってどのレベルかまでは聞いてないし、聞いても教えてくれないだろう」
「はぁー… 俺も工藤の立場やったら珈琲が飲みとうなるの分かるけど治療の間だけやろう? キツイのは分かるけど我慢できないってのはなぁ…? もしかして工藤の親父さんとお袋さんは飲んでたとか?」
「いや、息子が飲めないのに、と珈琲も紅茶も我慢していたよ。」
「親の心、子知らずか… 最も俺もそうだったんやから偉そうにいえんけどなー」
「まぁ、平次君なら20年先には自他供に認める探偵になれるだろう。 俺や降谷君程ではないだろうが」
「赤井さんも自信満々なお言葉で。」
「そうそう追いつかれたまるか。 真純はボウヤ絡みで人を半殺しの目に合わせた事件でイギリスに強制帰国処分となっているしな。 全治半年の重症を与えたが、幸い未成年保護法で履歴は封印される事が確定したが封印の条件として月30時間のボランティアを高校卒業まで課されてる。」
「うわ… 素直に従ったん?」
「従わざるを得ないだろうな。母親があの性格だからバイクは取り上げられた。」
平次は二人の親であるメアリーを思い出して頬を引き攣らせた。
「真純は大学を卒業したら探偵になる心積りだが、アメリカには探偵はごまんといる。 コネを作るのは可也厳しいだろう。俺は血縁関係があるからとそれに甘えるような妹に協力はしないと宣言したし、FBIに甘えてくても協力をするなと言ってある。自力で培った信頼関係なくて一流の探偵にはなれないからな。」
赤井は苦笑するとマスタングのスピードを落として飛行場の外れのレストハウスに隣接する駐車場に入れた。
「へ? ここ?」
「このレストハウスは展望台から飛行機の離着陸が良く見えて、フライトを終えたパイロット達が食事に来たりするからコアなファンに人気でな。Twitterやインスタグラムなどを検索すると出て来るぞ? 飛行場と契約してて、右側のフロアは朝一フライトのパイロットや乗務員が停まる宿泊所を兼ねているから関係者以外はセキュリティカードがないと警報がなるシステムだ。 あぁ、ほら、あそこに」
くい、と巡らせた視線の先はバイク専用の駐車スペースで、黒く艶やかに光るハーレーがに堂々と置かれてている
「うっひょーっ! カッコエエ! 巳恩の姉さんと宮野の姉さんがハーレー繋がりでもあるっちゅーのは知ってたけど、やっぱ1300は迫力あんなぁ。 赤井さんのマスタングも凄いけど」
赤井が車を止めるのを待って平次は車から降りると足取りも軽くハーレーに駆け寄ると前や後ろやらとじっと見る。
「下手にベタベタ触って乗ったりしてると警報がなるぞ。」
「っ! ぇ?」
「ブラック・ウルフは位置情報のGPS内蔵で指紋掌紋認証ソフトが入っててな… ぶっちゃけて云えばハイテクの塊だ。ヘルメットにはカーナビがリンクされて居る」
「ブラック・ウルフ… 黒狼って またけったいな呼び名を」
「高速で飛ばす車体は銀色にも見えるぞ。1300だが使いようによっては1500クラス並になる」
「へぇ… そらまたバケモノ並のカスタマイズ? ってゆーんか? なんちゅうか」
「ちなみに独逸のBMW社に特注で作らせた逸品物。 博士号取得で医大をトップで卒業した祝いにジンが購入したものだ。免許は海外取得だが」
「ジンって。 よく没収されなかったですね」
「それは黒澤陣がキャッシュで買っててな。組織の金で買ったものじゃない。 黒澤陣の個人資産はもの凄い額だったぞ? マンハッタンに高層ビルを建てるか、どこぞの高級住宅地に城を建てる並だ。 一昔前なら年間所得の長者番付に載っても可笑しくない位といえるだろう。今は個人情報関係から発表されないが。 バイクスーツは藤代が仕立させたからー… 時代劇好きな巳恩にピッタリな武器が装着されててな… 」
「武器!? ライダースーツに武器!?」
「滅多に使わないが、武器にもなる。確か志保にも何点かペアで贈ってたが志保が使う事はまずないだろうな」
「あははは… ちなみに ジンの資産は国が没収ですか?」
「弁護士への書類等がしっかりと管理されてて全額巳恩名義になっていたから無理だったらしい。 医師なんかしなくても一生遊んで暮らせるぞ。」
「つまり、その資産を学校経営に使っていると?」
「そういう事だ。 経営に関しては外部監査員やら教育委員会やらと専門家のチームが揃っているから帳簿付けは見事にクリーンで必要経費は管財人チームが支払っている。 どこぞの怪盗一家のように裏帳簿はないぞ。 」
赤井は不適に笑った。
「そらまた大阪の商売人のようにキッチリしとるようで。 あ、けど、ハーレーを見る程度はアラーム外やろ?」
「だろうな。其処まで管理しきれんだろう」
「俺もバイク持ってるから解るんやけど、このバイク…… ブラックウルフっちゅーたか? すっごい大事にしてるな」
「解るのか?」
「そりゃわかるで? 好きな人に買って貰うたっていう言い方が正しいのか解らんけどな? ちゃんと手入れしてメンテナンスして大切に乗ってる事ぐらいわかるで 」
家の倉庫に置かれて、鍵は親が没収し、藤代の道場に通う月2回のみ使うのを許される愛車。
「さて、ここまで 案内したからには俺は姫君のご機嫌伺いに行くが平次君はどうする?」
「っ! 行きます! 言い出したのは俺ですから! 藤代道場の弟子として仁義切らんと藤代の師匠達に破門される」
「そうか。 ならこっちだ。 姫君は特別展望台に入れるからな。」
「特別…」
平次は深く突っ込んで聞きたくなったがさくっと諦めて、こちらも異彩を放って鎮座しているマスタングをみて、後を追った。
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