Act-09 魔族襲来 後編
(この服じゃ目立ちすぎる)

ふっと意識を集中させて子供に姿になると翼をしまう。

焼け付くような背中の痛み。

(どこか…… 教会があれば。 ううん。 カトリック総本山のバチカン宮殿の奥深くに逃げ込めたら少し時間はかかっても癒す事ができるんだけど、バチカンの方に飛ぶだけの力が残ってない。 この傷じゃバチカンに行っても翼が出せないから姿を消せないから入れない)


ふ……っと顔を上げるとゾクリとした気配を身にまとった少年たち。



(この体力じゃ逃げられない)



ガシ、と一人の少年に口を押さえれて抱きかかえられた。
車が寄ってきて後部シートに乗せられる。

(何!?)

口に当てられた布に何かが…

気が遠くなる。

車から景色が流れる。



(この黒い闇に飲み込まれたら 傷を癒す前に消えてしまう)



必死に窓を叩いた。
でもとても濃い化粧の女子に羽交い絞めにされてまたハンカチをかがされると意識が薄れかけて力が抜けた

そして、暫くすると車が止まって、少年たちが車からでて、何かを飲んでいる気配。
少し開けられてた窓から嗅いだことのない不快な煙が入ってきた。

(何!? この煙は。 人間が好む煙草の煙とは違う。 もっと嫌な臭い。)

躰に廻って気持ちが悪くなる。

(天使としての姿であれば、はじき返せる匂いなのに、今の私じゃ……)

喉元にせりあがってくる不快感。

(駄目。 この儘じゃ黒い世界に染まってしまう……)

(翼を… 翼を出せたら! 小さな教会でもいい。 闇に染まらず翼を癒せる場所がほしい…)


その時だった。


バタンという激しい音がして、黒い髪に緑の瞳の男の人が、子供の躰を私を助け出してくれたのは。

「―……」
「そんな顔をするな。私が守ってやる。いい子だから、顔を伏せて居なさい。」

強くて優しい声。

肩が痛んで慣れない雨に濡れて。
人の形を取っていた為、躰が冷えていく。
逃げられないのは解っていた。
でも、人と触れ合うのは危険すぎる。

体感温度、なんて関係ない筈の躰が冷えるという事は力を可也消費している証拠。
冬でも、人間でいうキャミソールで平気な筈なのに、咳まで出てくる。

ふらつく躰で大きな人影に寄るのは情けない事だけど、恐怖に近かった。
さっきの人たちと同じ仲間なら、間違いなく力が出なくなる。

でも、その人間は違った。

私と同じ、雨に濡れて、私が傍に近寄るまで待っててくれて、抱き上げてくれた。

「こんなに躰を冷やして。 怖かったな? もう、大丈夫だからな? 怪我の手当てして貰おう?」

男の人からは少年たちと同じ煙の匂いがしたけれど、怖くは無かった。

「大丈夫。 そんな顔をしなくても、俺も一緒に病院に行ってやる。」
「―…」

優しく響く言葉。

人に安堵と平穏を分け与えて祝福を授ける立場の私が。
人の言葉に安心を感じる。

「ヴィー…」
人に名前を名乗る事は無い。

でも、この人間になら。
真実の名を名乗る事はできないけれど、天使としての名前なら。

「ヴィー?君の名前か?」
「シルヴィア―… 」

でも、私の記憶はそこで切れる。
花園にもどれたら、直ぐに傷は癒える。
でも、飛べない今は、人の躰で、
太陽と月の力を分け与えて貰って癒すしかない。

そして、眠りに付いた。
人の世界の時は速い。

人の時間でいう3日程眠って、目を醒ました時、私の前の前には、
助けてくれた人間がいた。

どこか、悲しい緑の目をした長い黒髪の男性だった。 
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