Act-12 買い物
「ベッドと可動式本棚は置いてので我慢してもらうとして、枕と布団と新しいベッドシーツは買った。机と椅子とリュックは週末に纏めて宅配される。 洋服も当座の生活で必要な分は買ったし。 蜂蜜にチョコレートも買い込んだ。 果物はデパートよりスーパーの方がいい。 食器類は―… 本当にウェッジウッドのピーターラビットシリーズで良かったのか? 同じウェッジウッドでももっと綺麗なハーフレースとか、プリンセスブルーの方が好みだと思ったんだが」
「ふふっ。ピーターラビットの方が万一誰か来た時に誤魔化しやすいでしょう? 服だって買う必要無かったのに。人が生きる為にはお金が必要でしょう?」
「金の方は心配心らない。 俺は3年程潜入捜査で日本にいてね。 その間の給料がほぼ手つけずに貯まってる。」
「その間の生活は?」
「ま、色々とな。 潜入先で仕事をこなして多額の報酬を貰っていたから不自由は無かったし」
「―… そこで色々あったようね?」
「まぁ、な。」

シルヴィアの言葉に赤井は苦笑する

「金の問題は兎も角、ヴィーがTVドラマのように服を作り出せるのは見たが、人間は買うんだ。 もしくはミシンとかで作る。セーターなら毛糸で編む」
「あー… そうだったわね。食事したり面倒よねー… 私たちは太陽と月の光が力の源だし、服は用途に応じて自在だし。一寸前は移動するのは汽車とか乗り合い馬車とか船―…」
「はっ! 確かにな。 だが、今は車やバイク。海外なら飛行機だ。 ちなみにこの車はシボレーCK1500。 一応、煙草をするのは控えめにして芳香剤を置くようにしたが、子供が乗るには少々ゴツイ。 だが、俺はずっとコイツに乗ってきたから我慢してくれ。」
「トラックみたいだから、買ったものを荷台に置けるのは便利よね。でも、秀一が乗りまわすのに似合ってると思うわ」
「そうだな。 来週から通う学校はスクールバスもある。ルート的に朝は送ってやれるが送ってやれない日の方がおおいだろう。 基本的にスクールバスのルートを覚えるんだ。それから、授業が終わったバスで帰れ。 間違っても飛んだりしないようにな。学校には俺の仕事と、お前の記憶が欠如している事も話してあるから心配はいらない。飛び級奨励のスクールだから、2年飛びの学生は数名いるから問題もない筈だ。」
「バス通学? 不便だわね。」
「仕方ない。 人に紛れて生活した方がいいんだろ?」
「それは否定しないけど」
「なら、あきらめろ。」
「はぁ―… 仕方ないわね。 翼をだせても今の翼じゃ長距離どころが短距離も飛べないもの。」

赤井の言葉にシルヴィアは溜息を付く。

「一応、聞いてみたいんだが、短距離だとどの位だ?」
「んー?? ここからヴァチカン位? 天の扉はもっともっと高い場所にあるわ。人の目には決して見えない高貴なる聖域。 カトリックの法王ですら見る事はできない場所よ」
「聞いた俺が馬鹿だったな。」

赤井は深い溜息を付く。

「兎も角、翼を出して飛ぶような事はするな。 変わりに週末とか公休日に森林浴とかピクニックに連れっててやる。 日の当たる所で日光浴をすれば少しは違うだろ?」
「ありがと、秀一。 大丈夫よ。 契約は護る。 もし、秀一がまた日本で仕事をするなら、貴方を護る為に私も行くわ。 秀一が愛した人の魂を救う為に」
「ヴィー」
「怪我を癒すのは出来ない。運命を変える事は出来ない。でも魂を救う事はできる」
「それだけで、十分だ。」

赤井は果物を買う為にスーパーの駐車場に入る。

「それから、歴史のテスト問題の中に1枚、美術の問題が紛れてただろう?」
「美術? あぁ。絵画のプリントで描かれた人と年代、絵の具の特徴、間違いさがし、スケッチ画像みたいな両面コピーがあったわ。シャーペンじゃイラストは無理だったけど、他は解いたわよ。」
「それは、学芸員を目指す高校生たちへ模擬試験の叩き台、だったそうだ」
「マジ!?」
「気づいて無かったか―…。 まぁ、俺も美術の問題が紛れ込むとは思って無かったから気にも留めなかった。 将来有望な学芸員として素質があるから、週末や放課後だけでもいいから育ててみたいと云われたぞ。丁重にお断りしたが」
「あちゃ〜〜〜。 編入試験問題にしては変だとは思ったのよね‥‥ 解答を書いた私が馬鹿だったわ」
「他は中学3レベルで問題ない。と編入試験の結果がでている。年齢は一応、見た目的に12歳にしてるから中3は妥当だな」
「了解。」

赤井は苦笑しながら果物を入れた袋を持つ

「あ、そうだ。何処か本屋ってある?」
「本屋?」
「美術関係の本が何冊か欲しいの。あとDVD。 学校でも常に1冊持ち歩きをしていれば、絵画が好きな生徒だと思ってもらえるでしょ? DVDで得た知識、というのでも誤魔化しは効くはずよ」
「了解した。 美術史の専門書を10冊程買い込んでおくとしよう」
「ありがと!」

シルヴィアはにっこりと笑う
(その笑顔は反則、だな…)

赤井は天使ならではの笑顔に小さく溜息を吐いた
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