Act-14 翼を持つ少女 後編
「翼を仕舞い忘れたか……?」

赤井は腕に巻き込んで2度寝をした少女の背中に折り畳まれた翼があるのを見て溜息を付く。

「ヴィー…… ヴィー? おい、シルヴィア、起きろ」

赤井は声を掛ける。

「んんっ? どうしたの?」

赤井の言葉に少女はもぞもぞと身動ぎをすると目を開く。
太陽を光を取り込んだような金色の瞳は大きく、猫の様だ。

「やっと、起きたか? 具合はどうだ? 翼を仕舞い忘れてるぞ。……傷が痛んでしまえなかったのか?」
「あ! ごめんなさい…… 子供の体系をしてる時はしまう約束だったわね。何時の間に出したのかしら…」
「いや まぁ 構わんが。俺が間違ってひっかけたりしたら傷が悪化するだろう?」
「大丈夫。」

シルヴィアはベッドから降りると翼を畳んで躰の中にしまい込もうとして顔をしかめる。

「……っ」
「すまない。 俺が昨日、力を使わせてしまったんだな? 痛むんだろ? 何ならフィギュアサイズで翼を出していたらどうだ? 今日は公休だから、日の当たる場所にピクニックにでも行くか?」
「い…… いいの?」
「ああ。 翼の傷を癒すには翼を出して日光浴が一番いいんだろ? この別荘は森が近いから森林浴もできるし、今日は日光浴日和だ」
「! ありがとう! シュウ」

シルヴィアが腕の中に飛び込んでくる

「ただし。」

赤井は言葉をつづける。

「ここには俺の妹や弟も自由に出入りしてるから、その時は子供に姿に戻ってくれよ?。兄弟たちには事故にあって記憶を亡くす程の大怪我をした現場に俺が居合わせた為、引き取り先の親戚を探す間、身元引受人になって子供を預かっている、位しか説明してない。」
「分かった!」

シルヴィアは頷く。

「じゃあ、朝食にして、出かけるとするか」
「何か作るわ。」
「いや、どうせ、ヴィーは食べないだろう? 俺は昨日、妙な時間に食べたから珈琲にサラダ位でいい。 ピクニックに行く道に美味いと評判のパン屋がある。そこでベーグルでも買って、途中の果物屋でヴィーの好きな果実を買って行こう」
「なら、家の周りを”飛んで”きていい?」
「翼は大丈夫か?」
「少しは動かさないと。 ー…… 動かなくなってしまったら永久に戻れなくなってしまうから」
「そうか」

赤井はリビングの窓を開ける。

「此処らには虫もいるから食べられないようにな。 軒下には蜘蛛の巣とかある場合があるから気を付けろよ。 あと、教会もあるから見られないようにな」
「分かった」

窓から飛び出るような小さなフィギュアサイズになると、小さく翼を動かす。

「大丈夫か?」
「ここら辺なら大丈夫。 遠くまではまだ飛べないけど。国境位までなら十分飛べるわ」

飛ぶバランスが悪いのは左の翼の傷の所為。

「そうだ。一寸待ってろ」

赤井は冷蔵庫に良く熟したサクランボが入っていたのを思い出して双子になっているのを取り出すと洗う。

「ほら。外で食べれるだろ?」
「いいの?」
「見られないようにな」

シルヴィアはサクランボの茎を持つ。

「良く熟れてて美味しそう。」
「人に見つかるなよ」
「大丈夫!」



(戻れる保障なんてない)

シルヴィアは屋根の上まで飛び上がると陽の当たる場所に座ると膝においたサクランボにかじりつく。

「甘くて美味しい……」

(還りたい でも)
人の世界に長くとどまるという事は天使の命を縮める事。
傷が治った時 向こうの世界に還れるのか。
魔族に傷付けれた天使の殆どは闇に侵され堕天使になる。

(秀はとても良い人だけど 私達は一人の人と長く接していては いけない)
人としての感情を持ったら、天使では無くなってしまう。

白の扉までは遠い
あそこまで飛ぶには翼を完璧に治さないと。


でも
闇の一族の刀に切られた翼はそう簡単に治らない。


「ー……?」

ちゅんちゅんと可愛らしい鳴き声がして顔を上げれば
茶色の小さな鳥たちが可愛い声を出して寄って来る。

「雀さんたち?」

落ち込みそうなシルヴィアの躰を温めるように何羽も寄って、屋根に止まる。

「なあに? 雀さんたち? 慰めてくれてるの?」

ふっくらと暖かい小さな躰。
フィギュアサイズのシルヴィアと良い勝負だ。


「丁度いいわ。サクランボの残りは雀さんたちにあげるから仲良く食べるのよ? 食べ終わったら 一緒に遊ぼう?」


白い翼を広げるシルヴィア。
雀の団体と小さな天使。
ご近所から見ればただの雀の団体が円を描きながら飛んでいるようにみえるだろう。

シルヴィアは何も考えずに飛んだ。


マグカップを片手にドアから出て来た赤井が、雀と飛び回るシルヴィアを見て、呆れたように、楽しそうにみているとは気づかずに。
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