Act-04 月桂樹 後編
赤井は看護師が出ていくと子供が月の光をあびているのに気づいてカーテンを閉める。

「―………ぅ」

子供が小さく呻いて身動ぎをする。

「っと……気がついたのか?」

赤井はそっと様子を見る

(―………ぇ?)

シルヴィアと名乗った少女が目をあける。

「………月…… を」
「月? ぇ?」
「消さ ない… で」
「消さないで? おい? それは―……… ?」
「―…… キャリー…」

ふっと力が抜けた様に目を閉じる。

(月を消さないで? どういう意味だ? )

カーテンを開ければ白銀に輝く月光が、少女を照す。

(まぁいい。 目を醒ましたら分か……!?)

―…… その時、少女の躰が分離して…… よく、心霊現象の特別番組でみるような、肉体と精神が分離したような姿が見えた。

立ち上がってる躰はすでに子供ではなく、薄絹を纏った儚げな、モデルと云っても通じるような少女のような女性の姿で背中に大きな翼が見えるが、左の翼が黒く汚れて左腕がだらりと下がって右手に弓を持っている。

「っっ!? おい? その怪我は……!」
「キャリー…… キャリー、無事?」
「キャリー? 」
「逃げてキャリー…… 奴らが…… エンジェルズを守って…… 」

がくり、と膝を付くシルヴィアの左翼はボロボロに傷がついている

「シルヴィア? ヴィー!? 大丈夫か!?」
「逃げて…… キャリー。 ここ は、 私が 防ぐ、からっ……!」
「ヴィー!」
「チビちゃんたちをお願い…… キャリー」

シルヴィアの瞳に何が映っているのか。
(夢か? 俺は子供の夢の中にいるのか?)

「―…… 大丈夫だ。 落ち着け。」

赤井はどうとでもなれ、というようにシルヴィアを抱き寄せる

「キャリーは無事だ。 無事に逃げた。 チビたちも無事だ」
「……逃げた? 逃げられた?」

焦点の合わない目で赤井を見るシルヴィア

「あぁ、無事だ。 安心しろ。 君の事は俺が守ってやる。」
「そう。 良かった、… キャリー……」

かくん、と赤井の腕の中に倒れ込んでくるシルヴィア

「っ!? おい!」

少女、といってもよいような躰が助けた時の子供の体系に戻る。

「―………」

(俺は夢をみているのか?)
けれど、ベッドにねていた筈の子供は自分の腕の中にいる。
(…… 寝不足、の所為にしておくか)
赤井は溜息を吐くと、少女を抱き上げてベッドに寝かせると毛布を掛けた。
(月を消さないで―…… か。)
赤井はカーテンを開けたまま椅子に座るとそっと額にキスを一つ。

「おやすみ。ヴィー。 俺が傍にいてやるから…… 今度は良い夢をみるんだぞ……」

赤井はポンポン、と胸の当たりを優しく叩く。
微熱はあるが呼吸は深く穏やかなのに安心して赤井も目を閉じた
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