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「バスの席順でスムーズにいくよう番号順に二列で並ぼう!」
『わぁ、飯田くん委員長っぽいわ〜』
「昨日の非常口も凄かったしね〜」
ケラケラとその時の光景を思い出しているのかお茶子ちゃんが隣で笑う。
昨日の昼間のマスコミ騒動、どうやら飯田くんが凄い大活躍だったらしく、その活躍を見た緑谷くんが「やっぱり委員長は飯田くんがいい」って指名して、改めて彼が委員長となった。
皆がいうに、非常口の標識みたいになって凄かったとか何とか…。
ちょっと見たかったけど、私はそれどころじゃなかったからなぁ。
チラッと前方を歩くツンツンの金髪頭を見る。
結局昨日はタイミングがなくて、お礼言えてないんだよね。
「なまえちゃん乗っちゃうよ?」
『あ、うん!』
今日の授業は人命救助訓練だ。
訓練場が少し離れているからこれからバスで移動する事になっている。
『なんていうか、こういう形のバスは初めて乗るかも。』
お茶子ちゃんと二人席に座ってグルっと中を見渡す。
後ろの方は予想していた座席の形だけど、前の方はまさかの向かい合う横長の席っていう。
飯田くんは「こういうタイプだったか!」と項垂れていた。
ほんと、真面目だなっと思わず笑ってしまった。
..
「派手で強えっつったら、やっぱ轟と爆豪だな。」
「私はやっぱり、なまえちゃんの個性がとっても強いしカッコいいって思うわ。それにキレてばかりいる爆豪ちゃんと違って可愛いから絶対に人気が出るわね」
『え!?何の話!?』「んだとコラ!!!」
『っ…』
窓の外をぼーっと眺めていたら、突然話題に出され、反射的に言葉を発してしまったが爆豪くんと言葉が被ってしまった。
彼の方を向けば、バチっと目が合う。
イラついているのか、その目が怖く思わず耳を畳み、縮こまる。
それにしても、梅雨ちゃんは前にも私の個性褒めてくれてたっけ。
嬉しいけど、皆の前で言われると以前より恥ずかしさ増し増しだよ。
「おい爆豪、狐森が怖がってんだろ!」
「あぁ!?知るか!!」
「ホラ、こうやってすぐキレるからきっと人気出ないわ」
「うっせ!!出すわボケエ!!」
爆豪くんの怒号が響き渡るが、皆はそれに笑っていて楽しそうだった。
意外とみんな、怖くないんだな彼の事。
そうしばらく続いた楽しい爆豪くん弄りだったが、相澤先生の「もう着くぞ」という一言でそれはすぐ終了した。
..
「すっげええー!!! USJかよ!?」
着いた建物の中は、まるで某テーマパークみたいだった。
「水難事故、土砂災害、火事…あらゆる事故や災害を想定し、僕がつくった演習場です。その名も、嘘の災害事故ルーム!!」
そう施設の説明を始めたのは、スペースヒーローの13号だった。
これまた有名なヒーローだ。
相変わらず凄いな雄英。
「わー!私好きなの13号!!」
隣でお茶子ちゃんが凄いはしゃいでいる。
というか、嘘(USO)、災害(SAIGAI)、事故(JIKO)って…。
本当にUSJじゃん。
いいのかなそれ、いやまぁ...覚えやすいし、いいんだけどね。
それから、13号による自称お小言が始まった。
.
「以上!ご清聴ありがとうございました!」
「素敵ー!!」
「ブラボー!!ブラーボー!!」
気付けば13号のお小言、というか素敵なお話は終わっていた。
とっても心グッとくるものがあったのは確かだ。
——けど。
『………』
私は掌を広げ、じっとそれを見つめた。
「…なまえ、どうかしたか?」
いつの間にか隣にきていた轟くんは、心配そうに私の顔を覗き込んできた。
『…今、13号が言ってたじゃない。自分は簡単に人を殺せる個性だって。…私も、そうだなって思っただけ。』
そう咄嗟に作った笑顔を轟くんに向けた。
勿論、人殺しで個性を使うつもりなんてない。
けど、改めてそういう事が出来るって言われると少し自分の個性が怖くなる。
「……それは、俺も同じだ」
そっと私の手に、真剣な面持ちの轟くんが右手を重ねてきた。
それがひんやりしていて、気持ちがいい、何てぼんやり思う。
って、そうじゃない!
私は勢いよく手を引いた。
『と、轟くん、急にそういうのは恥ずかしいって…』
「お。あぁ、悪い…?」
あぁ、出たよ轟くんの天然。
略してトドテン。
私たちは一番後ろにいたから、今のやりとりは多分誰にも見られてないはずだけど…
もしお茶子ちゃんとかに見られたら、絶対勘違いされるよ…。
そう念のため確認するように、チラッと皆に視線を向けた。
その時だった。
「一塊になって動くな!!」
相澤先生の緊迫した声に、皆一斉に振り向く。
「13号!!生徒を守れ!!」
『な、にあれ…』
相澤先生越しに下に見えたのは黒い煙?
そしてそこから出てくる化け物みたいなやつら。
「何だアリャ!?」
「もしかして、もう訓練始まってるパターン?」
「動くな!あれは敵だ!!!」
全員がその言葉に固まる。
なぜ?
どうしてここに?
ワラワラと湧いてくる敵に、思考が止まりそうになる。
そんな中、敵の群れの中に、身体中に手の模型みたいなのを纏っている男がいた。
『っ!!』
一瞬見えたその目に、どくどくと急激に鼓動が早くなる。
本能が、あいつはヤバイって必死に訴えかけてくる。
「13号!任せたぞ...」
『っ…相澤先生!!』
ゴーグルをつけた先生はバッと勢いよく下に降りていってしまった。
あんな大勢を、一人で何とかしようっていうの?
いくら先生でも、無茶だ。
私も一緒にっ...。
そう思うが、足は動かなかった。
「なまえ!」
『っ……』
グイッと轟くんに腕を引かれる。
相澤先生の闘っている姿が徐々に小さくなる。
待って、あのままじゃ先生が...。
ボーンッ!!
前の方から激しい爆破音が聞こえてきた。
次から次へと起こる事に、頭が追いつかない。
『わっ…なにこれっ!?』
前に向き直った途端、目の前に迫る真っ暗な煙。
思わず轟くんの腕を振り払って尻尾と腕で体をガードする。
「なまえ!!」
『と、どろきくん!』
私に伸ばされた腕を掴もうとした瞬間、視界は完全にブラックアウトした。
..
『っ…ここは?』
真っ暗な視界が、突然真っ赤な炎と崩れ落ちる建物でいっぱいになった。
『っ!...と、轟くん!?お茶子ちゃん!?......皆、は……。』
キョロキョロと辺りを見渡すが、誰もいない。
もしかして、どこかにワープさせられた… ?
USJ内だとしたら、ここは火災ゾーンってやつっぽいけど…。
『そうだっ...相澤先生』
さっきの敵の群れは、きっとあの広場にいる。
こうしている今も、相澤先生は多分闘っている。
他の皆も私と同じでどこかにワープさせられているとしたら、きっとあの広場に集まるはず。
『...行かなきゃ』
そう足を一歩前に踏み出した時だった。
「へっへっへ、こっちには可愛いお嬢ちゃんが飛んできたぜ」
「おうおう、たっぷり可愛がってやらねぇとなぁ」
『っ……』
その声にバッと振り向けば、どこから現れたのか、変なメットとマスクの男が2人立っていた。
こいつら、いかにも悪いやつって感じ。
さっきの奴らの仲間?
だとしたら、敵って事だよね...。
一歩後退り、同時に尻尾を5本にする。
「なんだ嬢ちゃん、獣系の個性か?」
「可哀想になぁ、ここじゃぁ丸焦げになっちまうぞ」
口を大きく開けて汚い笑い声をあげる男二人。
下品すぎて気持ち悪い。
相手は大人。
しかも体の大きい男2人。
怖くないわけがない。
無意識に握った拳が微かに震えている。
けど、何とかしなくちゃ。
私は一つ大きな深呼吸をし、自分に言い聞かせた。
大丈夫、どうって事ない。
私は強い。
梅雨ちゃんが褒めてくれたじゃない、とっても強いしカッコいいって。
だから、大丈夫。
さっさと倒して、皆と合流しよう。
「炎で焦げる前に、俺らが刻んでやるからなぁ!」
『っ…焦げるのは、あんた達よ!!』
カッと目を開き、男二人の周りからボボボッと青い炎を出す。
突然空間から現れた青い炎に、二人は慌て出すが、青い炎はゴオオっと凄まじい音を上げながら男二人を囲った。
「な、なんだこれ!!」
「うお、あっちあっちい!!」
徐々に炎の高さを上げ、逃げ場をなくす。
中で暴れまわる二人を見て私は緊張からか額に汗が滲んだ。
『大丈夫。殺しはしないの。だから、死なない程度に焦がしてあげる』
そっと右手を前に出し、グッと握りしめる。
「うあああああ!!」
「やめてくれええ!!!」
徐々に小さくなる炎の囲い。
汚い断末魔が聞こえ、思わず耳を畳む。
こんなものなのか、敵って。
九尾状態にならなくても勝ててしまった事に何だか拍子抜けしてしまった。
でもあまり時間が掛からなくてよかった。
これで広場に向かえる。
そう最後のトドメを刺そうとした時だった。
『っ…炎が』
青い炎が私の意思に反して徐々に消えていく。
その炎の中でゆらりと揺れる影が見え、咄嗟に後ろへ飛び退ける。
「おらあああ!!!!」
その声と共に、青い炎が私に向かって襲いかかってきた。
『これ、私の炎?』
かなり後ろに離れ、なんとか炎からは逃れた。
目の前に広がった青い炎が完全に晴れ、姿を表したのはメットの男と、ボロボロになって横たわるマスクの男だった。
「ははは、急に攻撃してくるとは、気性の荒い嬢ちゃんだなあ!!だが生憎、俺の個性は食炎なんでなぁ!!」
(個性 食炎=その名の通り炎を食べる事ができる。また食べた炎は口から出すことができる)
『…そう簡単に、いかないって事ね』
詳しい能力は分からないけど、今の攻撃を見るに食べた炎を口から出す事が出来るみたいだけど…。
炎は効かないって事だよね。
むしろ向うからしたら攻撃出来る武器になってしまうのか。
なら狐火は使えない。
近距離に持っていって、尻尾で応戦していくしかないかな。
けど……
ここは火災ゾーン。
周りは炎に囲まれている。
向こうにとっては飛び跳ねるぐらい有利な戦場。
「さあて、たっぷり可愛がってやるぜ」
二ヒヒっと舌舐めずりする男に思わず体が震える。
気持ち悪い。
考えていたってしょうがない。
この間の訓練だって、考えがすぐ纏まらなかったって反省したじゃないか。
考えるより先に、動くしかない。
私の額には再びジワリと汗が滲み始めた。
『やってやろうじゃない...』
戦闘シーンって難しいですね。