present





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※ちょっぴり流血表現あります



「おらおらおらあ!!!」

『っ...これじゃあ拉致が開かない』


男の周りは真っ赤な炎。

近付こうにもあいつの口から無限に吐かれる炎の球で近付きにくい。

私の尻尾の攻撃範囲は5m。
男との距離は30mくらいだろうか。

逃げ回りながらも必死に男に近付こうと試みるが、近くなればなる程、炎の球の威力が強く上手くいかない。

途中、男と目が合うと気持ち悪い笑みをこちらに向けてきた。


「いつまでも跳ね回ってるだけじゃ、そのうちバテちまうぞ!!」

『くっ...分かってるよ、そんな事......』

じわじわと削れていく体力に、焦りが募っていく。
焦れば焦るほど、どうすればいいのか体の動きも鈍くなっていく。

こんな時、轟くんみたいに氷の個性だったら、あんな奴瞬殺なんだろうに…。


『っんわ!?』

余計なことを考えていたら、目の前に転がっていた大きめの瓦礫に気付くことができなかった。
ガガっと右足をぶつけ、そのまま思いっきり転倒する。

『いったぁ...』


転んだ拍子に地面に着いた掌からじわりと血が滲む。
右足からは瓦礫で思いっきり切ってしまったようで、傷口からかなりの血が溢れてきた。

動けないほど痛くはないが、ジンジンとあちこちからの痛みが体を駆け巡る。


反射的に視界がじわりと滲む。

最悪だ。


「そろそろ終わりにしてやるよ!!この炎で、灰になっちまええ!!!」


『っ......』


男から出された巨大な赤色。
私を丸っと飲み込んでしまいそうなくらい大きな炎の球だ。


あぁもう、いっそこのまま逃げ出してしまいたい。
正直、USJにきてから目まぐるしく起こるこの出来事に、もう私はいっぱいいっぱいだった。





でも。




ザザッと脳裏に”あの人”の顔が浮かぶ。




『………わかってるよ、私はまだ』




まだなにも目的を果たせていない。

こんな所で邪魔されて、たまるもんか。





『っ……』


グッと奥歯を噛みしめ、痛む体に鞭を打つ。



集中しろ、集中しろっ


グッと目を閉じ、全ての意識を耳に集中させる。

次第に耳がジワジワと熱くなり、足元からザアアっと熱風が吹き荒れる。


「死ねえええ!!!」


男の声と共に、徐々に近づいてくるその熱を感じながら、私はバチっと目を開ける。




制限時間は1時間。





その間に——。





『全部……、燃やす!』


フサァっと9本になった尻尾を円を描くように広げて、両手を前にかざす。

『燃えろお!!!』

目の前に迫った赤い炎の球を青い炎で包み込む。


「ははは!バカめ!そんな事しても無駄だぞ!!」


高らかに笑う男の言う通り、赤い炎は消える事なく私を飲み込んだ。





だが、炎が私を飲み込む直前で、真っ赤だった私の視界は青色に変わっていた。




バーンッ!!!



けたたましい音が辺りに鳴り響く。

同時に、ジュオオと炎のぶつかった建物が凄まじい勢いで燃え崩れていく。




「なっ!!??!?」



『ふぅ……ぎりぎり…』


「お、おまっっ…何で!?!??!」


男が信じられない物を見るような目で私を見てきた。
その顔があまりに面白くて、少しだけにやけそうになる。




『何で?...そりゃぁ……私の炎の方が強いから、ね!!』


ダンッと足を踏み込み両手を後ろから水平にに突き出す。
その手の動きに合わせて、周りにあった青い炎が勢いよく私と男をぐるっと囲った。


「ほ、炎が、全部青に!?!?」


そう驚きつつも、慌てて私の青い炎を口に掻き込んだ男。

私はスッと目を細め、炎が男の喉を通るでタイミングで火力を上げた。


「ごふっ…ぐおおぉぉ!??!?!」


男の口から吐き出された青い炎はジュっと音を立て地面に転がされた。
喉を両手で押さえながら男は悶えていた。


ふわっと尻尾を靡かせながら、私は男の前までゆっくり歩み寄る。


『その貧乏舌じゃ、私の炎は食べれなかったみたいだね?』


「ふぅー、ふぅー…」

男は目一杯に生理的な涙を浮かべ、口の端から血を垂らしながら私を見上げた。

喉で私の高熱の炎を喰らったんだ。
恐らく中の細胞等が焼け爛れて声が出せないのだろう。

浅い呼吸ではあるが、男が息を吸えて居ることに私はひどく安堵した。

もう少しだけ火力を上げていたら、恐らくこの男は死んでいただろう。


そう考えると、少しだけ体が震えた。



『…多分半年もすれば、元の状態に戻ると思うから、安心してね』



私の言葉を最後まで聞いていたかは分からないが、男は既に意識を失っていた。


ゴオォと私達を囲う青い炎は天高く燃え盛っており、周りの空気がどんどん重く熱くなっていくのを感じた。
少し見渡せば、炎に飲み込まれた建物は既に燃え尽きてしまい灰すら残っていなかった。



ヘタっと私はその場に座り込む。


『...はぁ……終わった...』


体の力が抜けていくのと同時に、炎を徐々に消せば、後に残ったのは気絶してる男2人と、この重く熱い空気だけだった。


『はあ…』


九尾になってからどのくらいだったろうか。
1時間は経ってないと思うけど、あんなに炎を出したのは初めてだ。

頭がクラクラする。

少しだけ息も苦しく感じ、私は浅い呼吸を何度も繰り返した。




「…い……おーい!」

ピクッと耳が反応する。
遠くから誰かの声が聞こえる。

この声、は…。



「狐森さん!!」

確かに聞こえた、私を呼ぶ声。
もう顔を動かすのも億劫なくらい疲弊しているけど、私は声のする方へゆっくり顔を向けた。



『お、じろくん?』

「はあ、はあ…大丈夫か狐森さん?」

座り込む私の前にしゃがみ込んで顔を覗いてくる尾白くん。
その顔には少々傷があり、もしかして彼も敵と戦闘していたのだろうか。

「青い炎が見えたから、もしかしてっと思ったけど…これ、狐森さんが?」

キョロキョロと辺りを見渡す彼に、私は何も言葉が出なかった。

少しだけ、限界だった。



でも、


『い、かなきゃ……』

そう言葉を絞り出すが、体が動きそうになかった。
身体中が熱くて、だるい。

明らかに個性の使いすぎなのは分かっていた。

『尾白くん、お願い……広場まで、連れてってもらって、いいかな?』

「あ、あぁ、それはいいけど、少し休んで行った方がいいんじゃないか?」


そっと背中をさすってくれる彼に、私はゆっくり首を横に振る。


『だめ、急がなきゃ、相澤先生が...だから…お願い…っ』

「……わかった。」


そう私に背を向け、しゃがむ尾白くん。

私は何とか力を振り絞って、彼の背に乗る。

「広場に着くまで休んでてくれ!」

『ん……ありがとう』

その言葉に甘えて、私はそっと目を閉じた。





いやだから、戦闘シーンって難しい!(2回目)






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