14
—轟side
オールマイトに続き、学校の先生達の登場で敵は去っていった。
今回の事件で、俺は目の前で見たNo1ヒーローの、プロの世界に度肝を抜かれた。
俺だけじゃない、きっとあの場にいた全員がそうだろう。
生徒の安否確認のため、俺たちは外に集められ点呼が始まった。
その際、警察の人に緑谷となまえは保健室だと聞かされた。
緑谷がボロボロになっていたのは知っている。
けど、なんでなまえが?
容体は?なにがあったんだ?
土砂ゾーンで敵に尋問を始めようとした時、突然大きく青い炎が天高く上がったのを見た。
あれは恐らくなまえだったのだろう。
もしかして、その時に大怪我でもしたというのだろうか。
「あの、なまえちゃんの容体は…」
蛙吹が今にも泣きそうな顔で刑事さんに聞いていた。
彼女になにがあったのか、知っているのだろうか。
「彼女は怪我による多量出血と、個性の使いすぎで意識が飛んでいるようだ。命に別状はないから、安心しなさい。」
その言葉に、蛙吹は俯く。
多量出血という言葉に俺は過剰に反応する。
『多量出血って、そんなに酷いんですか』
「ん?あぁ、すまない…そこまでは詳しくは分からないんだ。」
『…そうですか。』
命に別状はないとはいえ、心配でしかなかった。
詳しい状態を知りたいなら、蛙吹に聞くのが早いか…
そう俯く彼女に声をかけようとした時、全員バスに乗れっという指示が出た。
それに皆が苦い顔をしてバスに乗り込んでいく。
渋々俺もその後に続いた。
教室に戻ってからは、真っ直ぐ家に帰るよう言われ、それぞれが荷物を持ち教室を出ていった。
俺はなまえがいつ戻ってくるのか分からなかったが、教室で待ち続けた。
暫くしてクラスメイトが全員帰宅し、教室に残されたのは俺と、緑谷となまえの鞄だけだった。
スマホを弄りながら時間を潰すが、1分がいやに長く感じた。
土砂ゾーンを出てすぐに広場へ向かったことは間違った選択じゃないと思っている。
けど、あの炎を見て俺はなまえの元へ向かうべきだったのではと今になって少しの後悔が募っていく。
『…くそっ』
俺はなまえと緑谷、それから自分の鞄を持って保健室へ向かった。
..
『………』
保健室の前に来たものの、入っていいものかとドアを開けるのを少し躊躇った。
中から話し声が微かに聞こえてくるが、なまえではなさそうだ。
入るか。
そうドアに手をかけた時だった。
—ガラッ
『お。』
「わぁ!?え、と、轟くん!?」
中から開いたドアは、どうやら緑谷が開けたようだった。
目の前に俺がいた事に、すげえ驚いて後ろに跳び退いていった。
『緑谷か…』
「轟くん、どうしてココに?もしかして怪我でもしたの?」
そう真剣な顔で聞いてくる緑谷に俺は否定し、鞄を押し付けた。
「え、あ、わざわざ届けに?」
思ったより元気そうな緑谷に、俺はクラスメイトとして安心する。
だが緑谷には申し訳ないが、俺はなまえの様子を見に来たんだ。
そっと緑谷越しに室内の様子を伺う。
「もしかして、狐森さん?」
『…あぁ』
何かを察した緑谷が口を開く。
「…狐森さん、まだ目が覚めないみたいで…これから家族の人が迎えに来るらしいんだ。」
『そんなに、ひでえのか…』
無意識に眉間にシワが寄り、保健室に足を踏み入れるがなまえの姿はない。
恐らく、あの閉められたカーテンの中だろうか。
「今は、リカバリーガールが治療している最中だよ」
『…緑谷、なまえに何があったんだ…』
そう問えば、緑谷は「言っていいのかな、でも轟くんと仲良さそうだし、でも勝手に言っちゃうのはまずいよな…」っとぶつぶつ言い始めた。
緑谷が何か知っているのは明白だった…。
未だにぶつぶつと言い続ける緑谷に更に問い詰めようとした時、廊下からバタバタと足音が聞こえてきた。
その音に振り向けば、ガンっと勢いよくドアに手を着く男がいた。
「はあ、はあ、すみません!!なまえは、はあ、なまえは、どこに…っ…はあ…」
かなりの距離を走ってきたのか、激しく息切れを起こしている。
ゆっくりと上がる顔を俺はマジマジと見た。
その男はエメラルドの瞳に、黒縁のメガネ、そして何故か白衣を着ていた。
見覚えのある髪色に、白衣、それからなまえを名前で呼んでいる事から家族の誰かだろうか…。
父親か?
それにしては若いか。
それに、前になまえの話で聞いた父親と印象はだいぶ違う。
そういえば兄がいるとか言っていたか....?
一人考えを巡らせていると、シャッとカーテンの開く音が響いた。
「全く病人がいるんだから少しは静かにしなさいな」
「あぁ、修善寺さん、どうもご無沙汰してます。」
リカバリーガールが姿を表すと、白衣の男はペコペコと頭を下げ挨拶を始めた。
知り合い、なのか。
「おや、お前さんが迎えにきたのかい?」
「えぇ、父は仕事で抜け出せないので、代わりに俺が。すぐ連れて帰ります。ご迷惑をお掛けしました」
それと、っとリカバリーガールに向いていた顔を立ち尽くしていた俺と緑谷に向けた。
「君たち、なまえのクラスメイトかな?本当に大変な事件だったね、皆無事で良かったよ」
人懐っこい笑顔で、俺と緑谷の頭にポンっと手を置いた。
驚いて、お、っと小さく声が漏れた。
隣の緑谷は少し照れ臭そうにしていた。
『あ、の、これ。なまえさんの鞄、です。』
ぎこちない敬語とで肩にかけていたなまえのカバンを差し出す。
「あぁ、悪いねわざわざ。ありがとう、なまえには俺から言っておくよ。えっと…」
『…轟です』
「うん、轟くんね、わか……とどろき?」
白衣の男はピタリと動きを止めた。
俺の顔をマジマジと見ると、眉をハの字にして困ったように笑った。
「そうか、君が”ショウト”くんか。」
そうかそうか、っとワシャワシャと頭を撫でられた。
「じゃ、君たちも今日は早く帰って早く寝るんだよ。睡眠は一番の良薬だ。」
続けてリカバリーガールに一言いわれると、俺と緑谷は追い出されるように保健室を出された。
「轟くん、あの人と知り合い?」
緑谷にそう問われ、俺は首を横に振った。
なんで俺の名前を知っていたのか、なまえが俺の事を話したのだろうか。
だとしても、”ショウトくん”と呼ばれた事に違和感があるし、なんとなくあの表情からはそういう感じはしなかった。
...そういえば、結局なまえには会えなかったな。
—NoSide
緑谷と轟が保健室から出ていき、なまえを迎えにきた治はそっとカーテンを開ける。
「傷の方は、お前さんが帰ったら直してやりな。…明日にでもなれば意識も戻るだろうよ」
「ええ、有難うございます修善寺さん。ほんと、無茶したみたいですね、こいつ」
治はべたっと汗で額にくっついているなまえの前髪をそっと指で払い除ける。
少し険しい顔をし、目を閉じる彼女がどんな夢を見ているのか誰にも分からない。
「それにしても、まさかエンデヴァーさん所の息子がクラスメイトとは…」
「おや、知ってたのかい?」
「えぇ、父から何となく聞いていたんですが、まさか本当に一緒とは思わなかったので」
そう話しながら、治はなまえを背負い始めた。
「今年の新入生は、何かと話題になる子が多いみたいだねぇ。その子といい、さっきの二人もそうだよ」
「はは、そうなんですね。なまえには、問題児にならないよう、良く言い聞かせますが、何かあった際は、うちの妹をよろしくお願いします。」
軽く笑いながら返事をするが、最後の方は真剣な面持ちで、リカバリーガールへ挨拶をし、治は保健室を後にした。
「言われなくとも、皆私の大事な生徒だよ」
体育祭前に、ちょっとお話入れようかな。