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騎馬戦は第一種目よりかなり白熱して終わりを迎えた。
緑谷くんのハチマキをとりたかったけど、B組に色々邪魔されてる間に轟くんに持って行かれてしまって、結果的に私たちは2位となってしまった。
ただまぁ、4位以内までは最終種目に進めるとの事で、私的にはここまで良い感じなのではと思っている。
爆豪くんはありえないほどキレ散らかしていたけど...。
「なまえちゃん、お昼いこ〜!」
『あ、お茶子ちゃんに梅雨ちゃん。食堂だよね?ちょっと...先行っててくれる?すぐ行くから!』
首を傾げる2人に軽く手を振って私は控え室の方へ向かった。
そろそろ轟くんと話さなきゃ。
構うなと言われたらそれ以上追求しようとは思わないけど、私たち戦友だし...何か力になれるんじゃないかって図々しくも思っている。
『確かこっちに行った気がしたんだけど.....あれ、爆豪くん?』
「っ....。」
『なにし——、ん!?』
控え室近くの廊下で、なぜかポツンと壁に寄りかかっている爆豪くんがいた。
声をかけ近付いた瞬間、私の背中に衝撃が走った。
驚いて顔をあげれば、赤い瞳が私を捉えていた。
——静かにしろ...。
そう無言の圧力を感じ、開きかけた口をキュッと紡いだ。
背中から感じるコンクリートの壁の冷たい感覚。
掴まれた腕から伝わる熱いくらいの温度。
『っ....。』
正直、少し怖いと思った。
顔を俯かせ、バッと胸元まで上げた尻尾で、これ以上彼との距離が縮まらない様に間を作る。
どう言う状況なのだろうかと脳を動かそうとした時、聞こえてきた声に体がピシッと固まった。
「俺のおやじはエンデヴァー...知ってるだろう」
俯かせていた顔を再度そっとあげれば、壁の一点を見つめ、神妙な面持ちでいる爆豪くんがいた。
続けて聞こえてくる声は、私が探していた人物のもので、誰かと話をしている様だった。
淡々と進んでいく話の内容は決して楽しいものではなく、ピリついた空気が離れているここまで伝わってきた。
だから私と爆豪くんはただ黙って話に耳を傾けるしかなかった。
そしてどうやら話している相手は緑谷くんの様で、私は朝の控え室での2人を思い出す。
盗み聞きなんて..と今更ながら思ったけど、彼らの会話を聞いて、轟くんがどうして今日あんな感じなのか少しわかった気がした。
たぶん、焦ってるんだ。
...それから轟くんの口から語られていく過去の悲しい出来事。
以前カフェで聞いた時のことを思い出し、私も大嫌いなアイツの顔が一瞬チラついて、拳に力が入った。
それとほぼ同時に、私の腕を掴んでいた爆豪くんの手の力が強くなり、一瞬顔が歪む。
そっと盗み見る様に彼の顔を見れば、どこか怒った様な顔をしていた。
彼も...この話に思う所があるのだろうか。
ギリっと痛む腕。
そっと尻尾で爆豪くんの胸板を押し、反射的に私に向いた赤い瞳と視線が交わった。
『....”お前ら“のエゴを押し付けるな.....って、思うよね。』
「っ...。」
少し驚いた顔の爆豪くんを見て、自重気味に笑う。
彼が何か言い出す前に、私は一言謝りそっと押し退け食堂の方へ向かった。
これ以上話を聞いていたら、私の感情が暴走しそうだった。
私と轟くんの父親への憎しみは、きっと誰にも理解できない。
だって、同じ境遇にいる私ですら轟くんの気持ちを100%理解するなんて難しいと思ってしまうんだから——。
だからこそなのか。
彼は私に何も言ってくれないのかもしれない。
誰にも…私にも、理解して貰えないって、多分...どこかで諦めているから。
『はぁー……。』
外に出て雲一つない青い空を見上げる。
ぼんやりと周りがどうでも良くなるような感じ...久しぶりだな。
結局私も、独りでどうにかするしかないんだ。
青い空とは裏腹に、私の心は一気に曇り空になった。