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※ちょっと長くなっちゃいました。
※シーンと視点の変更が多いです。
>爆豪Side
「あの...ほんとに、いいの?」
「ちっ...るせぇ。2度は言わねぇ。」
モジモジと後ろをついてくる狐女。
俺に引かれる様に小さな歩幅で必死についてくる姿に、なんでか俺が悪い事をしている気分になった。
それでも手を離そうと思わなかったのは、離した瞬間にコイツがどこかへ行ってしまいそうな顔をしていたからだ。
――時は少し遡り
学校を出て、電車に乗るまで会話なんて全くなかった。
別に混んでいた訳ではなく、席も空いていたが横並びで立ち、電車に揺られ帰路についていた。
途中、狐女が小さな声でこちらに話しかけてきた。
「あ、次...私の最寄りなの。あの...本当に有難う、爆豪くん。」
その言葉に、普段気にも留めなかった駅の名前を確認した。
狐女は、酷く沈んだ面をしていて見ているだけで自分の眉間に皺が寄った。
俺から何の返事も無い事に少し決まりの悪そうな顔をすると、電車のアナウンスと同時に開いた扉の方へ歩き出そうとした。
けど、一歩踏み出したところでピタリと足を止め、驚いた顔でコチラを振り向いてきた。
「...え?」
垂れ気味だった狐耳がピンっとまっすぐになり、パチパチと瞬きを繰り返すデケェ瞳。
その瞳に映るのは、信じられねぇという顔をした俺だった。
それもそのはずだ。
俺は無意識に狐女の手を掴んでいたからだ。
【扉が閉まります。ご注意ください】
プシュっと扉が閉まり、少しすると視界の端で景色が後ろへ流れていった。
「ぇ、あの...」
お互い見つめ合ったまま固まっていたが、向こうの戸惑った声にハッとし、手を離した。
「.........。」
「.........。」
無意識とはいえ何でこんな事をしたのか。
クソ面倒な事態を招いた自分に舌打ちが溢れた。
けど、このままコイツが...
あの兄貴のいる家に帰るのかと思うと、何でかまたでかい舌打ちが溢れた。
「...てめぇ、今日帰れんのかよ。」
「......。」
俯いたまま何も言わない狐女に、どうすっか。と考えを巡らせる。
我ながら、本当に何でこんな事をしているのか考える事すら面倒に思えたが、取り敢えず出した答えはこれしかなかった。
「……着いて来い。」
そして冒頭に戻る。
..
見慣れた家の屋根が見え始め、俺は掴んでいた手を離した。
慣れた様に家のポストを開け、何も無い事を確認すると続けて玄関を開ける。
狐女は戸惑った顔でと家の前に立ち尽くしていたが、俺の顔を見るなり変な作り笑顔を浮かべてきた。
垂れ下がった耳と尻尾に目がいき、わざと聞こえる様に舌打ちをする。
「はよしろ。」
「は、はい!あの...お邪魔します。」
..
> なまえSide
「ほんっっっと、このバカがごめんね!」
「い、いえ..とんでも無いです。私こそ、あれは爆豪く...か、勝己くんに申し訳ない試合になってしまって....」
「あ“!?謝ってんじゃねぇ!!」
「コラ!怒鳴るんじゃないわよ!!」
「ババァだって怒鳴ってんじゃねぇかよ!!?」
バチバチと始まった親子喧嘩に、私はどうしようと苦笑いを浮かべるが、何もいえず眺めているしか出来なかった。
爆豪くんのお家にお邪魔する事になった時は、迷惑をかけてしまって申し訳ないという気持ちよりも、素直に有難いと言う気持ちが勝った。
今あの家に帰って、母の死について向き合うのが怖かったからだ。
電車で手を掴まれた時と、着いて来いと言われた時は、目の前の彼が本当にあのいつも怒っている爆豪くんなのか疑ってしまったけど、こうしてお母さんと言い合う姿はいつもの彼だった。
「大体女の子の顔面を爆破するなんて、テレビの前で肝冷やしたじゃないの!!」
「うっせ!手加減したわ!!!」
え、あれ手加減してくれてたんだ。
結構ちゃんと痛かったんだけどな...。
「あ、あの...」
「手加減とかじゃ無いわよ!そもそも自分の彼女にそんな事出来るアンタの神経を私は疑ってるのよ!?」
「...え?」
「なまえちゃん、コイツに暴力振るわれたら私に言ってね!!ちょっとでも大事にされてないって思ったら、すぐ振って良いんだからね!?」
「いや、あの...」
「おいババァ!?勘違いしてんじゃねぇ!こんな狐女が俺の彼女な訳ねぇだろうが!!?」
取っ組み合いをしながら時折コチラに優しい言葉をかけてくれたお母さんは、爆豪君の言葉でピタリと動きを止めた。
私、爆豪君の彼女と思われていたのか。
でも無理もないよね、年頃の子が異性を家に連れて来るなんて、そう思ってしまうのだろう。
轟くんがウチに来た時も和美さんが勘違いしてたし...。
「え、彼女じゃないの?」
「だぁからっ!!そう言ってんだろうが!!」
「....本当に?」
キョトンとした顔をこちらに向けられて、何だか恥ずかしくなって赤くなっているであろう顔を尻尾でサッと隠す。
「テメェ!!んな顔すんんじゃねぇ!!ややこしくなんだろうがっ!!!」
「ご、ごめっ...」
「良いから部屋行っとれ!!」
ポイっと首根っこを掴まれて、リビングでの騒がしい空間から追い出された。
「二階の上がってすぐの部屋だ。」
「あ、うん…」
閉まりかけた扉の隙間から、バコンっと頭を叩かれて「乱暴にするな!」と言われている姿が見え、私は少しだけ呆然と立ち尽くした。
それから言われた通りの2階の部屋に行けば、そこは綺麗に整頓の行き届いた部屋だった。
床には昨日使われていたのだろう筋トレグッズが置かれていて、なんとなく爆豪くんらしい部屋だと思った。
部屋には椅子という椅子はなく、あるとすれば勉強机の椅子だろうか。
流石に椅子であろうと部屋の物に触るのには気が引け、レースカーテンから差し込むオレンジの光に釣られる様に、その窓辺下の床に小さくなって座った。
少しだけ、寒いと感じた。
ふんわりと尻尾を胸に抱え、その寒さを埋めようとした時、階段をドタドタ上がってくる音が聞こえた。
思ったより早く爆豪くんが来たようだ。
「…あ?んなとこで何してんだよ。」
部屋に入って来るなり、私の姿を見た彼は怪訝そうな顔でそう尋ねてきた。
「えっと、座るとこ迷っちゃって…?」
私の返答に変わらずな表情でいる彼は、手に持っていたグラスを勉強机に置くと慣れた手つきで部屋の明かりをつけた。
それを目で追っていれば、足音を立ててコチラへ来た。
何だろうと顔を上げれば、私の真上にあったカーテンをシャッと閉め、カーテンを整えた。
至って普通な行動なのに、爆豪がやってるとなんだか不思議な感じがして思わず彼をじっと見つめてしまう。
「んだよ。つーか、そんなとこいねぇでコッチ座れや。」
「あ、うん……。」
顎で刺された場所はラグが引かれた所だった。
四つん這いで這う様にしてそこに向かえば、部屋の隅から折り畳みの机を出して広げてくれた。
その流れで目の前に置かれたグラス。
そっと中を覗き込めば、シュワシュワと黒い飲み物が入っていた。
コーラ……かな?
物は知ってるけど、歯がギシギシするし、身体に良くないから飲んじゃダメって言われて飲んだ事がない。
チラッと斜め前に座る爆豪君を見れば、ゴクゴクと喉を鳴らして飲んでいた。
オマケにプハァなんてオジサンみたいな声まで出している。
「美味しい?」
「あ?……お前、飲んだことないとか言わねえよな?ただのコーラだぞ。」
「んっと...ない。」
ヘラっと笑えば、冷ややかな目で箱入りのお嬢様かなんかか?と聞かれてしまった。
「そういうのじゃないけど、身体に良くないからって炭酸ドリンクはお手伝いさんが作ったジンジャーエールくらいしか飲んだ事ないかも。」
「はぁ!?くっっそお嬢様じゃねぇか!?」
「え、いや……。あ、あれだよ?お手伝いさんって言っても、母親代わりみたいな人で、爆豪くんが想像してるメイドさんとかそういうのじゃないよ?」
「…………母親代わり、な。」
爆豪くんの呟きと共に、グラスに入った氷がカランと音を立てた。
急に真剣な顔になった彼は、ジッと自分の手元を見つめ黙ってしまった。
要らないことを言ってしまっただろうか…。
申し訳なくなって、つい耳が垂れる。
「テメェの家のことなんざクソほど興味ねぇけど。……話せ。飯まで時間あんだよ。暇つぶしで聞いてやる。」
「え、い、いいよ。面白い話じゃないし...」
「それは俺が決める。……俺の部屋でしみったれた面されると、こっちまで気分下がんだよ。話して吐き出せば、ちったぁスッキリすんだろ、女ってのは。」
大きなため息と共にそんな事を言う彼に、なんだその偏見は。と心の中で返答する。
でもまぁ……。
実際そうかもしれないけど……。
「……別に言い辛えなら言うな。けど言わねえなら、その悲劇のヒロイン辞めろや。」
「っ……ほんと、爆豪くんって優しいのか優しくないのか分からないね。」
「あ?俺はテメェに優しくしたつもりなんて、これっぽっちもねぇわ!!」
「はは、それもそうかもしれないね。……じゃぁ、今から私の話を聞いても、優しくない爆豪君は“クソみてえな話だな”って笑ってくれる?」
「テメェなぁ。……ちっ。はよしろ。」
記載変更のお知らせ。
その回の視点主が喋る時、『』で表記してましたが、「」に変更しました。
以前の表記に関しては、徐々に修正してまいりますので、ご認識おきください。