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>爆豪Side
「2人とも今日はお疲れ様!なまえちゃんも、遠慮しないでたくさん食べて。」
「は、はい。ありがとうございます。私まですみません…。」
隣に座った狐女は、目の前の食卓に広がった寿司達に少し緊張している様だった。
ぎこちなくも寿司桶の角にある卵焼きを食べる姿を横目に、俺は大トロを箸で掴む。
「うちは大体こういう行事毎の日はお寿司なのよ。なまえちゃんお寿司は好き?偶に酢飯がダメって人いるけど、大丈夫だった?」
「あ、はい。寧ろお寿司は好きです。」
「なまえちゃんは、なんのネタが一番好きなんだい?遠慮せず、好きなやつ沢山食べてね。」
「ありがとうございます。好きなネタは、えっと……あ、油揚げが大好物で、なので稲荷寿司が好きです。」
「あら、意外と見た目通りの好物なのね!稲荷寿司だけ別パックで頼んどいて良かった!」
ババア達にあれこれ話を振られ、一つ一つバカ丁寧に返答してる狐女に思わず片眉が上がる。
適当に流して飯食えば良いものを、箸止まってんぞ。
「勝己ったら小学校の時は少しお寿司が苦手だったみたいで、お寿司の度に激辛のなんか作れとか騒いでてね。」
「あはは、勝己くんっぽいですね。へぇ、じゃぁ激辛な物が好きなんだ?」
気持ち悪い笑みを浮かべながらこっちを見る狐女を睨む。
他所行きの表情なんだろうが、いざ自分にそれを向けられると虫唾が走るのを感じた。
そういや、こいつ学校でもたまにこういう顔してんな。
……くだらねぇ。
「おい、名前で呼ぶんじゃねぇ。あと黙って飯食ってろ。」
「あ、うん。ごめん……こういう時って、名前で呼んだ方がいいのかと思ったんだけど、ダメだった?」
「あ゙!?」
「勝己!!アンタはすぐ威嚇するんじゃないの!」
「してねぇわ!!!」
いつも通り始まりそうなババアとの言い合いに、オロオロしだすジジイと困り顔の狐女。
その顔を見てなんでか喉元まで出かかった暴言がつっかえ、心の中でクソババアが!!と叫ぶしか無かった。
それから大人しく食事に戻ろうとしたが、ふと隣の皿に視線を向けて思わず舌打ちがこぼれる。
「ちっ……はぁ゙ー。おい、箸よこせ!」
「え?あ、ちょっ……」
さっきから遠慮してんじゃねぇわ。と、狐女の取り皿にポイポイと寿司を適当に並べていく。
いつもより二回り程デカい寿司桶には見栄を張ってるのか知らねえけど、見慣れない寿司がいくつかあった。
仕方ねぇなと思いながら高そうなネタを数貫順に皿に並べてやる。
その流れで自然と溢れそうになる溜息を飲み込み、いくつか見繕い終えると最後に稲荷寿司の入ったパックを狐女の前に持って行く。
「おら!食いやがれ!!」
「っ……あ、りがとう。」
箸を受け取って嬉しそうに稲荷寿司を箸で掴んだのを見て、俺も自分の食事を再開する。
けど、その前に――
「……見てんじゃねぇよ!!!」
前から感じた気色悪い視線に声を荒げておく。
..
「勝己。ちょっと。」
「あ?」
飯が終わって少し経った頃。
そろそろ帰ろうかなとボヤいた狐女を半ば無理やり風呂に押し込み、ソファで一息ついていた時だ。
キッチンでジジイと並んで食事の後片付けをしていたババアが、真剣な声色で俺を呼んだ。
多分、あいつの事だろうな。
元々泊まらせるつもりでいたが、狐女にもババア達にもハッキリそれは言ってなかった。
どう説明して泊らせっかなぁ……。
そんなことを思っていればババアは向かい合うようにソファに座ってきた。
「なまえちゃん。どうしたいか決まるまで、うちに居させなさいよ。」
「…………は?」
何を言われるのか少し身構えたが、予想外の言葉に思わず変な声が出る。
「ごめん。って、アンタに謝ってもって感じだけど、ちょっとだけ話聞いちゃったのよ。」
「っ…………。」
眉を下げ困った様に微笑むババアに、どっからだよ。と問えば、母親の話のところからだという。
俺としたことが、廊下にいた事に気付かなかった。
というか、恐らくこのババアは下心満載で盗み聞きしようとしたんだろうな。
「人の家庭の話に首を突っ込むなんてしたくないけど、今は落ち着ける場所が必要なんじゃない?だから――」
「それはアイツが決める事だろ。」
「えぇ、それはそうよ。だから、選択肢としてなまえちゃんに伝えてあげて。…言っておくけど、これは同情とかじゃないわよ。大人が子供に手を差し伸べるのは当たり前なんだからね。」
「…………わーってるわ。」
ババアは立ち上がると、わしゃわしゃと俺の頭を撫でまわしキッチンへ戻っていった。
こういう時、ムカつくがババアには敵わねえと思うし、こんな面倒事を自分で招いている所は似ちまったのかと思う。
不本意すぎるし、クッッッソ!!ウゼェけどな。
……それにしても、自分の家に他人がいる生活なんて至極面倒だし、ごめんだ。
特にアイツは女だし、クラスメイトだから余計に。
けど、今のあいつにはババアの言う通り落ち着いて考える時間と場所が必要なのかもしれねぇな。
「……はぁー、だりぃ。」
暫くソファで項垂れていれば、ババアが何やらパタパタ動いているのが視界の端に映った。
それから少しして控えめにリビングのドアが開かれた。
「あ、なまえちゃん、服それで大丈夫?」
「は、はい!すみません、お貸しいただいて…その、下着も……」
天井に向けていた視線を声のする方へ向ければ、ババアが偶に来ているワンピースタイプの部屋着を身に纏って、狐女がモジモジと恥ずかしそうに立っていた。
そういや、着替えとかまで考えが回って無かったが、さっきババアがなんかやってたのはそれか。
「いいのよ、ちょうど新品の下着があって良かったわ。」
「なまえちゃん、湯上がりのお茶でも飲むかい?」
「あ、頂きます。」
あれやこれやと狐女に世話を焼く2人を横目に、俺も風呂に入ろうとソファから立ち上がる。
その時、ふと視界に入った狐女の後ろ姿に違和感を感じ思わず後ろまで行って立ち止まる。
「…尻尾。」
「え?」
ぽろっと溢れた独り言に振り返った狐女。
そのまま俺の言葉を反復すると、あぁ!と気付いたように恥ずかしそうに服の裾を握った。
「尻尾が出てると、後ろの服が捲れ上がっちゃって……その、パンツ見えちゃうから、しまったの。」
パンツ?
……服が捲れ上がる?
「……あ゙ぁ゙!?聞いてねえわクソギツネ!!」
脳内で変な想像をしてしまい、ぐわっと顔に熱が溜まるのを感じた。
パコォン!!
「いってぇな、ババア!!」
「アンタは何回言えばわかるのよ!?女の子に乱暴なこと言うんじゃないの!!」
「るっせぇなぁ!俺は風呂だ風呂!!!」
バタン!!とわざとデカい音を立て、俺はリビングを出た。
あ゙ー、アイツがもしうちに暫くいるってなったら俺の神経がすり減る気しかしねぇ。
「クソが……。」