present





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「なまえちゃん、朝ごはんはお米派?パン派?」

「えっ…。あー、いつもお米なのでお米派、ですね。」


半ば強制的にお風呂に入り、光己さん(そう呼んでと言われた)に借りた服を着て、入れ替わりでお風呂に入った爆豪くんが出てくるのをお喋りして待っていた。

学校での生活とか、個性の話とか、休日何してるとか、本当にそういう他愛もない話だ。

しかし意外と爆豪くんは長風呂なのか、時間がドンドン進んでいくものだから話の途中から時計が気になってしかたなかった。

 
もう21時……。


人様のお家にお邪魔するには、少し迷惑な時間だろう。

ご飯までご馳走になって、おまけにお風呂まで借りてしまうなんて流石に図々しい事は理解出来る。


……仕方ない。

爆豪くんには後日お礼を言うとして、今日はお暇させてもらおう。

 
「……あの、私そろそろ帰――。」

「帰ります。」と言おうした時、タイミングよくリビングの扉が開いた。

反射的に振り返れば、タオルを肩にかけラフな格好の爆豪くんがそこには立っていた。

私を一瞥すると、ソファの方へ行こうとするので急いで立ち上がって彼の手を掴む。
 

「爆豪くん。私、そろそろ本当に帰ろうと思って…。」
 

彼にだけ届くような声量でそう伝えれば、少し固まった後にゆっくり振り返り私を見下ろした。

そして何故か大きな溜息を吐かれた。

 
「はぁ゙ー……そこ座れ。」

「え、でも……?」

「いいから座れや!」
 

バッと振り解かれた手。

同時に彼の目がギュインと釣り上げられ、思わず耳と尻尾がビクッと跳ね上がる。

その勢いに私は指示された通り食卓の椅子に戻るが、居心地は良くなかった。

向かい合うように座った爆豪くんはタオルで髪をわしゃわしゃ拭き、私はそれを黙って見ながら彼からの言葉を待った。

お喋りしていた光己さんはいつの間にかキッチンで何か作業を始め、勝さん(こっちもそう呼んでと言われた)は部屋から消えていた。

 
「暫く……うちに居ても、いい。」

「……え?」


先ほどの私よりも小さな声だったが、ちゃんと聞こえた。

でもその言葉の理解が遅れ、反射的に疑問符を返してしまった。


「…今家に帰ったって、どうせまた悲劇のヒロイン思考が始まるだけだろ。俺はさっきしっかり考えろつった。んで……どこで考えるかは、テメェで決めろ。……その選択肢として、うちを入れてもいい。」


考える。考える場所。選択肢。

……どうしよう、ちょっと話をまとめたい。

まず、確かに爆豪くんの言う通りで今は気が紛れているとはいえ家に帰ったら多分マイナスな感情しか出てこない。

だからお兄ちゃん達に会う前に、どうするのが正解なのかを……考えたい。


考えて決めなくちゃいけない。

 
考える場所の選択肢……。

 

――うちを入れてもいい。
 


確かに彼はそう言ったけど、それってつまり……。


「…爆豪くん家に居ていいって事?」

「……。」


あれ、違う?

いや、違うか。

そんな事許可されるわけないし、私なんかのために爆豪くんがそんな面倒事を引き受けるわけない。


……?

でも既に今の状況がかなり面倒事、だよね?

 
「えっと……。」


何も言ってくれない爆豪くんに困っていれば、光己さんが大きな溜息を吐きながら爆豪くんの隣に座った。


バコォン!!


「ひぇっ」

「い゙っってぇなババア!!!何す――」

「あんたって子は、もっと分かりやすく言いなさいよ。…ごめんねなまえちゃん。本当は言うつもりなかったけど、ちょっとだけなまえちゃん達が話しているのを聞いちゃったの……。」


爆豪くんの声を遮り告げられた事に目を見開く。

そっか、光己さん聞いてたんだな……。

別に聞かれて困る事ではないけど、ちょっと申し訳ない気持ちが沸いた。

爆豪くんだけじゃなくて、その家族まで私の家の問題に巻き込んでしまっているのではないかと……。


「正直ね、15の女の子には難しい問題だと思ってる。でも、どうするかは貴方がきちんと考えて答えを出すべきだわ。だから何もしてあげられない私としては、せめて貴方に心静かに考えられる場所と時間を与えてあげたいと思ったの。…当てがないなら、暫くうちにいない?」

「っ……でも、迷惑ですよ。これは私の問題なので、爆豪くんや光己さんを巻き込んでしまうのは……。」

「ううん。迷惑とも巻き込まれてるとも思ってないわ。だって、……目の前で泣きそうな子供がいたら手を差し伸べるのが大人でしょ。」

「っ……」
 

ふわっと頭に乗った暖かくて優しい手が私の頭をそっと撫でた。


あぁ、なんで……。

どうして彼らはこんなに優しい人たちなんだろうか。


 
 
じわっと視界が潤み、思わず俯く。

 
 
「はぁ…テメェはよく泣くな。体の水分どうなっとんだ。」


そう言いながらティッシュを数枚取って私に渡してくれる爆豪くん。

その小さな優しさにすら胸が熱くなる。

 
「っ…ありがと。」


グッとティッシュで目元を拭い、しっかり座り直すと私は光己さんと爆豪くんの顔をしっかり見た。

あぁ、気を抜いたらまたすぐ涙が出ちゃいそう。

そう思いながら、一度深い深呼吸をする。
 

「あの。…ご迷惑をおかけしてしまうかもしれませんが、暫くここに居させてください。」

 
机ギリギリまで勢いよく頭を下げる。
 
当てがないならと言ってくれたが、最初から当てなんかないから、私にはとても有難いお話でしかないし、答えはすぐに出た。

「うん、分かったわ。」と、優しい声色が聞こえゆっくり頭を上げる。

そこにはやっぱり優しい顔をした光己さんがいて、私はホッと胸を撫で下ろした。


「……出来るだけ早く考えをまとめて出ていきますので、それまでお世話になります。」

「はっ、そうしろ。」

 
バコォン!!

 
「アンタはいちいち!!なまえちゃん、いつまでいてもいいのよ?娘ができたみたいで私は嬉しいしね〜!」

「ババアまた叩きやがったな!!!クソが!!!!」

 
 バコォン!!


「あ、あと寝る時は勝己の部屋でいい?こう言う時は一人より誰か一緒のほうがいいわよ。私より勝己の方が頼りになると思うしね。」

「あ゙!?正気かババア!?こいつ女だぞ!?」

「あらやだ、アンタそういうの気にする?でも親が隣の部屋で寝てるんだから、どうせ変な事なんて出来ないでしょう?」

「はっ……はあ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!?ざっけんな!!!!」


――BOOM!!!!


目の前で繰り広げられる取っ組み合いに近い激しい言い合い。

私はやっぱりどうする事も出来なくて苦笑いを浮かべてそれを見ていた。

それから暫く続いた争いは、勝さんの登場で収まると思いきや――…


「なまえちゃん、勝己くんのお部屋にお布団敷いておいたからね。(にこにこ)」

「え、、、。」
 

その一言で更にヒートアップした爆豪家の激しい乱闘。


 
でも、真っ赤な顔の爆豪くんとニヤニヤ顔の光己さん。

その間で困ってるけど笑ってる勝さん。


ずっと見ていると何だか楽しそうで、思わずクスッと笑いがこぼれてしまった。

 

家族って、いいな。




あ、轟くんがお相手のお話なんです……(小声)








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