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05

『お茶子ちゃん、コスチュームのサイズ間違えたの?』

目着替えを済ませた彼女は、ぴったりしたコスチュームが気になるのか生地を引っ張ったりしていた。

「うぅ、要望ちゃんと書けばよかったぁ」

そう恥ずかしそうに笑った。
特に変でもないし、似合っているから問題ないと思うけどなぁ。
そう伝えるも、本人は少し不服らしい。



「なまえさん、そのコスチュームとってもお似合いですわ!」

その声に振り返れり、私はギョッと目を見開いた。
声をかけてきたのは、私と同じ推薦で入学した八百万百ちゃん。


『も、百ちゃん、その露出大丈夫!?』

ちょっとした弾みで胸がこぼれそうなコスチュームに何でか私がドキドキした。

「えぇ、個性の仕様上これが一番なんです。」

『わぁ、なるほど。』

「なまえは、やっぱり着物っぽいんだな」

横で私達のやりとりを聞いていた耳郎ちゃんが私のコスチュームを上から下まで見ていた。
昨日クラスの女の子全員とはテストの合間にお話したけど、彼女は最初の挨拶以来話していなかったので声をかけてくれた事に嬉しくなった。




『ふふ、狐って言ったらこれだよねって兄がデザインを考えてくれたの』

別にジャージでも良かったから、要望に「動きやすいので」とだけ書いて提出しようとしたら兄に用紙を取られた記憶は結構新しい。

膝が見える丈の黒のプリーツキュロットには赤い花の刺繍が施されており、着物を少し改良したような上半身のデザインはドンピシャで、我が兄ながらセンスがいいと思った。

機能も細かく書いた方が良いとの事だったので、とりあえず全部耐熱生地にしてもらった。
黒のショートブーツは走りやすいように柔らかい生地で耐熱生地になっている。



多分、こだわりは何か聞かれたら自分でデザインしてないから生地としか答えられない。





『…それにしても百ちゃん、おっぱい大きいね、サイズいくつ?』


「え!?そ、そんな事、急に恥ずかしいですわ!」



バッと両腕で胸を隠すようにした百ちゃんに、私はだってっと言葉を濁す。
そんな格好で、そのサイズの胸が目の前にあったら気になって仕方ないよ。

男の子達なんか、目のやり場に結構困りそう。


『私も百ちゃんみたいに大きくなりたいなぁ』





「…あんた、その胸でそれは私に喧嘩売ってるよ」


『え?耳郎ちゃん何か言った?』


更衣室の角で耳郎ちゃんが急にぶつぶつ言い始めたので、どうしたの!?って声をかけたが、何でもないの一点ばりだった。

何でかお茶子ちゃんに気にしないであげなよって肩を叩かれたので、私は首を傾げた。




..




訓練の内容は、屋内対人戦闘訓練だった。



2人1組で敵役とヒーロー役に分かれるらしい。
ただ21人クラスなので、1チームだけ3人となる。

2対3だと不利なので、2人チームの誰かが2回参加するという事で、この問題は解決した。

2回戦う人は、紙にチームが二つ書いてあるそうだ。




やだな、2回も戦ったら絶対疲れちゃう。

できれば、一回しかやりたくない。



くじを引く番を待ちながらぼんやり思う。

既にくじを引いた人達は自分と同じチームの人を探して集まり始めていた。




「うお、俺2回だわ!!」


引いた紙を少しドキドキしながら開けようとしたら、すぐ横でその声が聞こえた。


私は心の中でナイスっとグッジョブを送る。
まぁ、2回できるのは嬉しいけどな。っと赤髪君とと話す彼は、確か昨日話しかけてきた…

上鳴電気くんだっけ。

個性が帯電で、その見た目通り口調も性格も少しチャラめな男の子。


2回できるのが嬉しいなんて、流石ヒーロー志望。




ガサ


『ん、Iチームか…』



「なまえちゃん!一緒一緒!!」

ガバっと急に締め付けられる体に、反射的に肩が飛び跳ねた。

ポヨンっと背にあたるそれに、あ、柔らかい。っと思いつつお腹に回された腕を見る。



けど腕は、見えない。

水色の手袋だけ見える。






『葉隠ちゃん、Iチーム?』


ぎゅうぎゅうと抱きついてくるのは透明化個性の葉隠ちゃん。
こんな激しいスキンシップをさりげなく熟すのは、彼女の性格故なのだろう。

動けないから顔だけ少し振り返ってみる。が、やっぱり何も見えない。



「うん!尾白くんも一緒だから、うちのチームは尻尾チームだね!!」


おじろくん。

誰だ。


尻尾チームって事で思い浮かぶのは、私と同じく尻尾の生えた男の子だけど。


というか、3人チームなんだ。

人が多い方が、安心感は強いし、葉隠ちゃんも一緒だから良かった。





「狐森さん、よろしくな。」



優しい顔をした道着コスチュームの男の子が近づいてきて、私に手を差し出してきた。

やっぱり、思い浮かべていた人だった。


『尾白くん、よろしくね。尻尾仲間がいるのって結構嬉しい』

差し出された手をしっかり握れば、それは私の手なんかより凄く大きくて、頼もしく感じた。

「わかるわかる!私ももふもふに囲まれて嬉しいよ〜!!」


私の尻尾をフサフサと触っている彼女に、尾白くんと顔を見合わせてふふっと笑う。


それにしても、尾白くんの尻尾すごいなぁ。
ムッキムキって感じで、私の尻尾とは全然見た目も違う。


まぁ、私のは狐の尻尾だから当たり前か。







そうして始まった屋内対人戦闘訓練。
自分の番じゃない人は、モニタールームで他のチームの訓練を見る事ができて、勝負が着いたらすぐに皆の前で講評があるみたいだ。


私はモニター越しに見える設備に少し感心する。


訓練場の大掛かりな設備もそうだけど、このモニタールーム…

かなりお金かかってるんだろうなぁ。





『あれ、そういえば対戦相手どこだっけ?全然聞いてなかったや』

「え!?あそこだよ!Bチーム!」


葉隠ちゃんの人差し指が向く先に目を向ける。


思わず小さくあっと声を漏らす。

視界に入ったのは、赤と白の少年。

真剣にモニターを見ているその横顔に、昨日呼び止められたことを思いだした。


いけない、放課後彼と約束してる事、和美さんに言い忘れてた。

というか今のいままで忘れてた。


「轟は推薦組みだから手強いだろうけど、こっちにも推薦組みの狐森がいるから良い勝負が出来そうだな」

『え、彼 とどろきって言うの??』

「えぇ、狐森さん、名前知らなかったのか?」


そうか。

“とどろき”って言うのか彼。

中学に時の記憶を漁るが、彼の名前と顔はやっぱり出て来ない。
他人に興味なかったし、仕方ないけど。
特長的だからな少しくらい覚えててもおかしく無い気がしたけど...。


まぁ、彼の名前を知れただけでも十分かな。

再び轟くんの方へ顔を向ける。


「……。」


一瞬こちらを見ていたように感じたその瞳は、相変わらずモニターを映していた。



「2人とも次私たちだよ!いこいこ!!」




『あ、うん』




そしてやっと回ってきた私たちの番。


ギュッとブーツの紐を固く結び直し、訓練場に向かった。


『2人とも頑張ろうね!』









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