present




12 一緒に




「お前、俺がお前の事を性欲処理相手だって、いつから思ってたんだァ?」

『え?』

熱い熱い情事が終了し、2人でぐったりとベッドで横になっていたら急に実弥さんがそんな事を聞いてきた。
さっきキッチンで言った事、気にしてるのかな。

『んー、何ていうんだろう。初めてした時に、この人は私の事をそういう風にしか思ってないんだろうなーって...それが始まりかな?』

「あ?初めっからかァ。…ていうか性欲処理する程シてねえだろうがァ…」

『...そうだけどさ、男って...その、エッチな事ばっかり考えてるでしょ...?』

少し目蓋を伏せ、そう言えば深いため息が帰ってきた。

「お前、変な男にばっかり引っかかってたんだなァ…」

その言葉と共に、彼は私の頭をぽんっと手を乗せ、そのままスルリと髪を掬って指先で遊び始めた。
私は昔付き合ってた男を数人思い出す。

実弥さんの言う”変な男”かは分からないが、大体は会う度に必ずエッチしたっけなぁ。


“愛の感じない、気持ちいだけのセックス”


少しだけ心がざわついた。
皆良い人だったよ。
優しい人ばっかりだったし、ただ上手く気持ちが絡み合わなかっただけ。

私は向かい合って居た実弥さんの胸にそっと寄り添う。

『…どうかしたかァ?』

髪で遊ぶのを止め、私の頭を優しく撫でるその手に酷く安心した。
もう夜も遅い。
そろそろ寝ようかな。

なんて思いつつも、私はピロートークというやつを終わりにしたくなかった。


『......ね、実誠さんって、私の事好き?』

「...急になんだァ」

少しダルそうな声が聞こえてきた。
面倒な質問なのは百も承知だし、私はこの質問が嫌いだ。


[もちろん好きだよ。]
[愛してるよ。]
[好きじゃなきゃ一緒にいないよ。]

そんな言葉を沢山並べられてきた。
愛のない事なんて分かってるくせに、聞く私も馬鹿だよね。
いつだか期待するから傷付くんだよって、誰かに言われたっけ。


でも...。


実弥さんは違うって、どこかで私は期待しているのだ。
私の欲しいって思える言葉をくれるんじゃないかって...。


「俺は......」


あぁ、胸がざわつく。
この先を本当に聞いていいのだろうか。
少しだけ怖い。


実弥さんは少し考えた後に、自身の頬をポリポリと掻いて、泳いでいた視線を私と合わせた。








「…悪ィ。正直、好きだが、この好きは恋愛的なものなのかハッキリ言えねえ」








『…ぇ?』


一瞬耳を疑った。
目蓋をパチパチさせていると彼は続けた。

「…俺はお前と違って恋愛経験とか豊富じゃねェし、今まで…俺がこんな気持ちを抱くのはお前が初めてだからなァ。けど、この気持ちってやつを言葉で言うなら恋愛的な意味での好きが一番合ってるんじゃねえかァ?」


『いや、私に聞かれても...』


それと、そんな優しい顔で笑わないでよ。
私、今どういう顔して貴方を見ているの?
自分じゃ分からないけど、多分変な顔してると思う。


『その、さ。…この気持ちって、例えばどんな気持ち?』

「あー、そうだなァ。………授業中に体調悪くなったやつが保健室いく時に付き添ったらお前に会えるのかって考えたり、冨岡と泊まり込みが被った日に冨岡じゃなくてお前だったらって考えたり、どういう口実で保健室に行こうか考えたり、休日は何してんだァって考えたり、帰る時間被らねえかなァって考えたり、後は…」

『ま、待って、待って、もう大丈夫、大丈夫だからストップ』

片手を彼の顔の前で広げる。
この人、私の反応を面白がって態とこんな事言ってるんだ。
その証拠に彼はクツクツと喉を鳴らし笑っている。


「悪ィ、揶揄った。けどなァ、割と全部本当だ。気付けばお前の事ばっかり考えちまってる。...お前の事、全部知りてえって、こう思うのは恋愛の好きって気持ちかァ?」

優しいその声と、頭を撫でる優しい手の動き。
私はもう十分だった。

彼からのその言葉が欲しい物だったのかは分からない。
色んな人と付き合ってきたけど、私は恋愛経験豊富とは言えない。

ちゃんと好きになった事がないから。

だから私も一緒だ。

実弥さんに向けるこの気持ちが恋愛的な好きなのか分からない。
けど、そうだったら良いなっていうのが本心なのかもしれない。


だから、


『...実弥さん、これから...一緒に...好きになって、いこ。』

「...あァ」

『…好きって、難しい...ね』

「…そうだなァ」


あぁ、もう目蓋が重い。
頭を撫でる彼に手が時折私の欠伸で出た涙を優しく拭う。

「...なまえ、また明日なァ」

そんなこと言わないで。
まだお話ししていたいのに。


それに、目が覚めてこれが夢だったらどうしよう。

小さな不安を掻き消すように、無意識に体全体をピッタリと彼に寄せる。
背に回された彼の腕が力強く私を抱きしめる。



「何処にも行かねえェよ」


チュッと可愛いリップ音と共に額に小さな熱を感じたのを最後に、私は夢の中へと潜った。

実弥さんの最後の言葉に返事をしたのかしてないのかは覚えてない。
けど、何か自分の口から発した気がした。


また明日ね。




ここで1章完結いたします。
次回から2章(日常編)に行く予定です。
12話の続きの後日談、朝からエチエチするお話は番外編にでも書こうかと思います〜!
ちょっとだけ男にだらしない主人公って良いよね笑
実弥さんが素敵な愛を教えてくれる妄想が止まらない。
2章もよろしくお願いします!







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