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08




影山Side

下駄箱で凪とちょっとした事件があった日から数日が経った。

俺は相変わらず朝も放課後もバレー三昧だった。
それでも、一応毎日凪とは話が出来ている。



- 影山回想 -

「は...はょ、今日朝飯食ったか?」
「......ぁ、まあね」

「よ、よぉ。お前、もうバレーやらないのか?」
「......まぁ」

「なぁ、とりあえずどっか部活入るだろ?どこ入るんだ?」
「......未定。」

- 回想終了 -


ん…
ちょっと待てよ。
思い返してみれば素っ気ないし、これじゃぁ俺が一方的に話しかけてるだけか…?


俺は気付いてしまったショックで思わず買ったばかりのぐんぐんヨーグルを下に落とした。



「クソ....」


一方的に話しかけてるんじゃ会話になってねぇよな。
やっぱりこの前の下駄箱のこと怒ってるのか...?
そりゃ、俺だって無意識だったとはいえ付き合ってもないのにあんな…



「っ.....」


ガシガシと思い出した事をかき消す様に後頭部を掻く。

もう少しで昼休みも終わる、さっさと教室へ戻ろう。
そう落としたぐんぐんヨーグルに手を伸ばした時だった。





「お、俺入学式の時からずっと、、、ずっといいなぁって思ってて!良かったら俺と、付き合ってください!!」



元気な声が後ろから聞こえてきた。
高校入って初めて目撃する告白現場だった。
俺は思わず自販機の陰に隠れて、こっそり覗いてみた。


男は見た感じ1年っぽいけど、女側の顔が見えねえ。
まだ入学したばっかりだぞ?
早くねえか?


俺は他人の色恋沙汰なんて興味がない。
勝手にやっててくれっとその場を離れようとしたが、次に聞こえてきた声に思わず足が止まった。


「えっと、あの、、ありがとう凄く嬉しい」



「ぇ、じゃ、じゃあ!」

「でもごめんなさい。まだ入学したばかりで、恋人とか作るつもりまだないの。だから、今は諦めて?」



...なんて含みのある悪い言い方なんだろうか。

俺の想い人でありながら、そう思ってしまった。
悪女というか、これがモテる女の余裕というやつなのだろうか。


「じゃあまた、及川さんがその気になったくらいに告白しにくる!」

「ふふ、ありがとう」


男が立ち去り、見えなくなるまでそう愛らしい笑顔で手を振る彼女に俺はつい見惚れてしまった。
それと同時に凪が告白を断ったことに安堵した。



取り敢えず何も見なかったことにするかっと教室に踵を翻した時、クイっと後ろに少し引っ張られた。
自然と後ろを振り向けば、さっきまで告白を受けていた張本人が俺の制服の裾を掴んでいた。



「...バレー以外に趣味ないのかなって思ってたけど、まさか覗きが趣味だったの?」


にっこり笑う顔は目が全く笑っていなくて、俺は思わず吃ってしまった。

「わ、悪い......これが、この自販機しかなくて、それで...」


凪は俺の手に収まっている紙パックをチラ見した。


「......ぐんぐんヨーグルか。本当、中学の時もずっと飲んでたよね。......隙あり!」


凪は俺の手から抜き取ったぐんぐんヨーグルを片手に数歩先へステップを踏んで遠ざかった。


「っ...おまっ」

「いーじゃん、覗き見したお詫びに頂戴?」


にまっと意地悪そうに笑った顔に一瞬呼吸が止まった。

もう教室戻るよ〜っと言いながら紙パックにストローを通そうとしていた。
そこで俺はあることに気づいた。


「...なぁ、何で俺が話しかける時はちゃんと話してくれねぇんだよ」


俺の質問に首を傾げながらチューっとぐんぐんヨーグルを飲む姿は小動物みたいで可愛いかった。
少し考える素振りをした後に、あぁ〜っと怪訝そうな顔をして俺をジトっと睨んできた。


「あんた、いつも私が誰かと話してる時とか周りに人が沢山いる時に一方的な質問投げて来てたでしょ。あれのせいで影山が私に猛アタックしてるって変な噂流れ始めてるんだから、まじでタイミング気をつけた方がいいよ!これでも気使ってるんだからね?」


いつぞやのビシっと指を向けられる動き。
俺はなるほどな。と出来るだけ頭ですぐ理解した。


凪は優しいから、俺に変な噂が流れない様に敢えてそっけない態度を決め込んでいるんだ。

けど...


「俺はお前となら噂、別に嬉しいぞ。猛アタックしてるかは置いといて、俺は必ず凪とまた恋人になりてぇって思ってるから、あながち間違いじゃねえよ!」


「ちょ、影山声でかっ...」



「えー、なになに告白?」
「1年かな?青春してる〜!」
「あれ、男の方って確かバレー部のやつだろ?俺たまに朝練で見かけるべ」


斜め上の方から廊下で屯していた先輩達がこちらを見ていた。
思ったより俺の声がデカくて響いたみたいだった。
野次馬が、めんどくせぇなと思っていたらグイッと腕を引かれた。



「...悪い、怒ったか?」

「っ...別に!恥ずかしかっただけだし!!」



前を歩く凪の頬はチラッと見えたが、赤くなっている事に俺は気付かなかった。
暫くしてすぐ凪は俺の腕をパッと離し、特に何も言わずにパタパタと1人教室の方へ走っていってしまった。

呆然と立ち尽くす俺に、早く教室に入れよっと急かす様に昼休み終了のチャイムが鳴った。










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