present



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>及川Side

「あ、岩ちゃんおかえり〜」


ちょうど片付けが終わりそうな頃、岩ちゃんは戻ってきた。


「あぁ、悪いな任せっきりで。」

「んー?俺も何もやってないから、お礼ならアイツらにあとで言いなよ。」


せっせと自分の荷物を纏めている岩ちゃん。

その横顔はどこかスッキリしていた。



けどーー。

俺はそれが少し不愉快だった。




「...岩ちゃん。今回だけは許すけど、凪とハグするなんて一億年早いんだからね。」



含みのある笑みを送れば、岩ちゃんがピタッと手を止めて鬼の形相で俺に詰め寄ってきた。


「おいクソ及川ボゲェ。てめぇ、いつから見てやがった!?」


顔を真っ赤にして、本当に赤鬼みたいだ。



.



少し時間を遡る事にしよう。

岩ちゃんがバタバタと凪を追って体育館を出て行ったあと、烏野のメンバーは荷物を片付けていた。

俺はジャージの上着を着て、先に校門まで先回りする事にした。


外に出たら、もう夕方から夜になるところだった。

時間的に学校にいる生徒はもう少なく、そんな中、見知った格好の男が見知ったジャージ姿の女子の腕を引いて歩いているのが見えた。

「ふむ..無事に捕まっちゃったのね。」

本来であれば、俺が彼女の手を引いてあげたかった。

けど、それが出来ない事は百も承知だった。


だから...頼むよ、岩ちゃん。

そうひっそり応援しながら、俺は飛雄ちゃんを待ち伏せするため校門へ向かった。



.



「俺はこの、クソ可愛い後輩を公式戦で同じセッターとして正々堂々叩き潰したいんだからさ!」

ビシッと飛雄ちゃんに指を向ける。

完全に決まった。

我ながらいい宣戦布告だ。



「あ!それから飛雄ちゃん。....凪と付き合ってたって話は、また今度ゆっくり、聞かせてよね」


飛雄ちゃんにこそっと耳打ちすると、あからさまに嫌な顔をされた。


俺は言いたい事を言い残し、すっきりした気持ちで校門に背を向けた。

おチビちゃんが飛雄ちゃんの代わりにガヤガヤ言ってるけど、これからの烏野にはちょっと期待しているんだ。


岩ちゃんが凪にどう声をかけてくれたか分からないけど、もし凪が烏野バレー部に入ったら、圧倒的成長に繋がるだろう。

凪のおかげで強くなる烏野を公式戦でボコボコにして、クソ雑魚なんかに凪は渡さん!


なんて、飛雄ちゃんに向かって言ってやりたい〜!



妄想しながら1人心を踊らせた。

これは思わずにやけずにはいられなかった。


それから体育館に戻る前に、岩ちゃんと凪が気になった。

確かこっちにきてたはず...。

2人が消えて行った第三体育館裏。

俺はそろりと近づき、バレないように覗き込んだ。



「っ!?」



まさかまさか。

自分の目を疑った。

頼んだぞとは思ったけど、俺は抱きしめて良いなんて言ってないぞ!


大事な妹が、信頼している岩ちゃんにあんな、泣きながら縋って...。


「.......。」


ふと。

凪の泣き顔を見たのは、いつが最後だったか考えた。


この前玄関の前でバッタリあった時か。

いや、あれは俺がいう泣き顔とは少し違う。



俺の位置からじゃ、凪の顔は全く見えない。

けど、肩を震わせ、あぁやって胸に頭をグリグリ押し付けるのは泣いてる時の凪の癖だ。

小さい頃は俺が岩ちゃんのポジションだったのに。



なんだか複雑な気持ちになってきた。



このまま覗き見しても良いけど、もし岩ちゃんが凪にチュッチュし始めたらそれこそキツい。


まぁーー。

ないだろうけど...。



「....〜〜〜っ」



見たい。

見たくない。

見たい!

見たくない!

見たい!!

見たくなーい!!



.



「って、葛藤してたんだよね」

「結局どっちだボゲェ!!」

「はは、どっちだろうね〜!」


そう岩ちゃんと鬼ごっこをしていると、入り口の方で監督が招集する声が聞こえた。

俺は近くにあった自分の荷物を手に、岩ちゃんから逃げた。


「待てゴルァ!!」


赤鬼岩ちゃんはまだ自分の片付け途中だからか、すぐには追って来なかった。

ミーティング中は、岩ちゃんから少し離れた所で参加していたが、ずっとこっちを鬼の形相で睨んできた。

終わったら爆速で帰ろう。

捕まったらボコボコにされるな。



まぁ、でもほんと。

上手く事が運んでくれたら良いんだけどなぁ。



.




「ハァ..ハァ...たっだいま...ハァ...」

俺は予定通りミーティングが終わって爆速で帰宅した。

岩ちゃんは俺を逃さまいと追いかけて来ようとしたけど、監督に呼ばれていて足止めを喰らっていた。



ほんとナイスタイミング!

でも怖いから久しぶりに全速力で家まで走った。


玄関に座り込んで、乱れた息を整える。

今日はいつもより凄い疲れた。


靴も脱がず、座り込んでいると、後ろからガチャっと扉の開く音がした。


振り向けば、首からタオルを掛け、オーバーTシャツに短パンというちょっとエッチな格好をした妹が立っていた。



バチバチっと重なった視線。


俺は思わず息を呑んだ。

というか、お兄ちゃんとはいえ、男がいる家でそんな格好はどうなんだ妹よ。



「...ただいま。」


言いたい事が色々あったけど、取り敢えず俺はそう言ってみた。

ピクッと凪が反応する。



凪とはよく玄関で遭遇するな。


なんて呑気な事を思っていると、凪が口を開いた。


「...お、おきゃっ....おかえり!」

カッと顔を赤くした妹はそのままダッシュで階段を駆け上って行った。


俺は1人残され、ポカンと口が空いてしまった。

すぐさま状況を理解する。


凪と口を聞いたのは久しぶりの事で、嬉しさにあまり感動の涙が込み上げてきた。


というか、今絶対噛んだよね?

なにあれ、可愛すぎる!!


「うぁ〜、今のグッときた」


凪の中で何か気持ちの変化があったんだ。

何がきっかけかは分からないけど、とりあえず後で岩ちゃんに電話しよ。


ニヤける顔を両手で覆い、1人で悶えていると、リビングからお母ちゃんが出てきた。

「あんた何やってんの?」

「はあ〜!俺の妹可愛すぎ!!」

「うるさっ...玄関で騒ぐんじゃない!」




プチ小話

-烏野と試合で負けた翌日の話-

「あ、岩ちゃんおっは〜!なんで昨日俺の電話無視したわけ?話したい事いっぱいあったのに!」

「クソ及川、おめぇの逃げ足が早い事は認めてやるけどなぁ...誰があんな事の後で電話なんか!出るわけねえべ!?」

「え〜、何それ、、電話は出んわって..?岩ちゃんちょっと寒いか「ぶっ飛ばす!!」」







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