>影山Side
「「お疲れ様でしたー!!!」」
あれから普通に部活が終わり、俺は早々に着替えを済まして校門へ向かった。
凪は終了後に先輩たちに軽く謝罪していたが、皆マネージャーになる事を真剣に検討してほしいとの事だった。
凪は少し困った様に笑っていたが、その笑顔の奥にある本心が気になった。
少しすると着替えを済ました凪が校門にやってきた。
「...お疲れ。」
「はぁ...ほんと疲れた。あと鞄返して。」
俺に会うなり、そう手を差し出してきた。
俺は手にしていた軽いスクールバッグを渡し、帰路に着き始めた凪の横並んだ。
「......。」
「......。」
何と無くだけど、すっげぇ気不味い。
何だこれ。
どちらも何も話さない沈黙の時間が少し続いた。
俺はそれに耐えられなくなって、思わず口を開いた。
「あー、今日の見学、どうだった?」
チラッとこちらに視線を一瞬寄越した凪だったが、すぐにその視線は前に戻り、少ししてから返答が返ってきた。
「...総合して言うとまあまあ。月島くんの事に関してはマジで最悪だった。絶対にあんなやつ恋人にしたくない。見た目が良いからって何言っても良いって思ってるのかもね、あぁいうねちっこい感じのイケメンは一番嫌い。何より練習すれば上手くなる才能を持っているのに、自分で押さえ込んで本気でやろうとしない、、、あんなやつ大嫌いよ。」
「お、おう...」
いつもの数倍口を動かす凪に、思わず地雷だったか?と思ってしまう。
「...でも、今日久しぶりにサーブ打てて、すっごい気持ち良かった。多分あれ取られたら悔しすぎて泣いてたかも。」
なんてねっと笑う凪に心臓が飛び出そうになった。
「あ、じゃあ私こっちだから...」
気付いたら見知った場所について、一瞬息を飲んだ。
ここは中学の時、凪と一緒に帰ってる時の分かれ道だ。
凪は左。俺は右。
卒業したあと、何度もここで分かれていた事を後悔していたのを思い出す。
もう、あんなのはごめんだ。
そそくさ左へ歩き出す凪の手を取り、俺も同じ方向へ足を進めた。
「...うち、少し歩くよ?」
何かを察したのか、凪はそう言ってきた。
俺は一言「平気だ。」と返した。
それからというもの、何となく繋いだ手を離すタイミングを無くしてしまい、2人無言のまま手を繋いで歩いていた。
先ほどの沈黙とは違いどこか居心地の良さを感じた。
「...影山、うちの方くるの初めてだよね?」
「あ?あぁ。......これからは、一緒に帰る時は家まで送って行く。」
凪驚いた顔でこちらを見た。
「...ありがと」
そう小さく呟かれた言葉に、俺はキュッと手を握り返して返事をした。
それからは特に会話も無く、2人の足音だけが鳴っていた。
.
ある一軒家の前で凪が足を止めた。
表札にはお洒落に「Oikawa」と書いてあった。
「影山。思うところは色々あるけど....今日、連れてってくれて有難う。正直な気持ち、楽しかった。」
そう笑いながら繋いでいた手を離した彼女に、俺は手を伸ばしていた。
そのまま引き寄せれば、ふわっと凪の髪が俺の鼻を掠めた。
ちょっと運動したのにこれっぽっちも汗の匂いがなくて、女らしい少し甘い匂いに心臓はドクドクと鼓動を早める。
「か、影山...っ」
恥ずかしいっと俺の胸をグッと押し返す凪。
俺は絶対に離したくなくて、背中に回した腕に少し力を込めた。
「...好きだ。」
「っ......」
「...やっぱり、お前から同じ言葉が聞けるまで、俺は何度でもお前に伝えるからな。」
「か、げやま...」
顔を真っ赤にして潤んだ瞳で俺を見上げる凪。
俺はその瞳に惹かれる様にそっと顔を近づけた。
今日はちょっと我慢できそうに無い。
「...凪、今だけ、許してくれ」
それは唇同士が少し触れるだけの優しいキス。
聞こえるか聞こえないかぐらいで鳴ったリップの音が馬鹿みたいに脳内に響いて反響した。
頭から湯気が出そうなくらい真っ赤になった凪の顔を見て、俺はフッと笑みが溢れた。
俺も今、きっと凪と同じくらい真っ赤な顔をしてるんだろうな。
そう思うと笑わずにはいられなかった。
「じゃあな。」
そう言い残し、俺は来た道を戻った。