present



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「はぁ〜凪は髪結んでると色気出て可愛過ぎるよ」

「も〜、褒めても何も出ないよ」

放課後になり、突然のんちゃんがそんなことを言い出した。
いや、突然ではないか。
朝会った時からずっとこんな感じの事を言ってくる。

確かに髪をしっかり結んだのは久しぶりかもしれない。
体育の時は適当に結んで、終わったら解いてるから珍しいのは確かだね。


「じゃ、のんちゃんまた明日ね!」

「へへ、その呼び名慣れないなぁ...部活がんばってね!」

へにゃりと笑う彼女に手を振り教室を出る。

のんちゃん。凪。
いつまでも望ちゃんと凪ちゃん呼びはよそよそしいので、今日からお互いラフな呼び方にする様に朝話した。

確かに言い慣れないし、ちょっとこそばゆい感じがしたけど、仲良しって感じで正直嬉しい。

自然と上がる口角をそのままに、私は更衣室へ向かった。


「あ、潔子さん!」

更衣室の前ですでに着替えを済ませた潔子さんを見つけた。
私は小走りで駆け寄る。

「凪ちゃん。ちょうど良かった、これ。」

「え?」

真っ黒なそれを受け取り、何かと広げる。

“烏野高校 排球部”

背に描かれた文字に、私は目を見開いた。

「こ、これ!いいんですか!」

「だって、もうバレー部の一員でしょ?」

そう笑う彼女の顔に思わずドキッとする。
美人の笑顔、強烈です。

「今そのサイズしかなくて、合わなかったら言ってね。それで、着替えたら体育館横の水道きてくれる?先にドリンク作業やるから。」

「分かりました!」

潔子さんの後ろ姿を見送り、私は更衣室へ入った。


「真っ黒だなぁ〜、カラスだから?」

貰ったジャージを改めて見ると、文字以外本当に真っ黒で思わず1人で笑ってしまった。

スルッと袖を通せば、結構軽くて動きやすい。
まぁ、でも普通にジャージだな。と思う。
サイズは少し大きいぐらいだけど、捲って仕舞えば問題はなさそう。

一応持ってきといたバレーパンツとサポーターを装着して、その上から長ジャージは履いといた。

着替え終わり、鏡の前に立つ。
普段真っ黒なジャージなんか着ないから、自分の姿に見慣れなくて新鮮さを感じた。

「よし。......行こう。」

キュッと髪ゴムを締め直し、私は潔子さんの元へ向かった。


.


「「お疲れ様でしたー!」」

忙しなく動き回っていたら、あっけなく部活が終了した。
先週よりは割と効率よく動けたと思ったが、まだまだの様でそれなりに疲れた。

「凪ー!!!!サーブ!!打ってくれー!!!」

皆にタオルを配っていれば、日向が目を輝かせてやってきた。
部活は終了したが、これからは自主練習タイム。
日向は今日1日この時間を楽しみにしていたのが伺える。

「はいはい。仕方ないなぁ、ちょっと待ってて。」

そう言いながら私は真っ黒なジャージを脱ぐ。


「お、おぉ!?めっちゃやる気じゃん!!」

「え?そりゃぁ、やるからにはガチに決まってるじゃん」

袖が短めなTシャツにバレーパンツ、サポーターという身軽な装備に酷く懐かしさを感じた。

「ちょっとアップしたいから、付き合っ「凪!!」..ぇ?」


怒号に近い声で後ろから呼ばれ、驚いて振り返る。
同時にバサっと脱いだばかりのジャージが肩に掛けられ、何事かと思っていれば目の前に怖い顔をした影山が立っていた。

「え、な、何?」

「何じゃねぇ、その格好は...だ、だめだ。」

「え?なんで?」

普通にバレー部みたいな格好だと思うんだけど...。
そう思いながら、影山の後ろは何やら騒がしく、ヒョイっと顔を覗かせる。

「俺、もう死んでもいいかも。」

「ノヤっさん...俺も同じ気持ちだぜ。」

西谷さんと田中さんが鼻血を垂らしながら横たわっていた。
2人を囲む様に数人がケラケラ笑っているけど、どういう状況?

よく分からず顔を顰めれば、影山がジャージのチャックを閉め始めた。

「え、ちょっと何で?」

「......いいから。」

ジーッと上がるチャックに、袖に通していなかった腕を急いで通す。
そこでやっと気付くが、これ私のじゃない。

サイズが明らかに大きい。
下なんてバレーパンツまですっぽり隠れてしまった。

「これ影山の?」

「あぁ。......いや、ちょっと待て。これもこれで良くなさすぎる。」

ブツブツとずーっと怖い顔をして何かを言っている影山。
私はチラッと横にいる日向に助けを求めた。

「まぁ、なんていうか、目のやり場には困るよな」

「え、あぁ...んー....そういう事?」

普通にバレーする格好のつもりだったけど、どうやら露出が多かった様で...。
西谷さんと田中さんがあぁなってるのは私のせいか。と日向のおかげで理解する。

でも...。

「これじゃぁ本気出しにくいんだけどなぁ...」

その小さな呟きを逃さなかったのは、意地悪な彼だった。

「それ、嫌味?僕の時は本気じゃなかったって事?」

月島蛍。

彼と勝負したのは割と新しい記憶。
確かにあの時は学校指定のフルジャージ装備だったっけ。


「あれはあれで本気だったけど?」

「ならそんな露出たっぷりな格好じゃなくていいじゃん。それとも何?ここの男達にそういう色目使ってる感じ?」

「......月島くんってさぁ、何で態々そういう意地悪な事ばっかり言うの?言ってないと死んじゃうの?」

月島くんの挑発には正直もう慣れた。
こういう人なんだなって理解したけど、それでも言い返してしまう私は割と子供なんだと毎度思う。

「別に。思った事を言ってるまでだよ。」

「そっかぁ。なんか可哀想な性格だよね。」

そう言い返せば、ふんっと鼻を鳴らして彼と、その後ろにいた山口くんは体育館を出ていった。
以前の勝負で勝った見返りにを月島くんにはその内返してもらおうと思っている。


でも今じゃない。
この【何でも券】はいざという時に取っておこう。


そう思いながら誰もいなくなった体育館のドアを見つめていると、ずいっと目の前に長ジャージを渡された。

「これも履け。」

「ムッ...皆が見なきゃいいじゃない!絶対に脱いでやる!」

目のやり場に困るなんてふざけるなと思ってしまった。

「バレーやってる女子なんてこんなもんだし、そういう目で見る方が悪い!」

そう私の声が体育館に響き、影山は面食らった顔をした。
後ろの方で先輩達も口を半開きにこちらを見ていた。

「まぁ..うちの女子バレー部だと思えば確かにそうなんだが...」

「凪が思ったよりも着痩せするタイプだった事が問題だべ」

澤村さんと菅原さんが2人でウンウン頷いている。
確かに、よく着痩せするタイプって言われるけど、実際そんな脱いでも変わらないんだけどな...。

影山だけでなく、先輩達も脱ぐ事に反対っぽい空気だったので、私は渋々影山から長ジャージを受け取った。
多数決というのは、何事にも従うべきか...。

「......履く。」

「あぁ。絶対にそうして欲しい。」

どこか安心した表情の影山。
私は小さく溜息をつきながら長ジャージを履いた。

これで結局全身フルジャージ。
脱ぐ前と変わった事と言えば上のジャージがブカブカになった事。

「これ、自分の着るからいいよ。」

そう脱ごうとチャックに手を添えれば、その腕を掴まれる。

「それは、俺のでいい。」

「っ...もう!なんなのよ!注文が多いなぁ!!」

キーっと影山に文句を言えば大きな手が私の頭に乗る。
まるで駄々をこねる子供をあやす様にその手は私の頭を優しく撫でた。

「っ...今日だけだからね。」

「あぁ。」

その後は、日向が声をかけるまで私と影山の空間は少しだけ甘い空気が流れた。

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「おぅおぅ、アオハルかよ。羨ましいなゴルァ」

「五月蝿いぞ田中」









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