present



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チャポンと、水滴が嫌に響く大浴場。
まぁ大浴場と言っても、シャワー場が5個と少し大きな風呂釜がある程度だ。

他の部活も使ったりするのか、割と綺麗に整備されており、想像していた様な古い風呂場ではなく安心した。
けど、内心ビクビクしているので目を閉じて髪を洗ったりは出来なかった。

高校生にもなって何となく情けなく思えた。


暖かい湯船に入って数分。
気持ちを落ち着かせる中、ふと脱衣所で待たせている影山がちゃんといるのか心配になってきた。


「か...影山、いる?」

「...いるぞ。」

「ん、ありがとう。」


磨りガラスのドア向こうから聞こえた彼の声に心底安心する。

この後は部屋に戻ってドライヤーして、すぐ寝よう。
いつも1人で寝てるとはいえ、ここは思った以上に精神が削られる...。

正直なところ私も大部屋に混ぜて欲しいぐらいに...。



「凪、大丈夫か?」

「っ...だ、大丈夫!もう出るから、後ろ向いててね!!」

「...あぁ。」

ザバっと湯船から上がり、軽くシャワーで体を流して風呂場を出る。





脱衣所への扉をカラカラと開ければ、入口の方を向いて立っている影山の後ろ姿があった。

一応バスタオルは巻いて出たけど、なんだか恥ずかしい。

ヒタっと私の足音に、一瞬影山の肩が跳ねたのが視界の端で見え、同時に私も歩みを止める。


「ぜ、絶対見ちゃダメだからね!」

「っ...分かってるから、早くしろ」


後ろから見える彼の耳は真っ赤で、こういう状況だし仕方ないとは言え、申し訳ない気持ちになった。


いそいそと体に残った水滴を拭き、パパッと着替える。





「影山。もういいよ、有難う。」


そう呼びかければ、視線を私に向けないままこちらに振り返った影山。
何となく視線をどうしようか迷っている感じだったけど、私は気にせず荷物を片付ける。


髪の毛が濡れているので、とりあえず上の方でまとめてこのまま部屋に戻るか。

持参してきたヘアバンドを装着し、くるくるっと水気を帯びている髪を頭の上で適当なお団子にする。
そういえばヘアミルク持ってきたっけ?

パックは絶対に入れたはずだから...えーっと..
まぁミルクがなかったら最悪オイルでいいか。



「よし、影山おまたせ..て、どしたの?」


全然気づかなかったが、入口の方にいる影山に目を向ければ、壁に頭を預けて棒立ちになっていた。


「え??」


どう言う状況なのか訳が分からず、とりあえず近づいて見れば目を閉じて口をムッとしていた。
もう一度声をかけ、横からその頬をツンっと突いてみる。

あ、意外とプニっとしてる。



「っ...」


チラッと視線だけコチラに向けたと思えば、ツンとした指をガシリと掴まれる。
その顔はまさに茹蛸で、私はすぐさま「なぜこうなっているのか」思考を回転させた。

けど、答えがすぐ出なかった。

どこで彼のそういうスイッチを入れてしまったのだろうか。
お兄ちゃんに言われて部屋着として持ってきた着替えはくるぶしまであるスウェットだし、Tシャツは大きめのだけど別に普通だし問題ないだろう。

つまり服装ではないと思う。
あ、勿論下着もつけてる。


あとは....?



「んー...かげや、んん!?」

私がそうこう考えていれば、勢いよく長い両腕が背に回された。
グッと引き寄せられ、私はあっという間彼の腕の中へ収納された。


「か、影山、ちょっと離しっ..ひゃ!?」


彼の熱い温もりを感じていれば、スルッと背中に大きな手が侵入してきた。
突然のことに驚いてしまい、思わず変な声を出すと同時に影山の服をギュッと掴む。


「やっ...ん、だめっ..くすぐったいっ...」


自分の手とは違い骨ばった大きな手が自分の背中全体を優しく撫で回してきた。
それがあまりに擽ったく、私は身を捩る。

ささやかな抵抗として彼の胸板を押してみるが、全く意味がなかった。

「んっ!...そこっ!だ、だめ...ひぅっ!」

「...」

「か、げや..まっ...もう、ほんとにダメ!」


ブラジャーの下にまで手が差し込まれて、流石にそれ以上はダメだろうと私は全身で影山を拒んだ。
それでも彼の腕から逃れることはできず、嫌でも力の差を感じてしまう。

あまりにも近い距離でに交わる視線。

熱を含んだ彼の瞳に、背中に直で感じる手の温もり。


これはやばいと、すぐ様感じとる。


「凪...さっきの交換条件、今でもいいか?」

「ぇ..い、今は...だ、だ..んんっっ...背中、だめってばっ..!」

「やらないとずっとこのままだぞ」


くそ、影山め。

普段怖い顔ばっかりなのに、こういう時だけ何故無邪気に笑うんだ。
完全にスイッチの入った彼に、私はお風呂に入る前のやりとりを思い出して後悔する。


「あっ..そこ、だめっ...〜〜っもう!わ、分かったから、ちょっと...しゃがんで!」

これ以上、変な声を聞かれるのが死ぬほど恥ずかしく渋々折れる事となった。

潔くスッと私の背から手を抜くと、言う通り少しだけ屈む影山。
更に近くなるその顔に思わずドキッする。



あれ、約束とはいえ、ちょっと勇気がいるし、もしかして変声を聞かれるより恥ずかしいのでは?
どうしよう。と考え、なかなか動き出さない私に痺れを切らしたのか、「早くしろ。」と彼の目が細められた。


...仕方ない。
これはもう、やるしかない。

意を決して、私はグッと目を閉じて顔を近づけた。



「〜〜〜っ。」




チュ。なんて可愛らしい音は鳴らない。




初めて自分からした行為に、心臓がバクバク音を立てる。
影山に聞こえちゃうんじゃないかと思うと、ジワリと手に汗が滲んだ。







...ん?待って。


これっていつまでくっつけてればいいの?

キスって、いつまでするもの?



私は恐る恐る目を開ける。


「っ!....ん..はっ...」


目の前にあった影山の顔に驚き、咄嗟に体がのけぞって距離を取る。
けど、彼はそれを許さなかった。


「はっ...流石に、やばいな。」


コチンとくっつく額。
ツーッとお団子にした髪から水滴が頬に垂れてきた。


「も、もういいでしょ...離し..んんっ!」


チュッ。チュッ。と今度は可愛らしい音が何度もなる。
影山の大きな両手が、私の耳をそっと塞ぐもんだから、その音が全身に響いてきて思わず体が震えた。

次第に軽く触れるキスから、私の唇を味わうかのようなしっとりしたキスになっていった。


「ぁ...ぅんっ...」


ジワジワと体の底から湧いて出てくる熱を抑えるように、影山の服をギュッと掴む。

こんな、キスだけなのに体が溶けちゃいそう...。
そう思うくらいには気持ちいいと思える行為だった。


「ぁっ..んぅ..ん!」


耳を塞いでいた右手だけが離れ、私の腰をぐいっと引き寄せられた。
それと同時にお腹あたりに当たる硬いものを感じ、脳が急激に冷静になっていく。


こ、これ、絶対アレだよね。


「はぁっ..」

彼の熱い吐息が漏れ始め、本格的に身の危険を感じ始めた。



止めなきゃ。

これ以上は良く無い。

そう思うが、まだ続けてほしいと思っている自分がいて複雑な気持ちになった。



「んっ..はっ..かげや、まっ..」

「はぁっ..凪、好きだ。」

「っ...。」



愛おしい。そう顔にでかでか書かれている表情に、胸がキュゥと情けない音を立てた気がした。
止まる事なく振り続ける彼の口付けに、私はもう一切の抵抗を辞めた。


________

※お風呂に入る前の会話

「交換条件、凪からキスしてほしい」

「なっ!?〜〜〜っ…わかった。(背に腹はかえられない‼!)」








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