present



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影山Side>

「ぅ..んんっ..ぁぅっ...」

なんて顔してんだよ。

目の前の凪は、そう思ってしまうほど蕩けた顔をしていた。

俺のキスはそんなに気持ちいのか?
ギュッと俺の服を掴む小さな手に、少し震えている体。
おまけにこの顔だ。
そう思わずにはいられなかった。

ただでさえ風呂上がりで温かい体は、尋常じゃないくらい熱を帯びている。
俺のせいなのは分かってるが、このままキスを辞めようなんて気にはならない。


俺は自分の下半身に集まっている熱を態と凪にグリグリ押し付ける。

「んんっっ…」

くぐもった可愛い声に思わずピクッと反応するソレ。

流石に凪だって気付いているはずだ。
時折チラッと下の方へ視線が向いている。

「か..げや..まぁ...」

「んっ…なんだ?」

キスを中断し少し顔を離せば、別に舌を入れた訳じゃ無いのに、その口の端から涎が少し垂れていた。
目尻にはじんわりと浮かぶ涙に、自然と口角が上がる。

とろとろじゃねーかよ。

ペロッと口の端を舐めれば、同時にガクッと凪の膝が折れた。


「っと...」


いじめ過ぎたか?

グッと体を支えれるも、凪は俺にもたれる様な体制になった。
濡れた髪が俺のTシャツをジワッと濡らしていく。

肩で息をしている凪に、大丈夫かと聞けば首を小さく横に振った。

脱衣所にかけてある古い時計に目をやれば、もうすぐ就寝時間だった。
流石に部屋を出てから時間が経ち過ぎている。
日向あたりが騒ぎ出しそうだし、そろそろ戻らねえとな。

けど、正直なところまだ2人の時間でいたい。


「……凪、ちょっと我慢しろよ。」

「へ..?..きゃっ影山!?」


凪を横抱きに抱え、器用に荷物も手にする。


「静かにしろ。皆に気付かれるぞ。」


そう言えば凪はグッと押し黙った。
まだ少し蕩けている顔に、今日はコレでおしまいだ。と最後のキスを落とす。

声にならない声で何か言っているが、凪は最終的に自身の顔を両手で覆った。

それを見て俺は満足げに笑う。



.


廊下に出れば、ヒヤッとした空気が流れていた。
すっかり熱くなった体温には、丁度良い涼しさだと思ってしまう。

部屋まで少しあるが、誰かに出くわさないか心配だな。
凪がのぼせていた所を介抱していたとでも言えば何とかなるか。

万が一に備えそんなことを考えていると、小さな声が俺を呼んだ。
恥ずかしいから降ろしてくれと目が訴えていた。
けどそんなのは完全無視だ。

構わず進んでいれば、ギュッと服を掴まれる。
再度凪の顔を見れば、負けじと降ろせと視線を送ってくる。

「...足りなかったか?」

決して違うと分かっているが、冗談っぽくそう言えば、冷めかけていたであろう凪の顔がボッと真っ赤になった。
俺は喉の奥でクツクツと笑う。
凪はそっぽを向いてしまったので、降りる事を諦めた様だ。

このまま部屋に送るという名目で、襲ってしまおうか。
朝までベッドに凪を縫い付けて、さっき以上にとろとろに溶けた顔にさせてやりてぇな。
腕の中で大人しくなった凪を見て、そんなことを思う。


流石に風呂上がりの姿はグッとくるものがあったし、脱衣所で待つ交換条件として「凪からキスしてほしい」というのは大正解だったな。
お陰で凪チャージ1000%と言ったところだ。


あぁ、もう部屋に着いちまうな。
ここまで誰にも会わなかったのは良いことだ。

このまま誰も出て来んんじゃねえよ。

そう少し歩くスピードを上げた時だった。


「か、げ、や、ま」

「!?」
「ひゃ!?」

突然後ろから聞こえた声に、思わず体が跳ね上がった。
凪も声に驚いたのか、驚いた俺に驚いたのか分からないが小さく悲鳴を漏らした。

「な〜にやってんだよ」

そう肩に回った腕。
横を見れば灰色の髪に涙ぼくろが特徴的な菅原さんがいた。

見知った顔にホッと胸を撫で下ろす。


「あれ、凪どうしたんだべ?」


視線を凪に送る菅原さんはちょっと笑顔を引き攣らせた。
まあ、普通に考えればこんな夜中に、どう見ても風呂上がりの女を横抱きにしている男ってヤバい奴だよな。

「あー...なんか上せてたんで、介抱、してました。」

やっぱり考えといてよかったな。


「まじ?大丈夫か凪?」

「うっ..えっと...はい...」

「うーん。顔真っ赤だな。俺ちょっと冷えピタないか聞いてくるわ」


パタパタと小走りですぐ近くの部屋へ入って行った。

他の奴らがくる前に、とりあえず凪を部屋に連れてってやろう。


「〜〜〜っ...ばかっ」


菅原さんにこの状況を見られたのが恥ずかしかったのか、凪は顔覆っていた指の隙間から睨みつけてきた。

悪いっと一言告げ、再度足早に凪の部屋へ向かった。








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