present



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「全く...バレー辞めて柔になったんじゃない?」

「ぅ....」

見慣れた自室の天井にお母ちゃんのちょっと呆れた声。

さっき飲んだ粉薬が少し口の中に残っていたのか、苦い味が口にじわっと広がった。
久しく風邪なんて引いてこなかったのに、今は自分でも分かるぐらいに熱が高い。

お母ちゃんが部屋を出ていき、ぼーっと今朝の出来事を思い出す。



.



「凪ちゃん…。帰りなさい。」

「ぇ...潔子さん?」

昨夜、影山に部屋へ運ばれた後に直ぐ菅原さんと澤村さんが冷えピタを持って部屋にきた。
2人ともすごく心配していたけど、影山が言う「のぼせた」なんて嘘だったので誤魔化すのに心が痛かった。

皆がいなくなって静かになった部屋で、私は今さっきの出来事を思い出してはいけないと思って急いでドライヤーを済ませ、直ぐ布団に入った。

朝になってどこか怠い身体を起こしてキッチンへ行けば、先ほどの清子さんの言葉が私に向けられたのだが...。



私。何かしてしまっただろうか...。
昨日のキッチンの片付けが不十分だったのか。
それとも合宿だというのに影山とあんな事したのがバレてしまったのだろうか。

色んな考えが頭をよぎっていく。


「あの、私...何かしちゃいましたか...」


自分では答えが出そうに無く、恐る恐る清子さんにそう尋ねれば額にピトッと彼女の手が添えられた。


あ。ひんやりしてて気持ちいい。
すっと目を細めれば。清子さんも同様に目を細めた。


「これ、多分熱あるよ」

「...え?」


額から手が離れ、次に首裏に手を添えられる。
清子さんは小さく首を横に振り、眉をハの字にした。

「一晩とは言え、慣れない環境だったから体調に出ちゃったかな。お家の人いる?お迎え来てもらえそうかな?」

心配そうな清子さん。
あぁ、そんな顔も綺麗です。

「だ。大丈夫ですよ!熱なんて...ちょっと休めば、下がりますか..ら...」


あれ?

なんか視界が急に...。
それに頭もなんか痛いかも..。


「うっ....」

「凪ちゃん!?」


近くにあった椅子に手を添えるが、何だか力が入らず私はその場に倒れ込む。

意識は薄っすらある。
けどなんだか体が言うことを聞かない...。


あぁ、嫌だな。

どうして人間って、熱があるって分かるとドッと体調が悪くなるんだろう。
このままじゃ、清子さんにも...これから起きてくる皆にも迷惑かけちゃう...。


「凪ちゃん、大丈夫!?」

「....え、なにしてるんですか....。」

「っ...月島、いいところに来た。凪ちゃん運ぶの手伝って。」

「は?何で僕が...「いいから早く。」っ...」


頭上で行われるやりとりすら、誰の声なのか分からなかった。

ゾゾっと急な悪寒に、身体を丸めれば、突然浮遊感を感じた。
それと同時に嗅ぎ慣れない洗剤の良い匂いが鼻を掠めた。

ギリギリ保っている意識の中で、この浮遊感、昨日も体験したなと思い出す。

そっか、また...影山が....?

でも、影山の香りじゃない......誰...?




「......体調管理ぐらいちゃんとしなよね。」

そう上から降ってきた言葉はスッと耳に入ってきた。
ごもっともな言葉に、何も返せず。

ただグサっと胸に刺さった。

だから私はただ謝罪の言葉を述べるしかなかった。


「ご...めんなさ...ぃ.....」

手探りで探した声の主の服を力無くキュッと掴む。

「っ......ほんと、だから嫌いなんだよ。」


その言葉を最後に私は完全に意識を手放した。

次に目を覚ました時は、母が運転する車に乗っていて、あれやこれやと母の病院へ連れて行かれ、冒頭に戻るのである。

頭が痛い。
口の中が苦い。

ものすごく...眠たい。




>岩泉Side

「い、い、岩ちゃん!!?!???」

早朝ランが終わり、各自15分休憩のタイミングで及川が遠くから凄い形相で走ってきた。
休憩中ぐらい静かにさせろよと思っていれば、焦ってるのは早口で喋り始めた。

「凪が昨日から合宿で居なくて寂しいって思ってたのに、今朝高熱出して今家に帰ってきてるんだって!!!お母ちゃん曰くただの風邪らしいけど、心配すぎない!?たった一晩で高熱出しちゃうって一体何があったの!?精神的にストレスが強い環境だったんじゃないかな?俺今から烏野に殴り込みに行くべき?でもこれで凪が合宿に行かないで済むって思うとそれはそれで嬉しいって思っちゃって、どうしたらいい!?岩ちゃん!?」

「.......。」


言ってる事もはちゃめちゃ過ぎて思わず口が半開きになる。
それは隣にいた花巻も一緒だったのか、思わず2人で顔を見合わせる。


「岩泉、及川って本当にシスコンなのな。」

「あぁ、くっそうぜェシスコンだ。」

「もー!!俺が妹ラブなんて生まれてから死ぬまで変わらない事だよって、違うってば!!俺が言いたいのは、凪が心配だから帰っていいかな!?」

「あ?クソボゲ及川、帰って良いわけねぇだろうが!」

「はい。」


花巻がバレーボールを手渡してきたので、俺はいつも通りクソ川に向かって投げようとする。


「待って待って!岩ちゃんも一緒に行こう!それでどう!?」

ぴたっ

「......。」

確かに凪が風邪ひいたなんて珍し過ぎて心配なのは確かだ。
しかしただの風邪...と看護師の母親が言うなら、問題ないだろう。

けど....。
あいつ、小さい時に風邪ひいた時は俺とクソ川が手握ってやらねぇと寝れないって泣いてたっけな。


「お願い岩ちゃ「及川、この後監督とミーティングだろ?」..げっ」

「ちょっとマッキー...変わって...」


花巻の前で両手を合わせるクソ及川。
俺は投げるのを中断していたボールを改めて投げつけた。


「いったー!!なにすんのさ!!」

「俺がちょっとだけ様子見に行ってくる。1時間もあれば戻ってくっから、それでいいな!!」

「岩ちゃん!!なんで!?」


クソ川の煩い声を完全に無視して、俺はジャージの上を着てスマホと財布だけを手に及川家へ向かった。

途中で及川母へ連絡を入れれば、今買い物中だから勝手に上がってくれと返事がきた。
鍵は空いてるよん♪ なんて追加のメッセージが来て、鍵は閉めてってくれよ。と思いながら、俺は歩く速度を上げた。


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「及川……。岩泉って凪ちゃんの事好きなのか?」

「ちょっとマッキー、勝手に俺の妹の名前呼ばないでくれる?後俺は認めてないからぁ!!」

「え、こわ。」










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