真っ黒でサラッとしている髪に釣り上がった目。
座ってる私たちからしたら真横に立たれるのはまさに巨人の襲撃でしかない長身の持ち主。
その名の通り私たちに影を落としたのは“影山 飛雄“だった。
あまりの衝撃に私は開いた口が塞がらなかった。
それは向こうも同じみたいで私と目を合わせると目をまんまるにして私を見下ろす影山飛雄。
一向に言葉を発する事のない私たちを見て、望ちゃんはがアワアワしているのが視界の端に映る。
「....来い。」
先に沈黙を破ったのは向こうからだった。
まんまるにした目をキリッといつもみたいに戻せば久しぶりに見る怖い顔になった。
グイッと腕を引かれ、なんの抵抗もなく教室の外へ出される。
出る寸前で私は望ちゃんに『ごめん、また明日!』と手を振った。
グイグイ引かれてから随分経つがどこに行くんだろう。
『あの、そろそろ腕痛いんだけど...』
そういえばパッと手が離された。
「悪い、えっと....」
キョロキョロと辺りを見渡す彼を見て私は思わずぷっと吹き出した。
『入学して早々、どこが静かに話せる場所なんて分からないんだから、人がいなければどこでもいいでしょ。』
図星をつかれたのかギクっと肩が一瞬動いた。
「それもそうだな......あー、なんていうか、その...久しぶりだな」
『...あのさ、人がいない場所とは言ったけど、こんな廊下ど真ん中よりはあそこに見えるベンチの方がいいんじゃない?というか、あそこにしよ。』
そう言いながら今度は私が彼の腕を引っ張った。
おぉ..なんて情けない声が後ろから聞こえるが、お構いなしに私はベンチまで進み彼を座らせた。
『それで、なんでとび.....影山くんは烏野にいるわけ?』
「っ...それは、お前だって同じだろ。大体その呼び方なんで..」
『だって、もう私達そういう関係じゃないから。』
ちょっとだけ食い気味に返答すれば、また彼の目がまん丸になった。
『そもそも付き合ってたっていう割には、偶に一緒に途中まで帰ったりしかしてないし、クラスが違う上に貴方は部活ばっかりで、もはやあれは恋人にカウントしていいのかも微妙なラインだよね〜』
ふふと作り笑いを浮かべつつ我ながら幼稚だと思った。
これじゃぁ今になってあの時の不満を彼にぶつけているだけで、よくカップルがしている後出しの喧嘩みたいになっている。
「........」
何か言い返してくるでもなく、影山は拳を握って俯いた。
側から見ればベンチに男子を座らせて私はそれを見下ろしているヤバいやつだと思う。
何だかハッキリ話さない影山に少しだけ苛立ちを覚えつつも、私は別に影山が嫌いになったわけじゃない。とだけ伝えた。
『折角始まったばかりの高校生活なんだし、私は面倒な事に巻き込まれたくないの。過去のことなんて忘れて高校でもモテモテ女貫いて新しい素敵な恋をして、平凡なキラキラJK生活送る予定なんだから、絶対邪魔しないでね!』
半分間違っていない戯言を話しながらビシッと指を向けると、影山はその指を徐(おもむろ)に握った。
そして立ち上がると私に一歩詰め寄ってきた。
その目はどこかギラついていて、獲物を見つけた狼みたいな怖い顔だった。
『な、なに...』
本能的に私も身の危険を感じて一歩下がってしまう。
でもそれに合わせて影山も一歩。
また一歩と近づいてきて、空いている腕を私の腰に回してきた。
そのままグイッと引かれれば私も目の前には影山の顔があり得ない距離であった。
『影や...「そのポジションは、俺だ」』
とにかく凄い威圧だった。
というか威嚇...?
覚悟しとけ。そんな事を目で訴えてきた後、影山は私を解放して立ち去っていった。
私は力無くその場にヘタっと座り込んだ。
あんな影山、初めて見た。
というか、男にあんな風に詰められたの初めてかも...
バクバクと心臓が痛いくらい音を立てているのが分かった。
もう、入学早々最悪なスタート決めたかもしれない。