present



09


「し、ん、す、け!」


「っ!天音?どうし…」
「女神様ー!!」


おい侑、俺の話を遮るなや。
角名、お前もちゃっかり隣に行くなって。


「俺に用事かいなー!?」

「え?ううん、宮侑君やない、信介のこと迎えに来たんや〜!」


侑の横をスルッと抜けて、ムギュッと俺の腕に抱きつく女神様。
その瞬間、俺は一瞬意識が飛んだわ。



「「えええぇぇぇ!?」」




周りの奴らがビックリした声あげる中、ハッと我に返った。


俺は隣をチラッと見たら、確かにそこに女神様がおった。
ニコニコして、めっちゃ可愛い笑顔で俺を見上げてる。


「部活、お疲れさん。一緒に教室行こな」



ズキューンッてな効果音が聞こえそうや。
昨日から付き合い始めたってのに、夢やないんやなって実感したわ…やばい、また泣きそうや。



「え、おい、信介、もしかして…」



大耳が嬉しそうに首かしげてた。
誰かと付き合うなんて経験ないから、どう伝えたらええか迷ったけど、しゃーないわな。


「ああ…付き合うことになったんや。」



さっきよりもっとでっかい声で、バレー部のやつらの声が響いた。
俺はつい無意識に頬掻いてしもた。



「おいおい、やっとかいー!!よかったな、北!!」

「昨日の騒動でどうなるかと思ったけど、おめでとうやな。」


尾白と大耳、あと三年のやつらはなんか皆、納得した様に頷き、素直に祝ってくれた。
もっと驚かれる思たけど、案外冷静やな。




「き、北さん……女神様と北さんが、な…なんでやねん…」

「ツム。女神様が北さんのこと好きなん、まぁ結構有名な話やろ?」




待て、なんやその話は。





「どういう意味や。」

「どうって、女神様…めっちゃわかりやすく信介のこと好きやったやん。お前ら、ずっと前から両想いやって話や…3年の奴らはほとんど知ってるで。」


「ちょっと大耳くん、恥ずかしいからそういうこと言わんといてや!全然気づいてくれんくてめっちゃ大変やったんやから!」



ギュッと俺の腕を掴む力がちょっと強なった。
両想いやて、本気で言うてんのか?
そんなそぶり、俺には全然見えへんかったけど…



「信介ってば、意外と鈍感なんやから。」

「そんなことは…」



……いや、あるな。


皆がとっくに気づいてたことに、当事者の俺が気づけてへんのや。
それが鈍感やなくて、何やっちゅう話や。






「天音ー!!やっぱりここにおった!!」

「あっ、凌ちゃん!」


パッと俺から離れて、女神様が駆け寄った先には剣城さんの姿。
2人はまるで長いこと離れてた恋人みたいに、笑顔で両手をぎゅっと握り合ってた。


……あぁ、なんやろな。
ちょっとだけ、腕がさみしくなった。



けど——
天音のあの笑顔が見れたから、ええ気もする。



「もう、急に朝早う行くゆうからビックリしたやんか!」

「ごめんなぁ…でも昨日電話で喋ったけど、その……はよ会いたかってん…」


もじもじと顔を赤うしてる女神様とは裏腹に、まるで地獄から這い上がってきた鬼みたいな顔でこっち睨んでくる剣城さん。


……これは多分アカンやつや。


「おいゴルァ北信介。昨日“調子乗るな”っちゅうたやろが、あぁ!? なんで朝からベッタベタしとんじゃワレ!!」

「っ……」

剣城さんの怒号に空気が一気に冷えた気ぃした。
そのせいか背中がゾクッとする。


「りょ、凌ちゃん!ちゃうねんて!信介が誘うたんちゃうねん、私が信介に会いたかって来ただけやねん!」


天音、そらアカン、それ火に油や……!


案の定、鬼みたいな剣城さんが俺にグイグイ詰め寄ってくる。
それを必死に止める女神様。


「天音の意思やろうが、私との朝の時間削った原因はお前やろ!?許されへんわ……!」

「ごめんな、凌ちゃん。今日だけやから!明日からはいつも通り一緒に手ぇ繋いで行こ、な?」






「……天音、ほんま大好きやで。」

そのままギュッと抱き合う二人。



俺らバレー部、一体今どんな場面見せられてるんやろうな。

そう思たと同時に、あの二人の絆っちゅうんは、誰にも壊されへんし、そう簡単に入り込めるもんやないなって、みんなが思たはずや。



「ほな、天音。私部室寄ってから教室行くさかい、またお昼にな!」

「うん!またお昼に!」


剣城さんは嵐みたいに現れて、嵐みたいに去っていった。

その姿を見送りながら、隣の尾白がぽつりと呟いた。


「……剣道部主将、やっぱ貫禄あるな……」


ほんま、それ以外に言葉なんて出てけぇへんかった。




そんな騒がしすぎる朝が、やっと終わった……かと思たんやけど。




このあと教室でも、学年中でも、最終的には学校全体で――
「北信介と女神様が付き合い始めた」っちゅう話が広まって、大騒ぎやった。

正直、もうクタクタや。
そのへんの詳しい話は……また今度にしとこか。




「へへ、信介……大好きやで。」

それに、あれからっちゅうもん、女神様はタガ外れたみたいに、どこでもおかまいなしに俺にくっついてくるから...


いや、嬉しいんやけどな?
でも俺の理性が毎日ギリギリやねん。

……この話も、また別の機会にさせてな。





第一章終了です!
次回から二章入ります!
R18含んでくるので、苦手な方は注意でお願いしますね!



応援拍手





- 10 -

prev次#


ページ:




リンク文字