present



11



「……これか。」



部活終わり、俺は例のものを買いに最寄りの薬局に来とった。


右手に握ってるのは、白文字で「0.01」と印字された赤いパッケージ。
左手には、可愛らしい蝶の模様が入った、0.03ミリと書かれたパッケージ。

どっちもネットで調べて、評価の高かったやつや。

0.01は「まるで生みたい」とか、「お互いの温度がダイレクトに感じられる」とか。
0.03の方は「滑らかで初心者向け、安心感がある」と書いてあった。


どっちがええんやろな…。


いや、こういう時こそ、男の出番なんちゃうか。
迷ってる場合やない。

ちゃんと責任持って、選ばんとあかん。



せやけど……
着けたことすらない俺が、いきなり本番でうまくできるとは到底思えん。


練習……しといた方がええよな。



いざって時に手間取って、変な空気になったら嫌やし。


白い箱の方は三つ入りって書いてあるし、念のため2つ買っておくべきやろな。

丁度迷っよったし、どっちも買うか。



そうパッケージから顔を上げた、まさにその時やった。




「あんたこんな所で何やってるん?」




その声に思わずビクッとして、手に持ってたモノを後ろに隠した。


......なんや、聞き覚えのある声の方へ顔を向ける。



「誰?」

「あー……弟。」

そう言いながら体格のいい男と腕を組んでるその姿は、紛れもなく――


姉、やった。



一瞬、血の気が引いた。


彼氏、やろな。
見た感じ、恋人っちゅうのはすぐ分かる。

それよりも、こんなとこで会うなんて聞いてない。


いや、最寄りの薬局で買おうとした俺が悪いんか…?


声も出んまま立ち尽くしてたら、「ちょっとあっち行ってて。」ってシッシと彼氏を追い払った。
彼氏は素直に離れていって、姉はそれを見届けると、ニヤァ…と、口元だけで笑った。




「で、ナニ買おうとしてたん?」


これは完全にバレとる。



何も言えずに後ずさりしかけた俺の足元を、姉のヒールがカツンと止めた。

「……ふーん、まさか北信介も、そういうお年頃になったんやなぁ?」

お願いやから今すぐこの場から地球ごと消えてほしい。



「彼女でも出来たんか?」

「……まぁ。」


もう見られてしもたら、下手な誤魔化ししても仕方ない。
別に恋人おるのがバレるんはええ。

いずれ紹介する時が来るやろうしな。



「なるほどなぁ〜、ついに信介にも春が来たんか!お姉ちゃんは控えめに言って嬉しいで!」


いつもどおり大袈裟にリアクションしながら、ニヤニヤと笑って喜んでる姉。

……で、その笑顔のままスッと手を差し出してきた。


「な、なんや?」

「その後ろ手に隠したもん、見せろや。」



俺は一瞬躊躇った。



が...

もはや逃げ道もない。




諦めた顔で、そっと赤と蝶柄の箱を姉の前に出した。


「……うわ、マジで選んでたんや!」

「……うっさいわ。」


「この蝶のやつ、随分かわええ柄のパッケやなぁ...っていうか、こっちは0.01やん。結構“気合い入ってる方”やで?」

「頼むから黙ってくれへんか。」


姉の無駄に鋭い分析と軽快なトークに、俺の体温はどんどん上昇していく。



勘弁してくれ……こんな辱め、しんどすぎるやろ。


さすがに家族相手でも恥ずかしいし、普通嫌やろ。

姉やからって限度があるっちゅうねん。



「……ほんま、あんまり詮索せんとってくれへん?」



そう言った俺の手元に、いつの間にか姉が別のパッケージを2つ差し出してきた。

「ほな、姉からのアドバイスや。こっちと、こっちの方がええで。」



……全然ちゃうのに入れ替わっとる。



「いや、なんで姉ちゃんに勧められなあかんねん。構わんとってくれ。」

そう言えば、姉はふんっと鼻で笑って、俺の胸を軽く小突いた。



「童貞が何言うてんの。あんたの為やないわ、あんたの彼女の為に選んであげとんのやで?」

「……。」



「彼女が初めてかどうか知らんけど、高校生なんてどっちにしても経験浅いんやから、優しくて失敗しにくいタイプ選ばんと。ほんで、“その後”も安心できるやつにしときや。気持ちだけで突っ走ったらアカンで?」


俺は黙って、姉の渡してきたパッケージを見つめた。

こっちは潤滑ジェル多めで、サイズもフリーか。

もう一つの方は……
ああ、厚さで安心感あるやつやな。


なんや、妙に説得力ある分だけ、余計に恥ずかしい。




「……ありがと。」


「ふふん、最初から素直にそう言いなさい。」



満足げに腕を組んで、姉は颯爽とレジへ向かって歩いていった。

いや、なんで姉ちゃんが先に行くんや。


「俺が買うんやけど……!」


思わず追いかけた俺に、「あんた顔赤すぎて無理やろ」って笑われたのは、言うまでもない。







姉、完全オリキャラです。
一応大学4年でくらいで、強めなイメージでいます。







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