present







「天乃、好きだ。俺と付き合ってほしい。」

「……え?」



それは、唐突だった。

昼休みも後半に差しかかり、私は女子たちといつものようにくだらない話で盛り上がっていた。
教室の空気も和やかで、あと10分もすれば次の授業が始まる。

そんな、何の変哲もない時間のはずだった。


何を思ったか、輪に突然、轟焦凍が静かに入ってきた。

座っていた私の前に立ち、すっと目を見据えて、冒頭の言葉を口にした。


……一瞬で、空気が変わった。


周りで笑っていた友達の口がポカンと開いたまま固まり、教室全体が水を打ったように静まり返った。


まさか。

誰もが耳を疑って、でも確かに聞こえてしまったその言葉。
彼の声は意外と通るのか、クラス全体に響き渡っていた。

私はというと、心臓の鼓動がうるさくて、それ以外の音が全部消えたみたいだった。
目の前で真っ直ぐ私を見ている轟くんから、視線が逸らせなかった。


まるで、時間が止まったみたいだった。



──けど、ひとりだけ、その時間の外にいた。



「……おい。」



低く、地の底から響くような声が、空気を震わせる。



「てめぇ……どういうつもりだ、あ"ぁ"?」



怒気を孕んだ声と同時に、誰かが動いた気配がした。

轟くんの制服の胸元を、ぐっと掴み上げたのは────

我が幼馴染、爆豪勝己。


眉間には深い皺、こめかみには怒りで浮かんだ青筋。


私は、ただその場で声も出せず、二人の間に流れる妙な空気を感じるしかなかった。



「……何がだ?」

「はァ!?何がって、わかんだろ、普通に!!」

今にも勝己が轟くんを爆破しかねないその瞬間、ようやく周囲が動き出した。



「お、おい、やめろって爆豪!」

「お前、一回落ち着けって!」



慌てて立ち上がったのは、上鳴と切島。
2人がかりで勝己を引き剥がそうとする。

怒りの熱が教室全体に充満していて、私は息をするのも忘れていた。

けどそれと同時に、遅れてやってきた羞恥心が一気に顔へ押し寄せてきた。


顔、あっつ……。



「花、大丈夫?」

そう声をかけてきた耳郎。

でもその表情はというと、明らかにニヤけていた。
心配というより、「修羅場きたコレ」的なテンション。

他の女子たちも似たような顔。
私と2人の間を交互に見ながら、目をキラキラ輝かせてる。

くそ、絶対楽しんでる……!!



いたたまれなくて、思わず両手で顔を覆って俯いた。

というか冷静に考えて?

私、轟くんとまともに喋った記憶、ある?
授業でペア組んだとか、訓練で同じチームだったとか──


いや、ないじゃん。


なんか変なモンでも食べた!?

どこでどう間違ったの!?!?



頭の中で思考を高速回転させるけど、どうしても理由が見えてこない。

だから、出てきた言葉は──




「……轟くん。個性事故にでも遭った?」



「「え?」」「「は?」」



クラス中の視線が、一斉に私に向いた。

……あ、これ、滑ったやつだ。間違いない。



「花ちゃん、それはちょっと……轟くんが可哀想じゃ……」

そろそろと近づいてきた出久が、小声で耳打ちしてくる。

「だ、だってさ……轟くんが私のこと好きって、どうしてか全然わかんなくて……」

そう呟いて、思わず轟くんをチラ見した。


彼はいつも通りの無表情で、けれどほんの少し首を傾けていた。

その仕草と一緒にさらりと髪が揺れて、目が合った瞬間、変にくすぐったい気持ちになる。



「一目惚れは、理由にならねぇか?」



変わらない声色でそう言った彼に、私は完全に思考が止まった。

教室中から「きゃあああっ!」という黄色い声と、男子たちの「マジかよ!?」というざわめきが湧き上がる。

けれど、それもチャイムの音で一気にかき消された。



「……離せ。天乃、また後で話そう。」

勝己の手を振り払い、轟くんは平然とした顔で自席に戻っていく。

勝己は相変わらずギャーギャー騒いでいたけど、上鳴と切島がガッチリ押さえつけていた。

そしてマイク先生が教室に入ってくると、みんな慌ててそれぞれの席へ。

私は──というと、元々座ってたのでそのままだったけど。

顔の熱は引かないし、心臓はバクバクしてるし、
午後イチの授業の内容なんて、ひとっっっつも頭に入らなかった。






告白スタートの物語、好きなんですよね笑
ということで、新しくヒロアカの長編スタートします!
よろしくお願いします。






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