+△0220:Mon 不道徳なをとめたち
たべられる、とおもった。めのまえでその飴玉みたいな朱いまなこをきらめかせ、おれの顔をのぞきこんでいる彼女に。さぞかし指通りがいいのであろう蜂蜜色の髪の先がこちらの頬をくすぐって、重力にまかせて垂れ落ちていく。彼女の手によりあっけなく押し倒されたおれは間抜けにも尻餅をついたような格好でいる。その脚のあいだに滑り込むようにしてはいった彼女は、ただ笑みを浮かべておれをみていた。その手足はおれの身体をおさえつけるようにおかれていて、血のめぐっているその肌はじんわりとあたたかさを有している。
「…ま、りきり、」
「速水ちゃんはおいしそうだねえ」
そう言って、彼女はすっと笑みを深くする。唇が弧を描き、いつもの無邪気な笑顔とは一転、ともすれば艶やかともいえる、妖しい笑顔だった。するり、とその指先がおれの首すじを撫でた。ぞわ、と背中が粟立つ。
「たべちゃいたいくらい」
ずり落ちためがね越しに彼女の唇をとらえる。うすい紅色のそれがひらいて、ちろりとのぞいた真っ赤な舌がずるりとうごめいた。舌舐めずりした彼女はそっとおれに顔をよせ、その空気に呑まれていたおれの目玉を舐めた。ざらついた生暖かい舌が眼球の表面を撫ぜて、びくりと己の肩が震える。生理的な不快感とともに、かあっと顔面に血が上るのを感じた。自然とこぼれ落ちた生理的な涙を舐めとって、彼女はくすくすわらう。その細められた目もとに背筋がぞくぞくと電流が走ったように痙攣して、ごくりと唾を飲み込んだ。
「たべちゃっても、いいよね」
おれに馬乗りになった彼女がわらう。その第二ボタンまであけられた夏物のブラウスの襟口がやたらと目についた。脳裏が真っ赤に塗りつぶされていくのを感じながら、おれはただ、何も考えずに彼女をみていた。

(ingの速水くん)



銅貨