+△0606:Tue もうすべてあとのまつり
はじめてその目を見た日のことをよく覚えていた。

 わたしの意識はそのとき確実に断絶されていた。現世から切り離され、ちっぽけな肉体をすり抜けただ孤独に存在して消えかけたその精神を、けれど彼は掬い上げたのだといった。透ける手足を持て余し、感謝の意を述べることすら満足に思い出せないわたしの前で、彼はそれを説明した。ぎらぎらひかる色違いのまなこを瞬かせて、うすい笑みを張り付けたその唇でもって。
 彼がわたしをうまく利用したがっていることにはきづいていた。元来、わたしはそういうことに敏感なほうであると自負していた。彼が善良ないいひとではないことくらいとっくの昔にきづいていたし、彼がただの中学生なぞではないことくらい、わたしは彼に出会ってから二日くらいで理解していたのであった。そしてあたりまえのように、彼もまたわたしがそれに気づいていることを知っていた。だからわたしがいるときでも遠慮なくどこぞのしょうねんを連れてきて軟禁したし、見るからに堅気のにんげんではないひとたちを呼び込んでは悪だくみとおもわれるものの作戦会議をしていた。
 あのボブヘアのかわいいおんなのこはどうしてだかやたらとわたしを目の敵にして、邪険に扱いたがった。けれどわたしはもうすでにはんぶんほどしにかけている身であり、そもそも身など存在しない幽霊もどきであったから、彼女のとがったまなざしもながい爪先でさえするりとすりぬけてしまった。あのこはそれに歯噛みしまなじりをつり上げていたけど、わたしはすこしだけむなしかった。



銅貨