+△0210:Wed 甘いと痛いは紙一重 出雲がゆるりとその長い腕をあげるのをぼんやりと目で追っていた。 この景色がなんだかおままごとのようにみえるのはわたしだけなのだろうか。ゆらゆらと視界が波打つみたいに揺れたきがした。教壇のようなそこに立つ白銀の彼はにこりと人が良さそうにわらっているし、そのとおり、かれはきっとやさしいのだろうとおもう。やさしくないのはわたしだけだ。うそみたいなこの現実がいまいち飲み込めていない。ゴムみたいに味気ないのだ、かなしいことに。 スクリーンにうつしだされた緑色の彼らをみる、このまえわたしが蹴り飛ばしたあのちいさなしょうねんは、わたしからみて右側にいた。どくんどくん、心臓が跳ねている。うるさい。誰にもきづかれないように、手のひらに爪を立てた。その痛みに、ようやく現実感を感じる。そうだ、わたしは痛みと危機感にのみ現実を垣間見れるにんげんなのだから。 アンナのしろい髪が、揺れる。彼女はそのちいさく華奢な背に、いまはなにを背負っているのか。わたしには想像もつかない王としての責任とか、だろうか。わたしには、わからない。こうして冷えきった両手足をそのあたりに放っておくことしかできないわたしにはだれかのかかえる戸惑いとか躊躇いとか、そういうものが一切合切わからないのだから。 「…、かざり、」 なまえがよばれた。ふっと顔を上げれば出雲がこちらをみていた。色のついたガラスのむこうから、わたしを。相変わらずまつ毛がながい。かたりと首をかしげれば、「行くで?」と。ちいさく顎を引く。 |