第110話「鏡の欠片を探せ」

「おはよう。彩乃ちゃん、田沼君!大丈夫だった?」
「「…おはよ…」」
「……大丈夫?」

翌日学校に行くと、朝一で多軌が声を掛けてきた。
げっそりとやつれた様子の彩乃と田沼に、多軌は心配そうに尋ねるのだった。

「……よく覚えてないけど、俺……何かすごいの吐いた気がする。」
「……」
「えっ!?何食べたの!?」

田沼が口から光線のようなものを吐き出したなんて、絶対に言えないと思う彩乃であった。

「……彩乃ちゃん、これ。」
「え?」

そう言って多軌が差し出してきたのは、首にリボンの結ばれた可愛らしい人形のお守りだった。

「家の資料を見て作ったお守り。――役に立つか怪しいけど……何も出来ないと歯痒くて……気休めで申し訳ないけど持ってて欲しいの。」
「透ちゃん……ありがとう。徹夜までして作ってくれたんだね。」
「え?」
「透ちゃんはすぐにクマができるから。」
「……もっと手先が器用になりたいわ。」

徹夜して頑張って作ったのがバレて恥ずかしいのか、多軌はそう呟いて肩を落とした。

「田沼君はこっち。取り憑かれた人用なんだって。」
「ありが……うわっ、何か恐いぞ。」
「仕方ないの。そう書いてあったから……作る私も恐かった。」
「ところでニャンコ先生は?」
「授業中は校庭をパトロールしてくれてる。」

――こうして、鏡の欠片探しが本格的に始まった。

「確か昨日はこの辺りで目が痛んだ……あっ……痛っ!」
「夏目!」
「彩乃ちゃん!しっかり!」
「いた……いたたた。ここ、ここだよ田沼君!」
「ここか!?ここ掘ればいいのか!?」
ざかざかざくざく
「いたたた!痛っ!痛い!!」
「待ってろ夏目!」
「……何やってんだあいつ等……」
「さあ?……劇の練習?」

事情を知らない通りがかりの生徒達から奇妙な目で見られつつも、三人はもくもくと穴を掘り続けた。

「……っ」
「あ……あった!あったぞ夏目!ほら、これだろ?この瓶の欠片に隠れてるって妖が言ってる。」
「うん……痛みも引いてく。それだね。」
「――そうか。良かった。」
「……うん。ありがとう。」

爪がボロボロになり、手が泥まみれになるまで一生懸命に掘ってくれた田沼と多軌に感謝する彩乃。
妖のことで普通の人間の友人がここまで協力してくれることが何だか不思議で、彩乃はとても嬉しかった。

「でかした小娘共!さあさくさく残りも探すぞ!!」
「偉そうに言わないでよ!キョウカは大人しくしてて!!」

残る鏡の欠片はまだまだ多い。
彩乃達は気合いを入れて欠片探しを再開するのだった。

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